2020年2月9日(日)歌舞伎座 昼の部
十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言 | |
菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ) | |
〈加茂堤〉 | |
桜丸 | 勘九郎 |
斎世親王 | 米吉 |
三善清行 | 橘三郎 |
苅屋姫 | 千之助 |
八重 | 孝太郎 |
〈筆法伝授〉 | |
菅丞相 | 仁左衛門 |
園生の前 | 秀太郎 |
梅王丸 | 橋之助 |
腰元勝野 | 莟玉 |
左中弁希世 | 橘太郎 |
荒島主税 | 吉之丞 |
三善清行 | 橘三郎 |
水無瀬 | 秀調 |
戸浪 | 時蔵 |
武部源蔵 | 梅玉 |
〈道明寺〉 | |
菅丞相 | 仁左衛門 |
判官代輝国 | 芝翫 |
立田の前 | 孝太郎 |
奴宅内 | 勘九郎 |
苅屋姫 | 千之助 |
贋迎い弥藤次 | 片岡亀蔵 |
宿禰太郎 | 彌十郎 |
土師兵衛 | 歌六 |
覚寿 | 玉三郎 |
Youtubeの画像は羽田監督の記録映画、昭和56年の国立劇場での13代仁左衛門の希代の演技と言われた道明寺が作り上げられる貴重なもの、この動画を何度観たことか。特に12分過ぎから最後まで、成程成程の連続です。途中葵太夫の若い頃、玉三郎も刈谷姫を勉強している姿、我當、秀太郎も一所懸命、勘三郎や延若の姿もあります。神々しいとはこのこと。
当代仁左衛門6回目の上演、前回平成27年3月の歌舞伎座での公演、道真そのものが舞台に存在するような至高の演技で過去の歌舞伎観劇でも一二を争う印象的な公演でした。今回は13代仁左衛門27回忌の追善興行での上演。加茂堤から道明寺まで。
加茂堤、初役で八重を勤める孝太郎、最近の充実振りが表れた舞台、少し所帯染みた感じの役処では抜群の演技ですね、可笑しみも十分あり。桜丸の勘九郎、身体が引き締まり細面なので似合っております。そして斎世親王の米吉、刈谷姫の千之助が年齢相応の役処で初々しく良い舞台になっていました。
筆法伝授、仁左衛門の静の演技、存在だけで空気をピンと張らせる気迫。この筆法伝授は源蔵(梅玉)の忠義も見所ですが、希世の橘太郎の可笑しみもアクセント、前回からは東蔵から橘太郎にこの役処が渡されたようですね。屋号を超えた配役ですが、これからも重用されるでしょう。橘太郎は声もよし、殺陣名人でもあり動きが決まっており、そして間が良いですね。嵐橘三郎のいぶし銀の演技も良し。
そして道明寺、仁左衛門の至高の演技であり、一番大切にしているお役であることが観ていても伝わってきます。個人的なことですが、私は土師ノ里で育った人間で、近くに道明寺、道明寺天満宮があることからも、この狂言には想い入れもあります。前回は大阪から道明寺(現在は尼寺)のご住職も歌舞伎座に来られていました。座り姿だけでここでも空気を変え、そしてクライマックスでの刈谷姫との別れ、旅立ち、胸を打つものがありました。刈谷姫の千之助も遠い将来にこの役を演ずることがあれば、間近で15代の演技を焼き付けておけるこの機会は貴重なものとなったでしょう。立田の前は秀太郎が長く勤めていましたが、今回からは孝太郎、こちらも凛として良し。そして覚寿の玉三郎の演技が素晴らしい、平成22年にも演じており、映像でも確認できますが、段違いの出来栄え、覚悟も持った老婦人の気概が伝わってきます。歌六、彌十郎の土師兵衛、宿禰太郎の鉄板コンビが支え、狂言全体としても極めてレベルの高い公演でありました。
今月はもう一度、この道明寺を観に行く予定です。では。