銀さんと卓球のブログ

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約3年ぶりにややリニューアルしました。
卓球やゲームなどの話題を中心になんとなく語りますが、雑談多めです。
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前回まででグルー効果の基礎となる原理・理論を解説し、ある程度どんなものが補助剤の代用品となりえるのかを書きました。

 

さて、今回は実践・応用編ということで前回までの理論を踏まえたうえで代用品の研究に移ります。

 

とりあえずアニリン点のわかる身近な物質は限られており、そこら辺の油で条件に合った製品(物質)を探し、購入するのはなかなか難しいということを書きましたが、ならば発想を変えてみましょう。

 

 

探すのが難しい?

なら作ればいいじゃないか!

 

ハイ。TOKIO的発想です(笑)

条件に合った物質を時間をかけて探すよりはあえてこっちで条件に合う物質を作ってしまえばよいのではないか?とワタクシは考えたわけであります。

 

とりあえず理想の補助剤として以下のような特徴を持てばよいと僕は考えました。

1、アニリン点がなるべく低いものであること。できればアニリン点が60℃以下あるいはその付近。

2、揮発性があまり高くないこと。できれば蒸気圧が8.5×10^-7mmHg(20℃)以下が望ましい。

3、安全性がある程度確保されるもの。

4、手に入りやすいもの。

 

取り合えずこんなもんですかね。

1はなるべく膨潤しやすいものを手に入れるための条件です。アニリン点60℃以下としたのはゴムのりの主成分であるノルマルヘキサン(アニリン点59℃)と同等程度の膨潤となれば性能的には満足するレベルになるのではないかと考えたからです。

2はなるべく効果が長く続くために必要な条件です。僕としては2~5日程度効果が持続してくれればそれでいいかなと思ってます。

8.5×10^-7mmHgというのは前回ヤサカの補助剤の特許文で登場したアジピン酸ジオクチルの蒸気圧です。おそらくあの文に出ていた物質と同程度の蒸気圧ならばそれなりに効果が長く続くと考えたためこの数値設定にしました。3・4の条件はもはや説明の必要はないでしょう。

 

ではどうやって理想的物質を作るか。これが大問題でしたね。

結論から言いますと僕は上に大きく補助剤を作る!と書いた癖に作ることは難しいと判断し、作りませんでした。

 

方針としてはアマゾンなどで手に入りやすいノルマルヘキサンを用いて作ろうと考えたんですけどね…

 

ノルマルヘキサンにオリーブ油などの分子量が比較的求めやすい不揮発性の油を適量混合することでラウールの法則に則り蒸気圧降下を起こさせ適当な蒸気圧にしてしまえばよい…と単純な考え方なんですけど、問題はノルマルヘキサンのモル蒸気圧降下度を求める必要があることと、やはりノルマルヘキサンでもやや危険かな?と思いやめました。

 

結局のところこの方法もダメと判断し、さらなる代用品探しの方法を考えたのですがいい考えは見つかりませんでした。

 

前回のアニリン点のグラフを見てみると60℃付近にスピンドル油というのが書いてあります。スピンドル油というのは工業用の潤滑油の一種で、自転車用の油なんかもスピンドル油の一種です。こういうのならアマゾンで普通に売ってますから、そこら辺から探していくのが一番現実的な代用品探しとなりそうです。

本当ならいくつかのスピンドル油を僕が入手したうえで実験し、効果が最も高いものを発表できればよかったのですが、ちょっと僕の都合上なかなかしばらくできそうにないということで今回とりあえずここまで書くことにしたわけであります。

 

結論:代用品はホームセンターやアマゾンで売ってるスピンドル油から探せ!

 

とりあえず僕の研究と呼べるのかわからないスピードグルー・補助剤の代用品探しの話は終わりとさせていただきます。

一応グルー効果の原理を説明できたのでそれはよかったかな…?

 

それでは今日はこの辺で!

前回のグラフがどうもパソコン画面からは見づらいようで…

透過素材だったんですね。申し訳ありません。

 

さて、前回までは理論化学・有機化学的観点からアプローチしていたのですが、今回はちょっと視点を変えてみました。

 

基礎理論編4~特許をはじめとする文献によるアプローチ~

前々回にも貼ったこのスピードアクセルのパッケージ。

この右上の部分に特許出願中と書かれていますね?

なんとなくこの商品って特許とれたのかなあ…なんて考えていたんですが、ここでピンとひらめきました。

特許庁に問い合わせて卓球の補助剤関連の特許を調べれば何かわかるのではないか?

