2024年2月16日(金) 19:00開演/サントリーホール
第994回定期演奏会Bシリーズ
指揮/エリアフ・インバル
語り/ジェイ・レディモア*
ソプラノ/冨平安希子*
合唱/新国立劇場合唱団*
児童合唱/東京少年少女合唱隊*

 

ショスタコーヴィチ:交響曲第9番 変ホ長調 op.70    
バーンスタイン:交響曲第3番《カディッシュ》*(日本語字幕付き)

 

ショスタコーヴィチの交響曲で9番と6番と並んで、スケルツオ的な性格の交響曲というか、敢えて期待に背て軽めの交響曲を書いて、そして非難される、分かっているけどやる、そして後悔?(=偽の反省?)を行い次の作品を作る、本当に複雑な作曲家です。正直敢えて選んで聴きに行く作品ではないですが、この日のインバルと都響、特に都響の反応の良さはオケのコンディションの良さを感じさせるものでした。軽快で木管のソロも秀逸、特にファゴットの長いソロは聴き応えあり。インバルも行進曲調の部分では足踏みをしながらの指揮、88歳とは思えない活気、円熟はあっても老成の影は全くありません、いやはや大したものです。

 

バーンスタインの交響曲も正直苦手で、録音ではオペラや管弦楽曲はそれなりに楽しめますが、交響曲はどうも。。。それでもラトルとツィメルマンで交響曲2番不安の時代をロンドン響の演奏でコンサートで聴きて興味を持ち始め、今回は交響曲第3番、交響曲というよりは、独自の詩篇という印象ですが、第1楽章や最終部の迫力、神の賛歌ではなく神への不信、問いかけ、嘆き、そして一体化。心から共感するものかと言われれば違うのですが、不思議な聴き応えがありました。この日の語りは米女優のレディモア、PAのせいかそこまで評判は良くないようですが、私の席からはリアルで押し出しもあり好ましく思えました。ソプラノの冨平は一寸のどの奥で歌うような癖がありますが、真摯な歌でした。新国はいつもの精緻さよりは、この曲に合わせたのか、情を前面に出したものでしたが、テーマには合っていたと思います。インバルの指揮は核心に満ちたもの。何度も演奏してきた手中の音楽で、ユダヤ系でバーンスタインのイスラエルでのリハーサルにも立ち会った経験も活きているのでしょう。アメリカの指揮者がお国ものとして採り上げる音楽ではないということですね。現在のガザでの出来事がどうしても頭をよぎると同時に、完全自己肯定の合唱の歌詞には疑問も勿論あるのですが、考えさせるという意味でも意義があったコンサートだったと思います、では。