2024/8/8(木)
19:00開演 18:30開場 トッパンホール
周防亮介(ヴァイオリン) イザイ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲

 

イザイ:
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Op.27
第1番 ト短調/第2番 イ短調/第3番 ニ短調/第4番 ホ短調/第5番 ト長調/第6番 ホ長調

 

周防のヴァイオリンは何度か聴いてきましたが、一番のインパクトは2022年のトッパンホールでのパガニーニの「24のカプリース」とシャリーノの「6つのカプリース」を織り交ぜた演奏で、そこでの集中力は鬼気迫るものがあり、迫ってくるものがありました。その周防が19世紀末から20世紀初頭の大ヴァイオリニスト、イザイの無伴奏ヴァイオリンソナタの全曲演奏会ということで、前回同様に期待大で聴きに行きました。

 

イザイの無伴奏は、第3番が単一楽章で短いこともあり有名ですが、最近では第2番の第1楽章、バッハを明確に引用いながら、独特の間があるあの曲が、協奏曲の後のアンコールで弾かれる機会もちらほらあります。しかし全曲で演奏会で聴くのは今回がはじめて。音源ではツィンマーマンのものを気に入っていますが、第2番ばかり聴いているような。

 

今回も舞台登場した時点から、周防自体の気迫というか緊張感が半端なく、ピンと張り詰めた空気でした。第1曲はある意味、聞かせにくい曲、シゲティに捧げられたものですが、バッハの要素はありながら、バルトークの諧謔的な部分が強く集中力が求められます。第2番はバッハのパルティータ3番、そのまんまで急に間が産まれ、そして全曲通じてディエス・イレののテーマが通奏低音のように奏でられ続ける、やはりこの曲好きだな、周防のヴァイオリンのキレも素晴らしい。ジャック・ティボーに献呈。第3番は単一楽章のソナタ、ジョルジュ・エネスコに献呈、重音が特徴でコンクールの課題曲として作曲されたもの、参加者は随分驚いたことでしょうね(笑)。ダ4番はフリッツ・クライスラーへ献呈、アルマンド、サラバンドなどバロック的な要素が強いソナタで、正面きって聴いたのは今回は初めてなのですが、引用はない(と思いますが)一番バロック期の構成展開に沿ったもので、なかなかに興味深い。周防の演奏もこれまでの3曲とはややスタンスが異なり、またそれは当然なのだと説得力があるもの。第5番からはガラっと作風が変化、ドビュッシーやショーソン的な性格が強く、ドビュッシー晩年の新発見の無伴奏と言われたら、そうかと思ってしまうかも(笑)。どこか哀愁もあり、ドビュッシー的な半音階、アルカイックな性格も含まれており魅力的、周防の演奏はやや鋭角的過ぎるか、しかし真っ直ぐで好感。マチュー・クリックボーム(イザイ弦楽四重奏団のセカンドVn)へ献呈。そして最終第6番はマヌエル・キロガへ献呈、このヴァイオリニストはスペイン出身の当時は飛び抜けた技巧の持ち主としてイザイも一目置いていた若手だったとか。リズムがハバネラ風で単一楽章の技巧的な曲で締めくくりとして聴き応えあり、もっとポピュラーになっても良い曲では?周防のキレある演奏が素晴らしく、凄みと爽快感が合いまったもの。いやはや、今回の周防の演奏、年齢を重ねてスケールが大きくなると、逆に今日のようなストレートな演奏を欲するようになるかもと思うと、一期一会の意味あるコンサートだったと思います、では。