特許というのは平たく言えば発明したものの権利が誰にあるかを明記、登録し、どんな発明なのかも具体的に書かれています。

補助剤の特許があるならばどんなものが補助剤に使われているのかわかるはずです。

 

んで、特許庁のHPから検索して2000年代初頭の卓球に関する特許をすべて調べ上げ、補助剤に関する特許はないか探しました。

するとありました。2件。

ひとつはこちらhttps://www7.j-platpat.inpit.go.jp/tkk/tokujitsu/tkkt/TKKT_GM301_Detailed.action

2006年公開ののJUICの特許です。こんなに昔からJUICは補助剤に関する特許を出していたんですね。

鉱物油あるいは植物油をスポンジに塗るとグルー効果が出るよーみたいなことを言っています。しかしながら植物油・鉱物油に関しての詳しい規定はなく、はっきりとどんな物質を使うとは明記されていませんでした。

 

もうひとつがこちら

https://www7.j-platpat.inpit.go.jp/tkk/tokujitsu/tkkt/TKKT_GM301_Detailed.action

2008年公開のヤサカの特許です。

これは二塩基酸エステルを用いた補助剤を定義しています。

この特許の内容では実験用ラバーにマークⅤを用い、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジイソノニル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチルの4つの二塩基酸エステルで実験を行い、結果、セバシン酸ジブチルを使えば一番高い効果があったと書いてあります。

 

つまるところこれがヤサカの補助剤の正体です。ついに補助剤の正体を突き止めました。やったー!わーい!すごーい!

そんなことを考えたのも束の間。

問題はこれらの物質をどうやって入手するか。アジピン酸ジイソノニルとかは化粧品に入ってることもあるのですが、単体で入手することは難しく、アジピン酸ジオクチルは東京化成株式会社さんのHPで500ml2800円で売ってるのを見つけたのですが、おもにこれは試薬として研究所や企業向けの販売であって、僕のような専門家でもない個人に売ってくれるはずもありません。よってせっかく正体を突き止めたにも関わらず入手方法はないことがわかりました…

 

一応二塩基酸エステルというだけならホルベイン工業のエコリムーバー(絵具剥離剤)が近いかな…と思ったんですが代用品になるのかどうかわからないです。

ただ、エステル油というのは盲点でした。車用のオイルとかも補助剤効果が十分にあるかもしれませんね。車用のオイルってだいたいエステル油なんです。

 

そんなことはさておき、何故二塩基酸エステルなのでしょうか?

ここからはあくまでも僕の予想なんですが、沸点が高め(200℃程度)だからだと思います。スピードグルーが問題になったのは揮発性の高い油の気化した煙を吸ってしまうことが危険と判断されたことがきっかけでした。

「揮発性が高い」とは化学的には常温常圧状態で蒸気圧が高いことです。(蒸気圧とはある気体の蒸発量と凝縮量が釣り合うときの気体の圧力です)

トルエンやヘキサンは蒸気圧が高く、放っておいたらどんどん蒸発していってしまいます。スポンジ面から蒸発していき、全部蒸発すると最後にはグルー効果が切れるわけですが、蒸気圧を低くして、蒸発しにくい液体にすればなかなか蒸発せずにスポンジ面に液体が残り、グルー効果が長持ちするというわけです。補助剤が一般的に効果が長く続く理由はこの蒸気圧による原因です。

理想の補助剤はアニリン点が低く、蒸気圧も低めの液体ですね。

蒸気圧が低すぎると今度は乾きにくくなってしまいます。サラダ油なんて塗ったらなかなか乾きませんもんね…

 

理想の補助剤を手に入れるにはどうすればよいのか…

次回に続きます。

では、今日はこの辺で!

前回までにグルー効果はゴムの膨潤による原因と揮発性による原因によって生み出されていることを書きました。

今回は前回の続き、極性の調べ方などについて話します。

 

ちょっと本題に入る前に…

スピードグルーの主成分は初期のころはトルエンが使われているものが一般的でしたが、トルエンの発がん性などが問題視されるようになると主成分はノルマルヘプタンへと変わっていきました。

ノルマルヘプタンやゴムのりの主成分であるノルマルヘキサンと比べるとトルエンの方がグルー効果は高かったそうです。いろんなサイトを見る限り、そんな記述を数多く目にしました。また、シクロヘキサンを試しても効果はトルエンに届かなかったのだとか…

 

基礎理論編3~極性・アニリン点によるアプローチ~

 

さて、本題に入りましょう。

 

極性を調べるにはどうすればいいのか?

