ジュール・マスネ
ウェルテル
Werther / Jules Massenet
全4幕〈フランス語上演/日本語及び英語字幕付〉
2026年5月30日(土)14:00 新国立劇場
【合唱指揮】平野桂子
【合 唱】新国立劇場合唱団
【児童合唱】世田谷ジュニア合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
ワーグナーやR.シュトラウス、ヴェルディばかりではなく、2~3年に一度はマスネやグノーの甘味たっぷりの音楽に浸りたいもの。マスネでは、圧倒的にマノンが大好きで、ロイヤルオペラでのネトレプコのマノン、新国立劇場でのヴァドゥヴァのマノン、サヴァティーニのデ・グリューのチャーミングでとろけるような上演が鮮烈に記憶に残っています。ウェルテルはファッシーニ演出の2002年の新国立劇場でのアントナッチとサヴァティーニによる上演を一度観ただけです、最後は窓の外に雪が降り続けるなかで大変美しい音楽でした。あの当時は五十嵐監督時代で、マスネ三部作として、マノン、ウェルテル、ドン・キショット(ライモンディ主演)が上演され、五十嵐時代の最大の功績だと思っています。
今回のジョエルの演出、既に新国で2回上演されているのですが、上海赴任時や都合が悪かったりして、今回が初めて観ます。伝統的でありながら、空間をうまく使った演出で、セットも仰々しくなく好感が持てます。ちなみに、ウィーン、ロイヤルオペラ、メトロポリタンなどのレパートリー制の公演が多いところでは、プレミエや大作の間にウェルテルを入れることが多いと聞いていますが、それは、大規模なオケや合唱が必要でなく、舞台の演出もストーリーからすると、あまり大規模なものでなくてよく、甘いメロディーもふんだんに盛り込まれていることから、公演を廻していくいく上で、非常に便利な演目なのだそうです。新国で3回目ということで、その位置づけなのかもしれません。
さて今回の歌手は、新国の日本人で看板的な存在、脇園彩がシャルロッテを、リリックなレパートリーが有名なカストロノーヴォがウェルテルを歌うことで、今シーズン盛り上がりの少ない新国オペラの中では、比較的注目された公演なのではないでしょうか。カストロノーヴォは18年前に武蔵野文化会館の小ホールでリサイタルを開き、モーツァルトなど大変すばらしい歌唱でしたが、それ以来の日本での公演、そしてウェルテルはロールデビューとのこと。第3・4幕の頂点に持っていくべく、最初はエンジンはフルではなかったのですが、楽日ということなのか、早めに高揚した感があり、まずますのロールデビュー、オシアンの歌や最後幕切れまでの歌唱は真実味が感じられました。脇園もロールデビュー、シャルロッテはメゾの貴重な主役の役どころであるものの、アリアで手紙の歌などはありますが、意外に目立たない音楽が多く、若干損な役回り。皆苦労する役ですが、脇園は演技も上手く、声も自然、声量も十分で役割を果たしていました。少し粗いものの、ソフィーの砂田の伸びる声は清涼感ありました。他の日本人歌手、須藤、村上、駒田も健闘(村上が画像と違い過ぎて笑)していました。
ウクライナの指揮者ユルケヴィチ、マスネの音楽としては少し重心が低いと感じるところがあったものの、単に手堅いだけでなく緩急を付けながらの指揮でカーテンコールでは盛んに拍手を受けていました。
この歌劇、どうもノエル・ノエル・ノエルからはじまる少年少女が歌う讃美歌が美しく、第3幕でのオシアンの歌からフィナーレまでは音楽的にも充実するのですが、それ以外のところは、甘いんだけど、そこまで乗れずというもので、第1幕・第2幕がややもたれるところがありますが、最後に感動して終わるというパターンですね。それにしても、このゲーテの原作、キリスト教の教えや制約から、自由を求める情熱という背景を理解していれば、まあそうなのかと腹落ちもしますが、何も知らずに観ると、前半では単なるストーカーで、危ない人ですよね(笑)、では。






