2024年2月12日(月・祝)16時30分開演

2024年2月24日(土)11時開演

2024年2月は中村屋、十三世の追悼興行でした。圧倒的だったのは籠鶴瓶、勘九郎、七之助共に初役だそうですが、これが大当たり。吉右衛門などの古典の腹芸とは対照的にドラマルギーが立っていて、これぞ中村屋。渡辺保が観たら怒りそうな舞台(笑)。しかし勘九郎の次郎左衛門、何と雄弁で心情が動的で雄弁なことか、私からすると十三世よりも迫るものがありました。十三世はどうしても、勘三郎の個性が役を通り抜けて伝わってきましたが、勘九郎は人物そのもの。スタイルは驚くほど(当たり前かもしれませんが)一緒ですが、完成度は今回の方が上回るのではないでしょうか、素晴らしい。七之助の八ツ橋も立派、ではあるものの空気感はまだまだ上を目指せるでしょう。またおきつの時蔵の芸が細かく、立花屋の女将としての風格もあり。また松緑の釣鐘権八、これが憎々しくて良いですね。仁左衛門、監修指導の立場ですが、長年勤めてきた栄之丞、ひも、もとい気位高い優男、でもなぜかどことなく憎めず品もある、80歳手前の仁左衛門の存在感はさすがでした。

 

他には野崎村の鶴松、これまでどことなく中途半端な印象がどうしても拭えなかったのですが、今回のお光は等身大で健気さが良し。児太郎のお染は少しクドイ。七之助の久松も動きを抑えたものでしたが、もう少し天然なところも見せては。

 

釣女は芝翫の独壇場、メイクというか表情というか歌舞伎座がこれだけ大爆笑なのも珍しい。萬太郎も醜女に追いかけられる場面があるのですが、あれは本気で笑っていましたね(本当はいけないですが)。

 

江戸の初櫓は中村屋の出し物で華やか(ですが、面白味はあまり・・・)。すし屋、いがみの権太を芝翫が初役ですが、こちらもややクドイ、途中少し長く感じる場面も。維盛の時蔵、何度この役で観たことか、流石の出来栄え。時蔵は梅枝にどんどん役を伝承し渡している過程で腰も悪くなってきているそうですが、芸としては今が極みでしょう。

 

最後は連獅子、コロコロしてどことなくおぼこい長三郎は健闘。本題はそこでなくてやはり勘九郎の姿の美しさと、その気迫、近年稀に見る勇壮な親獅子であり、素直に感動しました。今月や勘九郎の勢いが凄まじい舞台でした、では。