第1000回定期演奏会Bシリーズ
日時:2024年6月4日(火) 19:00開演(18:00開場)
場所:サントリーホール
【定期演奏会1000回記念シリーズ⑤】
【ブルックナー生誕200年記念】
指揮/エリアフ・インバル
東京都交響楽団
ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調 WAB109
(2021-22年SPCM版*第4楽章付き)[*日本初演]
第1000回定期公演、指揮を任されたのは大野ではなく、インバルでした。都響とのブルックナー9番は第3楽章までの通常の演奏があり、CD化もされています。それより以前はフランクフルト放送響との全集でサマーレ版の第4楽章付でした。カップリングは第5番の2枚目にこの第4楽章をもってきていて、全集でもその並びだったので、単に物理的制約によるものか、考えがあって分けたのか、どっちだったのかしらむ。
80代後半のインバルの指揮、今年2月にマーラー10番を振った時よりも、更に元気な様子で、第4楽章も含めて立ちっぱなし、手の振りも大きくダイナミック。第1楽章はダイナミックで溜めなどはほぼなし、直線的とも言えなくはないものの、不協和音が多いこの楽章、自然なバランスでそのまま聴かせるところと、少し控え目にして調和を優先させるところが上手く使い分けられていたと思います。最強奏部での迫力は単に音量だけでなく気迫が感じられました。第2楽章も速い、ヴァントほどではないにせよ、裏拍の演奏が大変そうですが、都響の機能も上がっていることもあり、聴き応えあり。第3楽章が白眉、金管の音がいつになく調和的でしかも過不足もなし、ヴァイオリン群の音も密度が高く素晴らしい。高音での弦ユニゾンでの宇宙的でどこか諦念的な響きも美しい。最終部の楽器間のつながりも良い出来栄え、事前に聞いた前回の第9番の演奏よりも今回の方が完成度が高いと言えるでしょう。
そして第4楽章は4人の音楽学者・作曲家による補筆版、ワーナーよりラトル・ベルリンフィルの演奏でも話題になりました(あれから更に改訂しているのかな?)。こちらも事前にラトル版とインバル・Hr響の録音で予習していましたが、結論としては、ブルックナーが最晩年どう考えてこの最終楽章を作曲していたのか、大変に参考になった、ということだと思います。決定稿でもなく、ブルックナーらしさは曲想や構成からしても半分ないくらいなので、端からこれで感動しようとはついぞ思っていなかったので、他の諸兄姉がそこまでボロクソに言わなくても、という風に感じましたが、、、インバル自身は核心的に演奏しているようですね。第3楽章まで演奏して、拍手もなしに退場するのがこの曲に相応しいのかもしれません。
インバルのブルックナーは曲による相性がはっきりしていて、3番、4番、5番、8番が素晴らしく、6番、7番、9番は音響づくりに差異はないものの、何か淡泊で聴き応えという点で物足りなさがあったのですが、この日の第9、殊に第3楽章は過去の印象を塗り替えるものがありました。都響のブルックナー、4月のブル3大野の名演がありましたが、来月のフルシャ4番、9月の大野7番も楽しみです、では。