2018年5月16日(水)午後7時15分開演
リムスキー・コルサコフ作曲 歌劇 皇帝の花嫁 (全4幕)
Conductor Tuagan Sokhiev
Stage Director Julia Pevzner
ボリショイ劇場管弦楽団、合唱団
Grigory Elchin Azizov
Vasily Vyacheslav Pochapsky
Marfa Olga Seliverstova
Ivan Sergeyevich Lykov Serei Radchenko
上海には海外からのオペラ団体は日本と異なりあまり公演がありませんが、例外的にロシアからはオペラ、バレエ団が頻繁に来ます。主としてマリンスキー劇場関連が多いのですが、今回はボリショイ劇場、曲目は何とリムスキー・コルサコフの皇帝の花嫁!しかも、N響の名誉指揮者に就任して欲しいと思っているソヒエフが指揮を執ります。チャイコのオネーギ、スペードの女王、ショスタコの鼻は先にマリンスキーが上演しているので、R.コルサコフとなってのでしょうか。私としては初のリムスキー・コルサコフのオペラを観ることが出来ました。
演出はモスクワで長年上演されているものとのことで、伝統的な舞台装置ですが、パティストリーが鮮やかで、シンメトリックな舞台装置がなかなかのもので、お気軽出稼ぎ引っ越し公演とは異なる国家の威信をかけた本気度が伺えました。
序曲がなかなか魅力的で旋律が美しいし劇性もあり、そこにソヒエフの躍動的な指揮が行われ、初めて聴くのにテンションが上がってきました。そしてボリショイのオケ、昔は崩壊寸前とまで言われましたが、何と上手いこと!弦の艶と透明感、管もロシアの響きが残っているのに機能的でもあり、、、これはソヒエフの功績なのか分かりませんが、嬉しい驚きでした。単独のオケコンサートも是非聞いてみたい。
全4幕ですが、休憩は第2幕の後で1回のみ、前半1時間30分、休憩後1時間という長さなのですので、他のリムスキー・コルサコフのオペラに比べると短いですね。因みにロシアでは結構な頻度で上演されているとのことですが、確かに万人に受ける要素を持っている良くできたオペラだと今日感じました。
音楽は抒情性とロシアならではの憂いのある短調での旋律が交わる中、下記にあるようにまるでベルカントオペラのような筋書、最後には狂乱の場的なシーンもあります(イタオペを研究したのかな)。歌手は主役のバリトン、アズィーゾフが圧倒的、声量は抜群でスタミナも十分、この強引な主役としての存在感を余すところなく表現していた間違いなく一級のバリトンでした。そしてヒロインのセリヴァルストヴァは普段はベルカントのレパートリーが多いようですが、ここでも見事なテクニックと、そして演技も上手い。+美しい舞台姿、これから世界での活躍が期待できる人でしょうね、おそらく30歳前半かと。
仕事帰りに行きましたが、まったく弛緩することなく、あっという間に幕となりました。事前にウィキで予習していたのも良かったのかと思います(感謝で少し寄付しました)。
ロシアオペラの世界はオネーギン、スペードの女王、鼻、マクベス夫人で、ボリスも上演では未だ観たことがない初心者ですが、これからは積極的に観ていきたいと思います。では。
序曲
第1幕「宴会」
グリャズノイの屋敷の客間。
グリャズノイが登場。マルファに一目惚れをし父親であるソバーキンに結婚を申し込んだが、既に婚約者がいることを理由に断られた。それ以来、自分は腑抜けのようになってしまった、と歌う(グリャズノイのレチタティーヴォとアリア「美しい人が忘れられない」)。
続いてマリュータ・スクラートフを先頭にオプリーチニクの面々、マルファの婚約者ルイコフ、グリャズノイが特別に招いた皇帝の侍医ボメーリイが登場、宴会が始まる。まず、外国帰りのルイコフが求められて外国の素晴らしさを歌う。次に一同は皇帝の栄華を讃えて「光栄あれ(ロシア語: Слава на небе солнцу высокому)」と合唱[2]、乾杯し、娘たちが歌い踊る(ホップ摘みの合唱)。
マリュータがリュバーシャの噂をしていると当人が現れる。リュバーシャはグリャズノイに腕ずくでさらわれて来て、今はその愛人となっている。マリュータが歌を所望すると、リュバーシャはア・カペラで民謡風の「愛しい母さん、私を早く着飾らせて」を歌い、一同はその歌声を称える。
やがて散会となるが、グリャズノイはボメーリイを引き止め、良い媚薬はないかと尋ねる。ボメーリイは自分で飲ませ飲む時も目の前にいなければいけないが良いのがあると言い、媚薬を調合することを約束するが、それを盗み聞きしていたリュバーシャは愛を失ったと嘆きグリャズノイを詰る。グリャズノイは冷然とした態度で朝の勤めに出て行ってしまう。残されたリュバーシャは恋敵を必ず見つけ出し、グリャズノイとの仲を引き裂いてやると誓う。
第2幕「媚薬」[編集]
夕方のアレクサンドロフ村の通り。左手にソバーキン、右手にボメーリイの屋敷。中央に修道院とオプリーチニクの一人ロストフスキー公の屋敷。
人々が修道院から出て会話をしていると、オプリーチニキが登場し、貴族の領地を襲撃だ、と唱和してロストフスキー公の屋敷へ入って行く。人々は皇帝のお后選びの話をしたり、ボメーリイから薬を買った若者に魔術師が作った薬など捨ててしまえと忠告したりしているが、やがて立ち去る。
