第37回演奏会
 1964年前後・東京オリンピックの時代

2021年3月21日(日)14:30開演
紀尾井ホール

 

古関裕而  オリンピックマーチ(1963)管弦楽原典版 
入野義朗  交響曲第2番 (1964)
三善 晃   管弦楽のための協奏曲(1964)
團伊玖磨  交響曲第4番(1965)

指揮:    野平一郎
管弦楽:    オーケストラ・ニッポニカ
チケット:    全席指定 3,000円

 

東京オリンピックに関連した委嘱作品などを採り上げた演奏会。オリンピックには文化プロジェクト・プログラムが義務化されていたとのことで、各放送局などが積極的に委嘱した作品が多く残っているそうです。その意味では、2021年の東京オリンピックはオペラ上演(マイスタージンガーなど)はありますが、日本人作曲家への委嘱などは今回行われているのでしょうか。スポーツの祭典であると同時にこのような各文化プロジェクトがあるからこそ、オリンピックが他の世界選手権やワールドカップと違うのではないでしょうか?その意味ではオリンピック自体は見たい気持ちはありますが、多くの方が心のどこかで感じられているように客観的には前回の東京五輪の方が開催意義自体は極めて大きかったのでしょうね(今回の東京オリンピックだけではないですけど)。

 

さてこのニッポニカのコンサート、昨年から延期となっていたものですが、意義あるコンサートを続けている稀有な団体で敬意を払っています。聴衆もいつものコンサートとは違う空気感でベテランになりつつある小生としては心地良いのです。蛇足ですが、オリンピック特集で華やかな音楽を期待して来られたご夫婦がおられて、古関裕而のマーチ以外は、何だこれ、という表情をされていたのが可笑しくて(失礼!)。

 

古関のマーチは管弦楽版は初演以来の演奏とのこと、楽譜が散逸していたのを苦労して収集されたとのことです。明るいマーチで今回五輪が開催されるのであれば、各オケもコンサート冒頭で演奏しては?(というか、今回はマーチを委嘱していないのか?皇室関連でもYOSHIKIさんなども才能ある方だとは思いますが、ポップスの方に総合演出・作曲委嘱したりして残念無念と言わざるを得ません(怒))。

 

入野の日本での十二音技法の第一人者、作品を確りと聞いたのは初めてです。これは交響曲なのかな、形式にこだわるのではないですが、長大なヴァリエーションだと感じたのですが、聴き応えはありました。そして三善の管弦楽のための協奏曲、十数分の短い曲ですが、非常に緻密で多様性が感じられる秀逸な作品で、今日の作品では一番気に入りました。この曲を作曲した時期は、技法は極めていたものの作曲家としてのアイデンティティについて色々と批判を浴びていたとのことですが、作品としては非常に立派なもので、何度も採り上げる価値のある作品だと思います。休憩後は團伊玖磨交響曲の内、最後のもので最も評価が高い作品。オーマンディ・フィラデルフィア管やマズア・ライプツィヒゲヴァントハウス管でも演奏されたそうですし、作曲家がウィーン交響楽団を指揮したディスクも残っていますね(西武の堤清二氏がパトロンとなって録音が実現したそうです)。4楽章のかっちりとした形式を有する立派な交響曲。第1楽章の低弦と、甲高い木管のフレーズが第1主題として展開されていくもので、小生にはやや同じ音型の連続過ぎてしんどくなる部分はあるものの、コンサート作品のメインとして演奏される価値のあるものでしょう。因みに駿河銀行からの委嘱で、神奈川県を意識して作曲されたものだそうです(曲想からは小生はあまり神奈川は感じられず)。

 

野平一郎の指揮、高木がコンサートマスターを勤めるオケの演奏は共感性にあふれるもので、コンサートの意義に共感して集まっているメンバーであることが感じられるものでした。マイクが立てられていましたので、過去のいくつかのコンサートと同様、エクストンかフォンテックから発売されるかもしれませんね。そうであれば応援の意味で購入しようかと思います、では。