2014年3月21日(金・祝)14時開演

コルンコルド作曲
歌劇 死の都

指揮:ヤロスラフ・キズリンク
演出:カスパー・ホルテン
美術:エス・デヴリン
衣装:カトリーナ・リンゼイ
照明:ヴォルフガング・ゲッベル
再演演出:アンナ・ケロ
合唱指揮:三澤洋史

パウル:トルステン・ケルル
マリエッタ/マリーの声:ミーガン・ミラー
フランク/フリッツ:アントン・ケレミチェフ
ブリギッタ:山下牧子
ユリエッテ:平井香織
リュシエンヌ:小野美咲
ガストン(声)/ヴィクトリン:小原啓楼
アルバート伯爵:糸賀修平
マリー(黙役):エマ・ハワード
ガストン(ダンサー)白鬚真二

今シーズンの新国立劇場のメインとも言える死の都。
フィンランド国立劇場からのレンタルですが、
今年は琵琶湖ホールでもこのオペラが上演されましたが、
昔はラインスドルフの録音しかまともに聴けない時期がありましたが、
欧州中心に上演が続いているようですね。

シュトラウス、プッチーニ、ワーグナー、ミュージカルの音楽が
テンコ盛り状態の音楽ですが、それが単なる模倣ではなく
コルンコルドオリジナルの音楽として聴き応え十分なものですね。
ウィーンで時代の寵児になっていたようですが、
ユダヤ人であり、その後アメリカにわたり映画音楽などでも名声を得ました。

亡き妻と瓜二つの女優との間で揺れる男の妄想というか、
愛の飽くなき希求というか。
音の洪水でその意味ではシュトラウスの要素が一番強いのかもしれません。
第1幕が一番印象が強く、そう言えば題材もシュトラウスっぽいですね。
影のない女などに通じているのではないでしょうか?

とは言いつつ、主役級3役にそれぞれメロディアスとも言えるアリアもあり
エンターテイメントとしてのオペラの面白さも十分備えています。
只、初めて聴く人にとっては、やや長く感じるところもあるかもしれません。
音楽的には展開の面白さという意味で第2幕が一番気に入りました。

舞台装置は添付ピクチャーの通りですが、
デヴリンの才能というか、大変印象深いものです。
この人はガガなどポッポカルチャーの舞台も担当しているそうですが、
視覚的にも細かい装飾にも凝っていますね。
ホールデンの原案演出もセンスが良いですね。

歌手はケルルの熱唱を称賛すべきでしょう。
ワーグナーを得意にしている歌手だけに押し出しも十分、
調子の良くない日もあったようですが、
今日の歌唱はその名声に違わぬもので聴き応えがありました。
決して大声ではないのですが、芯がある声なので確りと響きます。

ミラーは新国ではタンホイザーに出演していましたが、
その時のエリザベートと比べると断然今回の歌唱の方が素晴らしい。
繊細な歌唱の人ではないですが、非常に体力も必要なこの役どころを
極めて高い水準で安定感ある歌唱を披露しました。
西部の娘なども合うでしょうし、演技が上手く大人の女を演じるのが特異の
ようなので、マルシャリンも良いのでしょうね。

キズリンクの指揮は誠実で音楽を良くまとめていました。
これだけ音が詰まっているオペラですので、
下手に鳴らし過ぎるとバランスが悪くなりますが、
そのあたりのコントロールは立派なもの。
また別のオペラを聴きたいものです。
東京交響楽団、定期は挟みながら忙しいスケジュールのようですが、
悪くはないものの、やや音の厚みが薄く金管にはもう少し頑張って貰わないと。
このオケは指揮者によって出来栄えが大きく変わりますが、
その意味では悪くはなかった、という印象でした。
立派なオケはどんな指揮者が来ても一定以上のレベルの演奏ができるものですが、
都響などはそれができるようになってきましたが、
東響もスダーン、秋山、ノット以外の時でも
実力を出し切るようになって貰いたいものです。

死の都、なかなか観れないオペラで、
今後、観る機会があるのかわかりませんが、
上演する価値のある聴き応えのあるオペラでありました。

では。