2021年3月8日(月) 第一部、第二部、2021年3月28日(日)第三部

 

3月の歌舞伎座、第一部最初は猿若、歌舞伎を観始めた時に、どなたが出演していたのかも忘れましたが、それ以来の演目。こんな言い方何ですが、どうってことないもの。若衆が艶やかに賑やかに、その中で少し笑いが入りながらという作品でした。戻駕色相肩は初めてでしたが、ここ最近役と合って見応えがあった松緑ですが、また以前の印象に。さらっと流れた印象となってしまいました。

 

第二部は仁左衛門の熊谷、昨年は南座で上演されました。NHKで南座の公演が放送されましたが、流石ではあるものの、盛綱陣屋での佐々木盛綱の名演と比べると、との想いがどこかにありましたが、大変失礼致しました。渾身の演技で直実の腹・心が凄まじいオーラとなって飛び込んできました。孝太郎の相模も立派、門之助の藤の方は上記放送ではあれっと感じたものの、今回の歌舞伎座では孝太郎とのバランスも良く、ある意味直情的というか天然要素もある藤の方の演技としてはこういうやり方があるのかと感じた次第。義経の錦之助は鉄板になりつつありますね。弥陀六の歌六も十八番、最近は左團次が出れなくなっているようなので、歌六に集中していますね。いやはや重厚な熊谷でありました。

 

そして休憩後の直侍、菊五郎の十八番ですね。こういう世話物はやはり音羽屋。そばや主人の橘太郎のきりっとした声も良いし、團蔵の丑松、菊五郎との台詞の掛け合いが気持ち良い!そして三千歳の時蔵、意外に出番が少ない役ですが、艶があり魅せます。こちらも気持ち良く見ることができました。

 

第三部は楼門五三桐と、地唄舞の雪と鐘ヶ岬で上演時間は合計すると50分弱(第二部は合計2.5時間)、それでも中身は濃い上演でありました。先ずは楼門五三桐で、石川五右衛門は吉右衛門で真柴秀吉は幸四郎。冒頭の「絶景かな、絶景かな」の見事なこと、決して大声ではなく、腹の底から出す声、しかも野太くはしないで、というところに吉右衛門の品格があるのでしょうね。わずか15分ほどの演目ですが、重さは十二分にありました。まさかこの日の夜に緊急搬送されるとは、、、、続報が全く出てこないので心配ですが、ここは時間をとって療養して回復されるのを祈ります。

 

後半は玉三郎の地唄舞。AプロとBプロがあってAプロの隅田川がメインとなっていますが、芸術性の高さは勿論あるのですが、6代目歌右衛門の映像を見ても暗すぎてどうも相性が良くない演目なので、Bプロの日で都合の良い日を探しました。地唄舞ですので、本来は歌舞伎舞踊ではなく、大阪南の芸鼔衆の座敷舞ですが、上演記録を見ると歌舞伎座では鐘ヶ岬は歌右衛門2回、富十郎1回、2代目橋蔵1回の合計4回、雪に至っては初演となりました。玉三郎はこの2演目は大事にしていますが、過去は地方での舞踏公演やサンシャイン、セゾン、テアトル銀座などの劇場のみで、歌舞伎座では両演目共に初めて採り上げとなりました。雪は昔を偲ぶ芸妓で動きも極小まで抑えられています。これを大舞台で観客に見せて納得させるのは現在では玉三郎だけでしょう。鐘ヶ岬は道成寺物であり、京鹿子を知っていれば良い面白い舞です。こちらも動き自体は抑制されていますが、雪との対比で華やかさがあり、舞台装置も桜一面で立体的に見えるもので美しいこと!カーテンコールまであり、充実した地唄舞を堪能することができました。

 

4月は何と言っても仁左衛門・玉三郎の桜姫東文章の上の巻、6月には下の巻の上演も決定したとのこと。この二人による上演は最後になるのではないかと思われるのでファン必見だと思います、では。

 

第一部
田中青滋 作
一、猿若江戸の初櫓(さるわかえどのはつやぐら)
猿若 勘九郎
出雲の阿国 七之助
若衆 宗之助
若衆 男寅
若衆 虎之介
若衆 千之助
若衆 玉太郎
若衆 鶴松
福富屋女房ふく 高麗蔵
福富屋万兵衛 彌十郎
奉行板倉勝重 扇雀

二、戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)
浪花の次郎作 松緑
禿たより 莟玉
吾妻の与四郎 愛之助

第二部
一谷嫩軍記
一、熊谷陣屋(くまがいじんや)
熊谷次郎直実 仁左衛門
源義経 錦之助
熊谷妻相模 孝太郎
梶原平次景高 松之助
堤軍軍次 坂東亀蔵
藤の方 門之助
白毫弥陀六実は弥平兵衛宗清 歌六

河竹黙阿弥 作
二、雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)
直侍
浄瑠璃「忍逢春雪解」
片岡直次郎 菊五郎
三千歳 時蔵
寮番喜兵衛 橘三郎
亭主仁八 橘太郎
暗闇の丑松 團蔵
按摩丈賀 東蔵

 

第三部
一、楼門五三桐(さんもんごさんのきり)
石川五右衛門 吉右衛門
右忠太 歌昇
左忠太 種之助
真柴久吉 幸四郎
 

Aプロ(4・5・6・7・8・9・10・12・13・14・17・18・19・23・24・25・26・29日)
二、隅田川(すみだがわ)
斑女の前 玉三郎
舟長 鴈治郎

Bプロ(15・16・20・21・27・28日)
  上 雪(ゆき)
二、下 鐘ヶ岬(かねがみさき)
〈雪〉
芸妓 玉三郎
〈鐘ヶ岬〉    
清姫 玉三郎