歌舞伎座
松竹創業120周年

六月大歌舞伎
平成27年6月14日(日)、20日(土)

昼の部
一、天保遊俠録(てんぽうゆうきょうろく)

小吉 橋之助
芸者八重次 芝 雀
芸者茶良吉 児太郎
松坂庄之助 国 生
唐津藤兵衛 松之助
井上角兵衛 團 蔵
大久保上野介 友右衛門
阿茶の局 魁 春

二、通し狂言 新薄雪物語(しんうすゆきものがたり)

花見
詮議

〈花見〉           
奴妻平 菊五郎
秋月大膳 仁左衛門
園部左衛門 錦之助
薄雪姫 梅 枝
花山艶之丞 由次郎
渋川藤馬 松之助
清水寺住職 錦 吾
来国行 家 橘
来国俊 橋之助
腰元籬 時 蔵
団九郎 吉右衛門

〈詮議〉           
幸崎伊賀守 幸四郎
園部兵衛 仁左衛門
松ヶ枝 芝 雀
園部左衛門 錦之助
薄雪姫 児太郎
茶道珍才 隼 人
役僧雲念 桂 三
秋月大学 彦三郎
葛城民部 菊五郎

夜の部

一、通し狂言 新薄雪物語(しんうすゆきものがたり)

広間
合腹
正宗内

〈広間・合腹〉        
園部兵衛 仁左衛門
梅の方 魁 春
刎川兵蔵 又五郎
奴袖平 権十郎
腰元呉羽 高麗蔵
薄雪姫 米 吉
園部左衛門 錦之助
松ヶ枝 芝 雀
幸崎伊賀守 幸四郎

〈正宗内〉          
団九郎 吉右衛門
おれん 芝 雀
腰元呉羽 高麗蔵
五人組伊太郎 歌 昇
同 仁助 種之助
同 与吉 隼 人
薄雪姫 米 吉
渋川藤馬 桂 三
下男吉介実は来国俊 橋之助
五郎兵衛正宗 歌 六

二、夕顔棚(ゆうがおだな)

婆 菊五郎
里の女 梅 枝
里の男 巳之助
爺 左團次

6月は大顔合わせによる新薄雪物語の通し上演。

先ずは天保遊侠録から。
これは昨年の大阪松竹座でも観た橋之助のあたり役。
前回と同様、やや国生の演技がクサ過ぎる(新喜劇みたい)のは
こちらが心持恥ずかしくなりますが、
その他の脇が手練れで橋之助の演技が光っていました。
子役の台詞が真山青果の芝居ですが、良く頑張っていた!!

新薄雪は鮮やかな花見は最後の殺陣が見どころ。
菊五郎の奴はさすがに年齢には勝てないというところですが(笑)。
仁左衛門の大膳は流石の存在感、恰好良い~。
最後の正宗内がなければ、団九郎がなぜこのクラスの役者が思うところですが、
今回は午後の部から先に観たので、成程、吉右衛門がこの役なのかと合点した次第。

また午後の広間・合腹が見応えあり。
仁左衛門と幸四郎、そして魁春の3人笑い。
影腹を召していながら、子を想う気持ち、助けたい、通じ合ったとの
気持ちから出た激痛の中での気迫ある笑い、拍手。

正宗内は滅多に上演されませんが、これがあると物語が繋がり、
全ての人にドラマがあるのが良く分かります。
小悪人団九郎の最後、え~、と思うところもなきにしもあらずですが、
妙に納得させられた吉右衛門でした。

最後はほんわかした夕顔棚。
菊五郎のおばあさんが風呂上りに垂れ下がった乳下の拭くところから笑いをとっていました。
高齢化社会を意識して演出したそうですが、良い気分になったのは確か。

ほっこりして帰宅しました。
では。


<みどころ>

昼の部

一、天保遊俠録(てんぽうゆうきょうろく)

◆息子の将来を思う父の一途な心
 江戸の天保年間。旗本の勝小吉は、若い頃からの放蕩生活のため、今も無役の身です。今日は秀才と評判の高い息子の麟太郎のため、御役につこうと向島の料理茶屋で上役の大久保上野介を招いての宴席の準備をしています。そこへ芸者の八重次が現れますが、座敷に出るのを嫌がります。実は以前、小吉と八重次は深い仲でしたが、駆け落ちの末、捨てられた八重次は恨みを持っていたのです。息子のためにと懇願され、八重次は大久保をはじめ横柄な役人たちをもてなしますが…。
 幕末前夜の江戸の世相を活き活きと描いた真山青果の作品をお楽しみください。

