《響の森》vol.36 ドイツ・ロマンの森~ワーグナー&ブラームス



日時:2015年6月3日(水)19:00開演(18:20開場)
場所:東京文化会館大ホール

曲目

ワーグナー:歌劇『タンホイザー』序曲
ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』より「前奏曲と愛の死」
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 op.98

飯守泰次郎
東京都交響楽団

6月14日(日)14:00開演 会場:サントリーホール
#542 定期演奏会
■プログラム
J.S.バッハ作曲 オーボエ協奏曲 BWV1053 *
R.シュトラウス作曲 メタモルフォーゼン
ベートーヴェン作曲 交響曲第3番変ホ長調『英雄』op.55

■出演者
指揮:飯守泰次郎
オーボエ:古部賢一(新日本フィル首席オーボエ奏者)*
新日本フィルハーモニー交響楽団

今回も2つのコンサートをまとめて。
最近コンサートが多い飯守御大のコンサートです。
結果的には二つともオケの反応が素晴らしく、
彼のコンサートでも上位にランクできるものでした。

先ずは都響と響きの森シリーズで東京文化会館。
1曲目のタンホイザーは間に合わず。
以前都響定期で聴いたタンホイザーが良かっただけに残念。
一方、前回は潤いがなかったトリスタンの前奏曲と愛の死、
これが最美の演奏で大感激。
あの響かない文化会館で都響の弦がビロードのように美しく響くこと。
このホールで冒頭のチェロを神経質に弾くと全然×ですが、
そこは慣れている指揮者・オケだけあって確りと弓を引いて鳴らします。
それにしてもチェロはこの日絶好調。
陶酔の20分でした。

後半は難曲ブラ4、第1楽章はゴツゴツしながらも
内燃した音楽でかなり盛り上がり、コーダでの昂揚感はなかなかのもの。
この第1楽章だけであれば、名演と言えたでしょう。
しかし、第2楽章がトリスタンと異なりやや響きが・・・・。
第3楽章は悪くはないですががやや平凡。
第4楽章のパッサカリアは構成が上手く、オケのバランスも〇でしたが、
このスタイルで演奏するのであれば、もう少し溜めがあって良かったかも。
しかし、トリスタンとブラ4第1楽章だけでも高水準のコンサートでした。

もう一方が新日フィルのサントリー定期。
最初のバッハのオーボエコンチェルトは何か懐かしいバッハ。
古部氏のオーボエも高水準でしたが、
今日のプログラムでなぜこの曲?という感じもしました。

メタモルフォーゼンと英雄。
これはメタモルフォーゼンの最終部でコントラバスが
英雄の第2楽章冒頭の葬送のテーマを弾くからですね。
以外のこの組み合わせのコンサートはないかも。

メタモルフォーゼン、シュトラウスの不遇の晩年に英知を結晶した至高の音楽。
23本の弦パートで構成されますが、高度な懐古趣味、諦念、過去の栄光の回顧、
色々考えさせ、いや感じられます。

ティーレマン・ドレスデン、ノット・東響、そして飯守・新日フィルと
最近3つの異なるメタモルフォーゼンを聴きましたが、
圧巻はノット・東響でありました。
飯守・新日本フィルは比較的ロマンティックな演奏で
これだけを聴くと充実感もありましたが、直前にノット・東響の
素晴らしい響きと多層感のある音楽を聴いていたいので些か部が悪かったか。

それよりも圧巻は英雄。
冒頭から音の密度が濃いこと!!
ヒェンヘンとか飯守が大編成で振ると、新日フィルからこんな厚い音が出るのですね。
古武士が長い刀を振るような指揮振りで、これがこの曲とピッタリ。
飯森のベートーヴェンでは英雄が一番素晴らしいですね。
この日の演奏も素晴らしいですが、曲との相性が明らかに良い。
次は意外にも第8番だと思っています。

飯守のコンサートでは、シティフィルとのブル7が最高でしたが、
この英雄と都響とのトリスタンも同レベルでありました。

いやいや、今このスタイルで指揮する人がいないので、
飯守氏、ますます存在感を増すのでは。

では。