2023年11月22日(水)19:00 開演(18:30 開場)
東京/サントリーホール
指揮 アンドリス・ネルソンス

ライプツィヒ ゲヴァントハウス管弦楽団


PROGRAM
ワーグナー
楽劇「トリスタンとイゾルデ」から 前奏曲と愛の死
ブルックナー
交響曲第9番 ニ短調
TICKET S¥34,000 A¥28,000 B¥22,000 C¥16,000 D¥13,000

 

ネルソンスの指揮者は上海でウィーンフィル2公演(英雄の生涯、ベト8など)、ボストン響2公演(マラ6など)、そして今回のゲヴァントハウスということになります。コロナで中止になりましたが、ブル7~9を3晩で東京で演奏する企画が流れたのは残念でした。今回そのリベンジではないですが、ブル9の公演。先日全集が完成した同コンビのブルックナー交響曲全集(これにワーグナーの管弦楽曲がカップリング)の出来栄えはなかなか素晴らしく、特に4番、6番、9月の出来が断然良く、初期交響曲、5番、8番はイマイチ突き抜けが足りない印象でした。

 

先ずはトリスタンとイゾルデの前奏曲と愛の死、先日のスピノジの動的な演奏とはことなり正攻法の真っ直ぐな堂々たる演奏、冒頭のチェロが美しい、対抗配置のヴァイオリンのやりとりも美しい、愛の死でのクラリネットをもっと前に出して欲しいし、ブレスを漏らしながらの奏法なので、興が削がれた感はありましたが、、、。

 

そしてブル9、第1楽章驚くほどの速いテンポに驚き、少し経過して一寸落ち着きましたが、どんな演奏になるのかと。ここは後で録音を聴き返すと速めのテンポではあるものの、この日ほどではありませんでした。第1楽章前半は粛々と進めていき、豪快の名の下の混濁した演奏よりはずっと良いのですが、中間部からテンポも少し落ち着き、第2ヴァイオリンやフルートの響きがとても印象的で素晴らしい。第1楽章は不協和音も多く、これをどう料理するのかが指揮者の腕の見せ所である訳ですが、ネルソンスはスクロヴァ翁並みに不協和音をそのままぶつけてきて、面白い響きでした。ボストン響のマラ6でも同様の箇所があったので、当然ながら意図的なのでしょう。最終部の高揚感はなかなかのもの。第2楽章も最速かも、冒頭3小節目から頻繁に出てくるピッツィカートは奏者は必死(笑)、中間部はこれまで一番朗々としたもので、シンメトリー内での対比が際立っていてこれは面白い。そして第3楽章、主題の響きが深くこれは惹き込まれる、第3楽章の頂点とも言える、オーロラやレースのような弦の響きはもう少ししっかりと溜めて欲しいところでしたが、ここはあっさりと通り過ぎてしまったのは物足りず。しかし緊張感は保ったまま静寂の中で音楽は終わりました。

 

Tpやトロンボーン、チューバが上手く、Hrはもっとコクが欲しい。木管はフルートの響きが美しい。オーボエはトーンを伸ばすところなどは良いのですが、フレーズアタックと微妙なヴィブラートが、、。クラは前述の通り。弦楽器の一体感は特筆できるもの、チェロ、第2ヴァイオリンが良い仕事をしていました。ネルソンス、ブル9の演奏で奏者とアイコンタクトして笑顔を浮かべるなど、通常この曲を指揮する場合に考えにくい表情、彼にとっては特別な曲ではなく、one of themなのでしょうね。それにしてもいつも良く奏者と握手するなと(笑)。正攻法と異端が混じったユニークな演奏会で結果としては面白く聴けました、では。