二、通し狂言 新薄雪物語(しんうすゆきものがたり)



◆時代物の大作を昼夜にわたり一挙上演
 『新薄雪物語』は、時代物の名作として知られる人気狂言です。陰謀に巻き込まれた若い男女を救うために、命懸けで立ち向かう父親たちの姿や、刀鍛冶の秘伝をめぐる父子の葛藤など、各場ともに重厚感あふれる内容で、歌舞伎の様々な醍醐味が凝縮された舞台です。今回は、昼夜にわたる通し上演で、昼の部は「花見」「詮議」、夜の部は「広間・合腹(あいばら)」「正宗内」を上演します。

〈花見〉
◇陰謀の序章となる春爛漫の清水寺
 満開の桜が咲き誇る清水寺。幸崎伊賀守の息女薄雪姫と、園部兵衛の子息左衛門は、薄雪姫に仕える腰元の籬(まがき)と左衛門の家来である奴妻平のとりなしで恋仲となり、後日の再会を約束して別れます。一方、刀鍛冶の団九郎が現れ、左衛門が奉納した刀に謀反の疑いとなるやすり目を入れます。これを、同じく刀鍛冶の来国行が見咎めますが、秋月大膳の手裏剣によって殺されてしまいます。実はこの企みは、大膳が幸崎・園部両家を失脚させようとする陰謀だったのです。そこへ、大膳方の奴たちに取り囲まれた妻平が現れ、大立廻りで蹴散らします。

〈詮議〉
◇裁定に翻弄される若い男女の運命
 謀反の疑いが掛けられてしまった左衛門と薄雪姫は幸崎邸で忍び会います。その詮議のため、主の幸崎伊賀守が六波羅探題の執権葛城民部と大膳の弟秋月大学、そして園部兵衛を伴って帰ってきます。あらぬ疑いに左衛門と薄雪姫は困惑しますが、無実を証明する手立てがなく窮地に立たされます。しかし民部は、すべては大膳の陰謀と悟り、左衛門を幸崎家へ、薄雪姫を園部家へ預けて詮議したいというそれぞれの父親たちの申し出を受け入れて、その場を後にします。

夜の部

一、通し狂言 新薄雪物語(しんうすゆきものがたり)



〈広間・合腹〉
◇我が子のために苦悩する二人の父の姿
 薄雪姫を預かる園部家では、園部兵衛の奥方梅の方がその世話をしています。兵衛は、今回の一件を大膳の陰謀と察していますが、証拠がなく、薄雪姫が六波羅に捕らえられ責め殺されてはと案じ、館から落ち延びさせます。そこへ幸崎伊賀守からの使者である刎川(はねかわ)兵蔵が訪ねて来て、左衛門が謀反の件をすべて白状したので、伊賀守がその首を打ったと語り、同罪の薄雪姫の首も打つようにと言上します。やがて伊賀守が首桶を手にして現れ、まもなく兵衛も首桶を携えて現れます。そして二人が首桶を開けると中にあったのは…。

〈正宗内〉
◇刀鍛冶の秘伝をめぐる父子の葛藤
 大和国にある刀鍛冶の五郎兵衛正宗の家。来国行の子国俊は、父から勘当された後、刀鍛冶の修業のため、吉介と名を変えて奉公しています。吉介は正宗の娘のおれんと恋仲ですが、おれんの兄である団九郎は、秋月大膳の悪事に加担する身です。団九郎は父の正宗から刀鍛冶の秘伝を盗み出そうとしていますが、吉介を国俊と見抜いていた正宗は、師匠の孫である国俊に風呂の湯加減から刀の秘伝を教えます。一方、刀鍛冶の細工場では団九郎が湯加減の様子を探ろうと湯の中に手を入れていて…。

二、夕顔棚(ゆうがおだな)



◆老夫婦の情愛があふれる舞踊
 とある田舎の百姓家。旧盆の夕方、軒端の棚には夕顔が花を咲かせています。風呂上がりの爺は夕涼みをしながら酒を飲んでいました。婆も風呂から上がって出てくると二人は酒を酌み交わします。酒が進むうちに、遠くから聞こえてくるのは盆踊りの声。昔を思い出した二人は仲良く踊り始めます。
 老夫婦の仲睦まじい姿を描いた舞踊をお楽しみください。