2021年6月19日(土)歌舞伎座

今日は第1部から第2部を続けて観ました。第1部は芋洗い勧進帳と夕顔棚。御摂勧進帳は最後の場面が弁慶が引きちぎった人間の首を芋に見立てて、弁慶が樽の中で廻して喜劇的に終わるもので、数多くは上演されていませんし、小生も初めてでした。ちょっと疲れていて前半は撃沈、後半の動きの多い場面から楽しませて貰いました。休憩後は夕顔棚、前回も観ましたが、菊五郎の婆さんに左團次の爺さんのゴールデンコンビ。何でもない表情が二人の年齢も相まって好感持てました。菊五郎の女形はもうなかなか見れないですしね。

 

そして、第2部はお目当ての桜姫東文章、6月の第2部は早々にチケット売り切れ。今日は1階席でしたが、50%制限なので目の前に遮るものがなく非常に観易い舞台でした。上の巻で白菊丸と桜姫を演じた玉三郎、動きは台詞は圧倒的に下の巻の方が多く、表現も多彩。箱入り娘から品川の花魁・女郎までスゴイ変化を素で受け止めていく桜姫、玉三郎もこのお役は精神的なものがないと言い切っていますが、それがこの南北の世界の魅力であり、見せどころでもあります。キャラクターがころころ変わるこの役を見事に、そしてコケティッシュに演じて見せた玉三郎に脱帽でした。特に下の上演写真の花道を権助と茣蓙を被って下がるところ、ぞくっとしました。、74歳?年齢のことは言わないようにしましょう。仁左衛門も上の巻からの好調を持続、清玄と権助を何度も入れ替わりながら、最後は頼国まで演じて大団円。南北の芝居らしく、幕前に出演者が手をつき、こんにち(今日)はこれきり、と挨拶、これ好きなんですよね。前半の歌六と吉弥の粘りの演技も良しでした。いやはや、これがT&Tの最後の桜姫であろうし、伝説の舞台をキャリアの終盤、しかも素晴らしい演技で観れたことの喜びに浸ることができました。また、南北物を孝玉で集大成として上演してくれないかな、では。

 

 

第一部
一、御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)
大らかで豪快な、もう一つの勧進帳
 兄頼朝と不和になり、都を落ち行く源義経は、武蔵坊弁慶ら家来とともに山伏に姿を変えて奥州平泉を目指します。その道中、一行は加賀国安宅の関で関守の富樫左衛門と斎藤次祐家らの詮議を受けます。主君を命懸けで守ろうとする弁慶の忠義心に心打たれた富樫は、義経一行と見破りながらも通過を許しますが、斎藤次の疑いは晴れず…。
 弁慶が番卒の首を次々と天水桶に投げ込み、金剛杖で芋を洗うような動きを見せることから、通称「芋洗い勧進帳」とも呼ばれる豪快な荒事のひと幕。歌舞伎十八番の『勧進帳』より以前につくられた作品で、怪力無双の弁慶が稚気に富んだ泣き姿を見せるなど、古風で大らかな江戸歌舞伎の味わいあふれる舞台にご期待ください。

二、夕顔棚(ゆうがおだな)
夕涼みを楽しむ老夫婦の姿に、ひとときの安らぎを
 ここは田舎の百姓家。旧盆の夕暮れ、軒先には美しい夕顔の花が咲いています。夕顔棚の下では、湯上がりの夕涼みを楽しむ爺。風呂から上がってきた婆と二人で酒を酌み交わしていると、そこへ盆踊りの唄が聞こえてきます。この数年、世の中が落ち着かず盆踊りが催されるのは久しぶりのこと。その唄に耳を傾けるうち、二人は昔を思い出し…。
 のどかな田舎の風景のなか、夕涼みを楽しむ老夫婦を情感豊かに描いた秀作。昭和26(1951)年に歌舞伎座で初演された清元の舞踊で、若き日を懐かしむ二人の姿が、温かくユーモラスに描かれます。心に寄り添い、詩情あふれるひと幕をご堪能ください。

第二部
桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)
退廃的で残酷な美の世界
 高僧であった清玄は、吉田家の息女・桜姫との不義の相手として濡れ衣を着せられ、寺を追われてしまいます。かつて愛した稚児・白菊丸の生まれ変わりである桜姫への執念を抱き続ける清玄は、今は病み衰え、弟子であった残月と桜姫の局であった長浦のいる庵室に身を寄せています。しかし、残月と長浦は、金欲しさに清玄を殺すと、墓穴掘りとなった権助に後始末を依頼。そんななか、女郎として売りに出された桜姫が連れて来られ、桜姫と権助が再会するのでした。一方で雷が落ちた衝撃から、清玄は息を吹き返し…。
 清玄と釣鐘権助、白菊丸と桜姫の役を、実に36年ぶりとなる人気の配役で上演し大きな話題となった4月公演の「上の巻」に続き、当月は「下の巻」として上演。「大南北」と称される四世鶴屋南北が得意とする退廃的で残酷な美の世界、南北の鬼才が余すことなく発揮される名作です。清玄の桜姫への妄執、桜姫と権助の再会、清玄の蘇生など息もつかせぬ展開が続き、下級娼婦となった桜姫の悪婆さながらのせりふとお姫様の言葉遣いが入り混じったせりふは聞きどころ。愛欲のために流転していく三人の運命にご期待ください。