解説 歌舞伎のみかた  中村虎之介
                                 
森鷗外=作
宇野信夫=作・演出
ぢいさんばあさん  三幕
高根宏浩=美術
川瀬白秋=箏曲    
       
  第一幕  江戸番町美濃部伊織の屋敷
  第二幕  京都鴨川口に近い料亭
  第三幕  江戸番町美濃部伊織の屋敷

(出演)
  中 村 扇  雀
坂 東 亀三郎 
  中 村 国  生
  中 村 虎之介
  中 村 児太郎  
  中 村 橋之助  ほか


実は15日(土)上演分を購入したと想い込み、
国立劇場のチケットセンターで発券し入口で差し出したところ、
「これは22日分ですよ」、と。
何とも恥ずかしいことで。

折角来たので席は良くないですが、
1枚購入して鑑賞しました。

良く考えれば、この時間帯はワールドカップで
日本がコートジボアールと対戦していた時間でもありました。
そうなんです、全く興味がないんです(笑)。

最初の鑑賞教室では虎之助君がテンポ良く解説を行っていました。
関西歌舞伎は千之助、虎之助と松嶋屋、成駒屋共に有望な跡取りがいますので
これからが楽しみです。
解説の中で、芝のぶちゃんが出演する場面がありました。
もっとこの人が全面に出る芝居を観たいものです。

本編のぢいさんばあさん。
森鴎外の原稿用紙16枚ほどの短編小説を宇野信夫が歌舞伎化したもの。
見栄をきる場面がほとんど(全然?)ないので、
歌舞伎っぽさは全面に出ませんが、じんわり響いてくる作品です。
平日は高校生が中心に観ているようですが、
10代半ばの人たちがどんな風に感じるのか・・・。

橋ノ助の伊織、開放的で正直な役どころを嫌味なく演じていました。
2幕で怒りを爆発させるまでの演技もなかなか。
その2幕で、京の月、江戸の桜と言って、るんからの手紙に
挟まれた自宅庭の桜の花びらを扇子で舞わせる場面は美しいものでした。

るんの扇雀、冒頭はやや顔の大きさが目立ちました(ははは)が、
やんわりとしたるんの凛としつつもどこかホワっとした雰因気を良く出していました。

亀三郎、嫌われ役の下鴨。
声が通りますし、いやーな、でもそう行動せざるを得ない人間の
複雑な気持ちも確り演じていて感心しました。

22日も引き続き観に行きました。

では。


【あらすじ】
美濃部伊織と愛妻のるんは家中でも評判のおしどり夫婦だった。
ところが、るんの弟が友達と果たし合いになり手傷を負ってしまったために、
義弟に代わって伊織が京都に単身赴任することになった。
京都に赴任して三ヶ月。伊織は、どうしても欲しい刀があって、
好かない人物ではあったが下鴨という男から金を借り、買い求めた。
友人達を料亭に招いて刀披露の席を設けたところに泥酔した下鴨がやってきて、
なぜ俺を招かない、と伊織を罵倒し、あげくに足蹴にする。
じっと耐えていたが、ひょんなはずみで下鴨を切りつけてしまった。
ただ呆然と立ち尽くす伊織・・・。この事件により、伊織は越前にお預けの身。
るんは筑前の黒田家の奥女中として仕えることになり、夫婦は離れ離れに。
それから37年後のこと。伊織が帰ってくることになった。
懐かしい我が家で愛妻のるんと再会する、その約束の時間が待ちきれず、
勝手に庭にまわる伊織。一方、るんも同じ思いで早くやってきた。
しかし、昔のままの若い妻と夫の面影しかないから、お互いに気づかない。
が、伊織の昔と変わらぬ癖に「旦那さまか」「るんか」
ふたりは互いを認めて、そばに寄って見つめあう。
伊織71歳、るん66歳。ともに白髪になってしまったが、
37年の歳月を乗り越え、今日から新しい生活をともにはじめようと誓う。