解説 歌舞伎のみかた 澤 村 宗 之 助                                   
              

近松門左衛門=作
傾城反魂香 (けいせいはんごんこう)一幕
       国立劇場美術係=美術

  土佐将監閑居の場

(出演)
 中 村 梅 玉
 中 村 東 蔵
 中 村 歌女之丞
中 村 松 江
中 村 魁 春 
         ほか


名作傾城反魂香、素朴で実直な又平と世話女房おとくの姿が沁みる作品です。
梅玉が何と初役ということですが、これが良い。
やりすぎると臭みが出てしまいますが、そこは梅玉、
足し過ぎず、引き過ぎずで大変すばらしい。
昔は面白みがない、と思っていた梅玉に最近関心が高まってきています。

平成8年生まれの梅玉の部屋子の梅丸修理ノ助を爽やかに演じていました。

おとくの魁春、この人の饒舌な役は初めてじゃないかしらむ?
流石は兄弟、息の合った芸を見せて頂きました。

この日は1列目だったのですが、疲れていたのか少しウトウトとした場面があったのですが、
目が覚めた瞬間、梅玉さんと目が合ったような気がして、
(自意識過剰ですが)かなり恥ずかしくなって血圧が上がりました・・・(失礼)。

前半の解説は、澤村宗之介、あれ?本番には出演していないのですね。
であれば、梅丸君が登場すれば良かったのに。
とは言え、流石は大人の解説、若手が続いた解説と比べて
説明が流れるようで、自然体で大変分かり易いものでした。

今日はこの後、有楽町線で池袋へ。
電化製品(raycop)を購入、夕食は金沢濃厚味噌ラーメンというものを頂きました。
では。

【あらすじ】
大和絵の一派である土佐派の総帥土佐将監光信の家に近郷の百姓たちが押し寄せた。
弟子の修理之助が何の騒ぎかと尋ねると、薮の中に虎が逃げ込んだと言うではないか。
ばかな、日本に虎など、と修理之助はあざ笑うが、その騒ぎに
将監と北の方が奥からあらわれて、逃げたと言うなら探させよ、と言う。
すると、百姓たちの言う通り、薮の中に虎がいた。それを見た将監は、
それが狩野元信の描いた虎に魂が入って抜け出たものだと見破った。
(つまり絵、ってことね。実際、絵なんだけどさー。笑)
「自分にその虎を消させてほしい」と修理之助は師に願い出て、見事に消す。
将監はその力をほめ、その場で土佐の苗字を名乗ることを許した。
日も暮れはじめた頃、修理之助の兄弟子にあたる浮世又平が
女房のおとくといっしょにやってきた。又平は生まれついての吃りで
思うように話せないため、おとくが夫に代わり次々とあいさつの言葉を述べたてる。
北の方が修理之助に苗字が許されたと知らせると、又平はぜひ自分にも、と
不自由な言葉に身振りもまじえて、おとくともども哀願する。
しかし、将監に冷たくはねつけられ、又平夫婦は悲嘆の涙にくれる。
と、そこへ、狩野元信の弟子の雅楽之助が、元信の姫君の危急を知らせにくる。
又平は姫君救出の討手にと志願するが、将監は取りすがる又平を振り払い、
画の道で功をなせ、ときつく叱りつけた(そりゃそーだろー、やっぱし)。
望みは切れてしまった、と又平夫婦は不幸を嘆き、死ぬ覚悟を決める(えー?!)。
おとくは「この世のなごりに」と手水鉢に自画像を描くことをすすめ、
又平は心を込めて最後の絵を描いた。そして描き終えた又平が手水鉢から離れ、
おとくが「別れの水盃を」と水を汲もうとしてビックリ!
なんと手水鉢の表と裏に絵があるではないか。又平の絵が石の裏側まで抜けたのだ。
「かかぁ、抜けた!」「はいっ!」
ふたりは腰が抜けるほど驚き、また喜んだ(ここは思わず拍手が来るとこでする~)。
将監が奥から出てきて、手水鉢の絵を見て賞賛。土佐の苗字が許されることになった。
また、姫君救出の役も改めて命じ、新しい着物に大小の刀も渡してくれた。
いそいそと夫のしたくを手伝うおとく。又平は見違えるように立派な姿になって、
おとくの打つ鼓にあわせ、旅立ちの祝いの舞いを舞う。
又平の言葉もするするとよどみなく出てくるではないか!
いよいよ又平の出立。おとくも喜びの涙にくれ、夫を見送るのであった。