豊後森までやってきた以上、豊後森のシンデレラ、9600形蒸気機関車29612号機
は避けて通れません。
9600形蒸気機関車は、大正2年に登場した我が国初の本格的な国産標準形機関車
です。それまでにも国産で製作された機関車は他にもありましたが、例えば汽車
製造の230形(41両製造)は英国製のA8形に範をとったものであり、明治の
代表的な貨物用蒸気機関車2120形(総数533両が製造されたB6系、国産は10両)
も同じく英国製の2100形の増備機でした。
鉄道院(国鉄)では、明治末年に海外より多数の新鋭蒸気機関車を輸入しており、
これらを参考にして独自の設計を進めたのが9600形蒸気機関車であり、牽引能力
は2120形のほぼ2倍でした。
重心が高く、高速運転は苦手とされていますが、扱いやすい性能と高い実用性が
好まれ、合計で770両が製造されました。これは当時国産機として単一形式の最多
生産数であり、後のD51形登場まで破られませんでした。
大正8年に汽車製造で落成した9600形蒸気機関車29612号機は鳥栖機関区や浦上
機関区、行橋機関区、門司機関区と、ほとんど九州で活躍した蒸気機関車です。
志免町メインパークにいた時代
平成27年、志免町から玖珠町へ譲渡され、直方汽車倶楽部の手で美しく
再整備を受けて現在に至っています。