2024年4月21日 [日] 15:00開演(14:00開場)

東京文化会館 大ホール

指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
管弦楽:読売日本交響楽団


エレクトラ(ソプラノ):エレーナ・パンクラトヴァ
クリテムネストラ(メゾ・ソプラノ):藤村実穂子
クリソテミス(ソプラノ):アリソン・オークス
エギスト(テノール):シュテファン・リューガマー
オレスト(バス):ルネ・パーペ
第1の侍女(メゾ・ソプラノ):中島郁子
第2の侍女(メゾ・ソプラノ):小泉詠子
第3の侍女(メゾ・ソプラノ):清水華澄
第4の侍女/裾持ちの侍女(ソプラノ):竹多倫子
第5の侍女/側仕えの侍女(ソプラノ):木下美穂子
侍女の頭(ソプラノ):北原瑠美
オレストの養育者/年老いた従者(バス・バリトン):加藤宏隆
若い従者(テノール):糸賀修平
合唱:新国立劇場合唱団
合唱指揮:冨平恭平

R.シュトラウス:歌劇《エレクトラ》op.58(全1幕)

上演時間:約1時間45分

 

鮮烈な公演、素晴らしい完成度。1時間45分があっと言う間に終わってしまった。先年のノット・東響のエレクトラ、兎に角ガーキーが素晴らしく、これほどのエレクトラは当面聴けないと覚悟していたのですが、翌年にこんな演奏に出会えるとは。

 

エレクトラのパンクラトヴァは指輪に続いて好調、冒頭の私一人孤独にから全開で、それが最後まで続いた声力が桁違い、しかも叫びではなく強靭で正確な声で、表情も含めて(これは指輪でも)演技力もあり真に素晴らしい。かつてバイエルン国立歌劇場の公演でタンホイザーでのヴェーヌスや、ジークリンデを聴きましたが、良い声ではあったものの、今日のインパクトはそれらを圧倒的に上回るものでした。

 

東京オペラの森でのエレクトラ、ポラスキは全盛期を過ぎてインパクトがなかったですが、新国で聴いたセクンデが強烈な歌唱(その10年ほど前はクリソテミスを盛んに歌っていた)、そして昨年の強大なガーキーのエレクトラも凄まじいものでした。あとはシュテンメとストゥンディーテでエレクトラが聞ければ、現時点でのトップのエレクトラは制覇したことになりますが、次々シーズンで新国でストゥンディーテを招聘して貰いたいものです。

 

そしてクリソテミスのアリソン・オークス、信じられない位の声量、そしてこちらもフォルムが確り。声そのもので一番痺れたのはオークスだったと思います。この人でイゾルデやブリュンヒルデを聴いてみたい!そして藤村実穂子のクリテムネストラ、こちらは力業ではなく、演技とディクションで聴かせる見事な歌唱。毒婦を前面に押し出した歌唱が多い中、言葉を明確にしながら、ある種の悲しみ、自己嫌悪など様々な表情を聴かせ、見せてくれたのが立派、こちらにも感動。

 

オレストのパーペ、一人だけ譜面を見ながらの歌唱でしたが、深い声は健在。また出番は少ないものリューガマーのエギストも好演。また侍女は日本のプリマたちが立派な歌唱、これほどのレベルのエレクトラの侍女もなかなか聴けるものではないですね。なかでも中島、清水は光っていました。

 

そしてヴァイグレ読響、これほどの演奏とは!読響も馬力はあるものの、金管などが粗くなることが得てしてありますが、この日はヴァイグレの知的かつ熱量のある指揮に見事に反応していました。それにしてもヴァイグレ、音量コントロールも見事で緻密で全くもって素晴らしい、ヴァイグレの指揮を聴く機会が意外に少ないのですが、この日の演奏だけを以てしても素晴らしい指揮者だと改めて認識した次第。

 

それにしても20周年の東京の春、トリスタン、指輪、ブルミサ3、アイーダ、エレクトラと聴きましたが、水準が極めて高く充実したものとなりました。来年はパルジファル以外がどういう演目、メンバーになるのか楽しみですし、鈴木さんが元気な内は期待できますね!、では。