日時:2011年1月22日(土)開演15:00
会場:彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
PIANO エフゲニー・スピドン
曲目:
スカルラッティ:ソナタ ヘ短調 K466
スカルラッティ:ソナタ ト長調 K455
スカルラッティ:ソナタ ロ短調 K27
ショスタコーヴィチ: 前奏曲第2番 イ短調 作品34-2
ショスタコーヴィチ:前奏曲第6番 ロ短調 作品34-6
ショスタコーヴィチ:前奏曲第17番 変イ長調 作品34-17
ショスタコーヴィチ:前奏曲第24番 ニ短調 作品34-24
ショパン:バラード第3番 変イ長調 作品47
ショパン:バラード第4番 ヘ短調 作品52
リスト:超絶技巧練習曲第11番 「夕べの調べ」
ラヴェル:夜のガスパール

<アンコール>
ラフマニノフ:前奏曲 Op.23-5 ト短調
ラフマニノフ/スドビン編曲 「春の洪水」

「彩の国さいたま芸術劇場」のピアノ・エトワール・シリーズで
1980年生まれのピアニスト、スドビンのコンサートに行ってきました。

このコンサート会場は初めて訪れましたが、
埼京線の与野本町(大宮駅の2つ前、池袋から25分前後)から徒歩7分程で
劇場や大小ホール、映像シアターなど併設されており充実した施設です。
周囲は本当に住宅街で突如施設があるという感じですね。

その中で音楽ホールは800人程のキャパで落ち着いた印象です。
音はやや直線的に響く傾向があるようですが、
これはスビドンの演奏スタイルと関係した印象かもしれません。

このコンサートに行くことにしたのは
プログラムに惹かれたことと、スビドンのスカルラッティを収録した
CDの評判が高かったことを記憶していたからです。

お得意のスカルラッティ3曲とショスタコ前奏曲4曲を並べて、
その後に「水の精」という詩にインスピレーションを受けたショパンの
バラード3番にラヴェルの夜のガスパールの水の精(オンディーヌ)を、
リストの夕べの調べで響く鐘の音は同じく夜のガスパールの絞首台で
響く鐘の音にリンクさせているのでしょう。
なかなかのセンスですね。

さて演奏ですが、スカルラッティは敏捷な演奏で聴いていた気持ちが良いものでした。
これは評判になるのも納得でした。
続いてのショスタコ前奏曲4曲はその対比で非常に面白い曲ですよね。
皮肉な曲想を抜群のテクニックでバリバリ弾いていました。
これはこれで良しでしょう。

ショパンのバラード2曲の演奏も同様の傾向で
情感、ショパンの演奏ではある種必要な 間 は一切ありませんでした。
少なくとも私の趣味ではない演奏でした。
バラード3番で一旦曲想が切れるところで聴衆の一人が拍手したのは
聴いているこちらも何だか冷や汗をかいてしまいました。
その後、冷静に弾き続けたスビドンは立派。
いるんですよね、拍手を早くしたがる人が・・・。
音楽を聴きに来ているのか、聴きに来ている自分に酔っているのか、
拍手そのものが目的なのか・・・良く判りません。

後半のリストは静かな曲想で始まり超絶技巧炸裂となる曲です。
リストについてはソナタとエステ荘の噴水ぐらいしか
ピアノ曲では魅力を感じなかったのですが、
この曲は素敵だなと素直に思えました。
そう言えば超絶技巧練習曲はCDも持っていないですね~。
どなたか推薦盤があれば教えて下さい!
ここでの演奏はスタイルと曲がマッチしていて
前半の小曲7曲と並んで魅力的な演奏となりました。

さてメインの夜のガスパールですが、正直言えば残念な演奏でした。
テクニックは十分ある人なのでバリバリ弾いてくれるのですが、
このラヴェルの作品でも一番デモーニッシュな夜のガスパールの演奏は
単に弾くだけではダメなのです!!!
アプローチは色々あるでしょう。
白痴的な美しさを目指す方法、暗い心の闇を抉り出すような方法、
3曲の性格の違いを際立たせる方法など。
今日の演奏は単線的な演奏と言わざるを得ないでしょう。
通常聴き取りにくいパッセージを丁寧に聴かせてくれたことは良かったのですが・・・。

スビドンはタッチがそれ程美しい訳ではなく、
音量変化も3種類程しかなく、それが機械的に聴こえてしまうところが弱点でしょう。
一方、音の粒が際立ち意欲は良く伝わる人なので
コンチェルトの演奏は効果的なのではと思いました。
間違いなく才能がある人だし、若いのでこれからの変化を期待しましょう。

アンコールはラフマニノフ2曲をこれまたバリバリ弾いてくれました。
周囲は受けていたのですが、私には少し・・・曲芸ではないのですから。
彼はまた数年後に聴いてみてどのような変化が生まれたかフォローします。