2024年4月17日 [水] 14:00開演(13:00開場)
2024年4月20日 [土] 14:00開演(13:00開場)
東京文化会館 大ホール

 

ヴェルディ:歌劇《アイーダ》(全4幕) [試聴]
上演時間:約3時間50分(休憩2回含む)

 

指揮:リッカルド・ムーティ
アイーダ(ソプラノ):マリア・ホセ・シーリ
ラダメス(テノール):ルチアーノ・ガンチ※
アモナズロ(バリトン):セルバン・ヴァシレ
アムネリス(メゾ・ソプラノ):ユリア・マトーチュキナ
ランフィス(バス):ヴィットリオ・デ・カンポ
エジプト国王(バス):片山将司
伝令(テノール):石井基幾
巫女(ソプラノ):中畑有美子
管弦楽:東京春祭オーケストラ
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:仲田淳也

ラダメス役(テノール)のクロディアン・カチャーニは都合により出演ができなくなりました。代わりまして、ルチアーノ・ガンチが出演いたします。

 

 

17日、20日両日共に観ました(17日は5階正面、20日は1階8列)。80代のムーティ、背中が伸びオケ・歌手のコントールも見事、これだけのオーラを出せる指揮者は世界にもなかなかいない。両日共に室内楽的にコントロールされた弦楽器と、追い込み部分の対比が素晴らしい。全部が乱暴になるか、整っただけの演奏が多い中で、これは流石。ニューフィルハーモニア管とのEMI録音、バイエルン国立歌劇場でのLive、両方共にムーティの銘盤であるが、今回の演奏は弦のコンロトールが両者と比較しても見事。ハルサイオケは弦はそこまでの実力がある訳ではないですが、ムーティに喰らいついていく姿勢が素晴らしく、それが音楽表現として聴衆にも伝わってきます。

 

歌手、先ずはアイーダのシーリ、アイーダ役を150回以上歌ってきて、映像作品も多数のベテラン。初日はとにかく声が出ず明らかに不調、第3幕のもう故郷の土を踏むことはない、と第4幕の二重唱は何とか気合いで歌い切った様子。2日目はかなり調子が戻り、ディクションも正確で表現も細やか、しかし声量は控えめで、もう最盛期は過ぎてしまったということなのでしょうね。。カーテンコールでの表情を見ると人間としてはとても良い人のようです。

 

ラダメスのガンチ、こちらも初日は不調で第4幕で漸く本調子に。声を張るところは良いのですが(それでも結構乱暴・・・)、特にソット・ヴォーチェは全く決まらず。昨年のシモン・ボッカネグラであれだけ名唱だったのに。2日目はシーリ同様、かなり調子を取り戻し、清きアイーダは初日同様でしたが、その後は声の飛びは十分、第3幕以降は劇性も表現として表に出て聴き応えが漸くできてました。

 

アムネリスのマトーチュキナ、誰もが納得の今回の公演の歌手での主役。仮面舞踏会でのウルリカが素晴らしく、出番が少ないのが勿体ないと思っていたのですが、ここまで素晴らしい歌手とは!しかし両日共にそうだったのですが、第1幕、第2幕は音程が同じ個所でフラットになることが多く、?という感じもあったのですが、やはり第4幕は冒頭の二重唱から後悔の独白部分まで、これだけ歌えるのは、コッソットやバルツァ以来では?感情表現、声量、コントロール全てにおいて、この第4幕は完璧、いやはや素晴らしい。2日間を比べると初日の方が完成度としては素晴らしかったですが、2日目も立派な出来栄え。但し、今回は歌手陣がムーティの前に並んで歌うため、2日目は私の席からはマトーチュキナがムーティに結構隠れてしまったのは残念でした。ここから10年くらいが全盛期だと思われるので、これから機会があれば逃す訳にはいかない歌手ですね、新国で呼んで欲しいものです。

 

他はアモナズロのヴァシレ、出番が少なく残念に思うほど張りのあるバリトン、ランフィスのデ・ガンポは響き立派なバスで引き締めました。エジプト王の片山は初めて聞きましたが、なかなかの声量、表現はまだまだ振れていて一生懸命さが見えてしまっています。巫女の中畑、指輪ハイライトでの小鳥もそうでしたが、諸兄姉でかなり褒めておられるかあが多いのが意外、声量があり将来性は買いますが、小鳥も小鳥らしくなく、巫女も清楚ではなくヴィブラートバリバリ、どうもしっくりきませんでした。

 

東京オペラシンガーズ、初日5階席では迫力十分で圧もあり聴き応えがあるなと思っていたのですが、2日目は1階席だったせいか、一寸合唱声量が大き過ぎてやや乱暴に聞こえましたが、変なストレスがなかったのが良かったです。やはり聴く場所で聴こえ方がかなり異なるのですね。

 

カーテンコールでの写真撮影はこの公演は禁止、公式Xでも他の公演ではあがっている画像が今回のアイーダだけは1枚のないのはムーティの意向なのでしょうか。かつて聴衆に舞台と音楽に集中させるために、字幕表示に反対していた時期もあったムーティですから、まああり得るなと(笑)→ 公式XにはUPされました(修正)

 

全体としては、指揮、歌手、オケ、合唱が奇跡的な水準であったマクベスには譲るものの、今回のアイーダもかなり堪能することができました。来春はと思っていたら今年9月にイタリアオペラアカデミーが開催されムーティの得意曲アッティラが上演されるとのこと。この作品はムーティ、シノーポリの演奏が80年代席捲しましたが、期待大。尚、この秋は中国蘇州でもムーティのこのアカデミーが初開催されるそうです。こちらもアッティラなのでしょうね、スケジュール確保せねば、では。