続いて、マルファと家政婦のペトロヴナ、友人のドゥニャーシャが修道院から出て来る。マルファはドゥニャーシャに婚約者ルイコフとの馴れ初めを語って聞かせる(マルファのアリア「今緑の園に見えるのは」)。マルファが語り終えた時、イヴァン4世が馬に乗って通りかかる。マルファを見つめた後、無言のまま立ち去る。二人が皇帝の怖ろしい眼差しについて語っていると、ソバーキンがルイコフを連れて登場、幸せな未来について陽気な四重唱を歌う。ソバーキンはルイコフを夕飯に誘い屋敷に入る。辺りは暗くなりソバーキンの屋敷に明かりが灯る。
リュバーシャが登場、屋敷の窓から中を覗きマルファを見つける。リュバーシャはあんな美人ならグリャズノイが諦めないのも仕方ない、だが私は決して許さないと言い、ボメーリイの屋敷の戸を叩く。現れたボメーリイに対しリュバーシャは服用してもすぐには死なず、しかし、徐々に容貌が醜くなる毒薬を求める。そのような毒薬はあると言うので、代償に宝石を渡そうとするが、ボメーリイはこれを拒み、宝石の代わりに己と関係を結ぶことを要求する。リュバーシャは憤慨して帰ろうとするが、グリャズノイに全てばらすと脅され、更にソバーキン家からマルファたちの楽しそうな笑い声が聞こえてきたため、逆上して毒薬を注文してしまう。ボメーリイが調合のため家に入ると、一人残されたリュバーシャは何ということになったのだろうと独白する(リュバーシャのアリア「主よ罰したまえ」)。
ルイコフがソバーキンの屋敷から出て来るが、ソバーキンが「明日グリャズノイと一緒に来るがいい」とルイコフに語りかけるのを聞き、リュバーシャは毒薬を服用させるチャンスがあることを知る。ボメーリイが毒薬が出来たことを伝えに現れ、リュバーシャはマルファがいる窓に向かい、「私を恨まないで、私も高い代償を支払うのだから」と言ってボメーリイの屋敷に入る。入れ違いに酔っ払ったオプリーチニキがロストフスキー公の屋敷から出て来て勇ましい歌を歌う。
第3幕「介添人」[編集]
ソバーキンの屋敷の広間。
「光栄あれ」を用いた序奏で始まる。ルイコフ、ソバーキン、グリャズノイが座って会話している。ルイコフはマルファと早く結婚させて欲しいと訴えるが、ソバーキンは今は皇帝のお后選びが行われており、マルファもドゥニャーシャも選抜されて12人のお后候補の中に残ってしまった、どうせ選ばれることはないから今しばらく辛抱しろ、と答える。グリャズノイは薬を入れるチャンスだと思い、花婿の介添人になることを申し出る。
やがてドゥニャーシャの母親であるドムナ・イヴァノヴナ・サブーロヴァがやって来て、お后選びに付き添いで行った時の様子を話す。皇帝がドゥニャーシャに話し掛けたと興奮して言うので、次第に皆ドゥニャーシャが后になると思い込んでしまう。ルイコフはようやく結婚できると喜びアリアを歌う。グリャズノイは祝いの杯を準備するが、花嫁の杯にそっと「媚薬」を入れる。
マルファやドゥニャーシャも帰って来て、グリャズノイは祝いの杯をルイコフとマルファに飲ませる。娘たちが祝い歌を歌い、一同唱和するが、突然ペトロヴナが皇帝の使いが来た事を伝える。マリュータ・スクラートフが現れ、マルファが后に選ばれたことを言い渡す。全員驚愕し、ソバーキンは床に倒れ伏す。
第4幕「花嫁」[編集]
イヴァン4世の宮殿の一室。奥にマルファの寝室。
重苦しい序奏で始まる。マルファは后に選ばれた直後に重病となり、娘を思いソバーキンがアリアを歌う。サブーロヴァがマルファはまだ若いからすぐに回復すると慰める。小間使いの娘がマルファが目覚めたことを伝え、サブーロヴァが駆け付けようとすると、今度は暖炉焚きが皇帝から使いが来たと伝える。
グリャズノイが皇帝の使いとして登場、ソバーキンに悪党が后に毒を盛った罪を認めたと報告する。ソバーキンがその悪党は誰か尋ねていると、マルファがドゥニャーシャやサブーロヴァの制止を振り切って奥から現れ、自分は元気で毒など盛られていないと訴える。しかし、グリャズノイが悪党はルイコフで自分が刑を執行したと言うと、マルファは気を失って倒れてしまう。人々は口々にルイコフがそんなことをするわけはないと言い、ソバーキンは拷問に耐えられず偽りを言ってしまったのだろうと嘆息する。
やがてマルファが目覚めるが、もはや正気を失っている。グリャズノイをルイコフと思い込み、自分がお后になった夢を見たと語りかける。良心の呵責に耐え切れなくなったグリャズノイは、マリュータら集まった廷臣の前で自分がマルファに媚薬を盛った事を白状する。人々が驚き非難する中、狂ったマルファはなおも幻のルイコフに語りかけ続ける(マルファのアリア「イヴァン・セルゲーヴィチ、庭へ行きましょう」)。
グリャズノイはマルファが狂ったのは、ボメーリイの媚薬のせいだと勘違いし、罰を受ける前にボメーリイを殺すと叫ぶが、そこへリュバーシャが現れ、自分が媚薬を毒薬にすり替えたのだと告白する。逆上したグリャズノイはリュバーシャを剣で刺し、リュバーシャは「ありがとう」と言って息絶える。マリュータらに連行される前に、グリャズノイはマルファに許しを請うが、マルファは彼をルイコフと思い込んだまま「明日も来てね、ヴァーニャ[3]」と答える。人々の「神よ」の声で幕。