SP値(溶解パラメータ)という指標があります。詳しくはWikipediaで調べてもらいたいのですが、簡単に言えば極性や分子間力を考慮して計算によって混ざりやすさの指標を作ってあるわけです。SP値が近いほど混ざりやすいことが知られています。しかしながら、あくまでも計算で求めた値なので実際にはSP値が近くても理論値ほど混ざらないこともあるのだとか。気体の状態方程式に当てはめても理想気体と実在気体とではふるまい方が違いますもんね…

 

では、ここでゴムのSP値を見てみると…

天然ゴム(ポリイソプレン)…7.9~8.3

合成ゴム(ブタジエン)…8.1~8.5

※この値は旧値です

スポンジに含まれるゴムの種類と割合にもよりますが、ふつうは天然ゴムの分量の方が多いことを考慮すると7.9~8.3ぐらいのSP値の物質を探せばいいはずです。

SP値がそのぐらいの物質はというと…

ノルマルヘキサン…7.3

ノルマルオクタン…7.8

シクロヘキサン…8.2

酢酸イソブチル…8.3

トルエン…8.9

ベンゼン…9.2

エタノール…12.7

水…23.4

http://www.diced.jp/~KAZU/sp3.htmより引用。

 

ちなみにオリーブオイルやサラダ油などの植物油脂のSP値はだいたい8.0~10.0あたりだとのことです。

見てみると7.9~8.3に近い物質はどれも揮発性の高い有機溶剤である場合が多いことがわかります。スピードグルーの性能のいいやつを作ろうとするとどうしても揮発性有機溶剤に結果としてなってしまうんですかね…

水のSP値とヘキサンなどの油のSP値を比べてみればなるほど確かに混ざらないはずです。

でもよく見てください。経験的にトルエンが一番グルー効果が高く、ノルマルヘキサンやシクロヘキサンはそこまで効果が高くないことが報告されているにも関わらず、ノルマルヘキサンやシクロヘキサンの方がトルエンよりもゴムのSP値に近いですね。

ここから分かることは何か。SP値はあくまでもある程度の予測には役立つものの厳密な予測には不適であるということです。

 

では厳密に予測するにはどうすればよいのか?

僕はアニリン点(aniline point)という指標を使えばいいと思います。

 

~アニリン点とは?~

アニリン点(混合アニリン点)とは、油脂の溶解性をみる際用いられる指標の一つである。
試料(検査の対象として使う物質)と等しい容積のアニリンを混合して冷却した際、試料とアニリンが分離するときの温度のこと。一般的にアニリン点が低いほど、溶解性が高いと言える。但し、アニリンがある温度で分離する溶剤でないと測定はできない。

http://www.sankyo-chem.com/vocabulary.htmlより引用

 

高校の有機化学でよく出てくるアニリンです。

このアニリン点というのは石油化学工業ではよく使われる値で、計算による値ではなく、実験によって得られた値であるという所がミソです。

簡単に説明すると、アニリンという物質と同じ量の試料を混ぜて冷やし、試料とアニリンが分離する温度をアニリン点と呼んでいるわけです。アニリン点が低い=混ざりやすいということでアニリン点が低い溶剤ほどゴムも膨潤しやすいことが知られています。

https://www.packing.co.jp/GOMU/anilinboujun1.htmより引用

 

さらに、主な物質のアニリン点を見てみると…

ノルマルヘキサン…59℃

シクロヘキサン…30.2℃

トルエン…-30℃

ベンゼン…-30℃

※同じく三協化学株式会社のHPより引用

この値ならトルエンの方がノルマルヘキサンより膨潤することが裏付けられます。なぜ芳香族系の油の方がアニリン点が低いのか、いろいろ論文とか探してみたんですが見つかりませんでした…

とりあえずこれによってスピードグルーはトルエンを使うのが文句なしの最強であることがわかります。マジでトルエン最強や…

以上より、アニリン点がなるべく低い液体を探せば補助剤の代用品としては高い効果が出るのではないかと思ったのですが、困ったところが…

アニリン点がわかってる物質ってあまりないんです…

ホームセンターとかに売ってる油にアニリン点を書いた製品を見たことがありますか?僕はないですね。というかホームセンターとかで売ってる油の主成分の表示を見ても鉱物油としか書かれていない場合が多く、油の主成分がわかったのはほとんどありませんでした。

 

もっと他に代用品を探すいい手はないかと僕は考え、別の視点から探ってみることにしました。

それでは今日はこの辺で!