2021年2月21日(日)東京文化会館

オペラ全3幕
日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演
台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー
(パリ版準拠(一部ドレスデン版を使用)にて上演)

 

指揮:    セバスティアン・ヴァイグレ※
原演出:    キース・ウォーナー
演出補:    ドロテア・キルシュバウム
      
装置:    ボリス・クドルチカ
衣裳:    カスパー・グラーナー
照明:    ジョン・ビショップ
映像:    ミコワイ・モレンダ
      
合唱指揮:    三澤洋史
演出助手:    島田彌六
      
舞台監督:    幸泉浩司
公演監督:    佐々木典子

 

ヘルマン:⻑⾕川顯
タンホイザー:芹澤佳通
ヴォルフラム:清⽔勇磨
ヴァルター:⾼野⼆郎
ビーテロルフ:近藤圭
ハインリヒ:⾼柳圭
ラインマル:⾦⼦慧⼀
エリーザベト:⽵多倫⼦
ヴェーヌス:池⽥⾹織
牧童:牧野元美
4⼈の⼩姓:横森由⾐、⾦治久美⼦、⻑⽥惟⼦、実川裕紀(全⽇)
合唱:    二期会合唱団
管弦楽:    読売日本交響楽団

 

世界でワーグナーをこれだけの規模で上演できているのは日本だけでしょう。これが後世にどう評価されるか(小生自身は様々な理由からポジティブに考えています)。

 

欧州に戻っても劇場・コンサートホール閉鎖が続いていることがあり、12月から日本に滞在しているヴァイグレと読響がピットに入ったことが冥賀、今日は1階Rブロックでしたが、確りと弦が鳴りつつ、声にも配慮したカペルマイスターとしての実力を発揮、ヴァイグレのワーグナーではバイロイトのマイスタージンガーがイマイチでしたが、タンホイザーは相性が良いようですね。放送で聴いた死の都も素晴らしい演奏でした。12月に聴いたブルックナー6番が期待ほどではなく、ワーグナーの延長線での演奏だったので、期待と不安が五分五分だったのですが、吉と出ました。カーテンコールでもヴァイグレ、読響への拍手が最も盛大でした。

 

ウォーナーの演出は工夫は各所であったようでしたが、驚きのようなものは抑えめでした。最後の縊死したエリーザベトが芽吹いた杖に見立てた巨大な逆円錐形(スコーンを逆さにしたような形)の中で逆様になっておりてきて、ローマへ行こうとしていた(上っていた)タンホイザーと手と手を取り合おうとしていたところが、ウォーナーらしいかったと感じられました。但し、1幕から要所で登場する少年が何の象徴なのか(ワーグナー自身?タンホイザー?)は理解できませんでした(汗)。

 

歌手では正にキャリアのピークにある池田香織が盤石、但しもう少し高音域の方がこの歌手の魅力がダイレクトに伝わるので、3月の新国ブリュンヒルデが楽しみです(クンドリーも聴いてみたい、来年7月の二期会パルジファルに期待)。

 

タンホイザーの芹澤、今回がタイトルロールを初めて務めたそうですが、それがトリスタンよりもテノール殺しであるタンホイザーとは凄い度胸というか運命ですね。厳しい言葉も多く飛んでいるようですが、小生はこの若者に可能性を感じることができました。初日の片桐は酷かったようですし(片桐名誉のため、以前聴いたパルジファルはなかなかの出来栄えでした)、海外勢でも最近ではグールド以外で良い歌唱は聴いたことない中で、やや単調とは言え、あれだけ真っ直ぐな声を出せたのですから頑張れ、10数年後に声が熟成したころにもう一度聴かせて下さい。それにしても大昔に聞いたコロやザイフェルトのタンホイザー!またあのレベルのタンホイザーが聴きたい!!。

 

ヴォルフラムの清水、なかなかの体躯で美声、マーティン・ガントナーっぽい歌唱ですが、若干崩れるところがったものの、第1幕や第3幕での歌唱は立派、エリーザベトの竹多は第2幕の最初は若干しゃがれたように聞こえましたが、尻上がりに調子を上げました。二期会デビューだそうで、かなり緊張していたように見え、演技が少し硬くなっていたようです。ヘルマンの長谷川、久しぶりの大ベテラン、上下の音程はまともなのですが、フレーズの中の音程がフラットしたり不安定だったりするのは相変わらず、飯守歌劇団を支えてきた人ですが、どうしてもこのマイナス面だけは、、、3月のフンディンクは馬力を前面に出して乗り切って欲しいところです。では。