鈴木雅明 指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
ブラームス《ドイツ・レクイエム》

2024年1月19日[金]19:00
東京オペラシティ コンサートホール

 

鈴木雅明(指揮)
安川みく(ソプラノ)
ヨッヘン・クプファー(バス)
バッハ・コレギウム・ジャパン(合唱&管弦楽)

 

シュッツ:主にあって逝く死者は幸せだ SWV391
ブラームス:ドイツ・レクイエム op.45

 

シュッツは、ドイツレクイエムと正にヨハネ黙示録の同じ歌詞を用いた作品で5分ほどの小品。この作品は数十年前にアンサンブル・シュッツの歌唱で大阪で聴いたことを覚えています。間を空けずそのまま、ドイツレクイエムへ。

 

今回の楽器ですが、ブラームスということで18世紀後半のものをかなり揃えて演奏。オーボエはジャーマンボアの古い物、Tpは現代の低音のBフラットのものではなく、Low F管、ホルンはウィンナホルンなどしっかりと拘った編成がとられました。また指揮者右に配置されたエオリアンの古いハープ(だと思う)の少し鄙びた音が効果的でした。いつもに比べて編成が大きく、いつものコアメンバーに加えて、欧州ツアーでよく見る奏者が多数。またウィンナホルンは名手福川氏(これが上手かった!)。

 

合唱のまとまりはいつも通り素晴らしく、殊にソプラノとバスパートの充実振りは特筆すべきもの。モダンオケであれば、響きが分厚くなり過ぎて、合唱は人数を増やさないと歌詞が明瞭に聞こえてこないですが、指揮のバランス調整の上手さと、小生の席が1階席10数列ということもあり、この辺りは完璧(1階後方はどうなのかしらむ)。かつてラ・フォル・ジュルネで聴いたローザンヌ声楽アンサンブルのピアノ版での演奏も当然ながら歌詞が明瞭に聞こえたのも想い出しました。

 

第1曲嘆くものほど幸せだ Selig sind die da Leid tragen 、この最初のモチーフは第7曲まで至るところで再現され、核となる部分で、繊細で何という合唱の美しさ。また、ソロのバスのヨッヘン・クプファー(懐かしい!)が久々に登場、何という朗々とした喉の奥が空いた声、演出過剰にならず、その真摯なまなざしも印象的でした。ソプラノの安川は以前ノット東響でラヴェルのシェエラザードの佳演を覚えていますが、少しだけ音入りが不明瞭なところがありましたが、真っ直ぐでほのかな艶がある声は以前と同様で魅力的、もう少しドイツ語らしい発音があればと。オルガンはいつもの箱オルガンではなく、オペラシティのオルガンを使っていましたが、時折おやっと思うほど強奏の部分があって新鮮な響き。また難しいウィンナホルンの福川のソロも完璧でした。鈴木雅明は左腕が故障して吊っている状態での指揮でしたが、前半の静謐な音楽~後半の凄まじい熱量に圧倒されました。トータル80分ほどの演奏会でしたが、十二分に中身の濃いものだったと思います。マイクがあれだけ立っていたので、BIS(またはキング)で録音が発売されると思いますが、非常に楽しみです、では。