• 2010/10/01 (金)
  • 午後7時開演 [午後6時30分開場]
  • 東京オペラシティ コンサートホール
  • 指揮:鈴木雅明
  • 東京シティフィルハーモニー管弦楽団

    モーツァルト
    歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲
    交響曲 第38番 ニ長調 K.504 「プラハ」
    マーラー
    交響曲 第1番 ニ長調 「巨人」(マーラー生誕150年)

  • BCJでの活動でバッハ演奏の大家として名声を揺るぎないものとしている

    鈴木がモダンオケに客演で何とマーラーを採り上げました。


    以前、メンデルスゾーン編曲のマタイ受難曲を読響と演奏し

    そのそのコンサートに行ったが非常に感動した記憶が鮮明にあったのですが、

    大きなホールではあのような編曲が相当効果があることも分かりました。

    単なる原理主義ではなく本質を見失わなければこのようなやり方もありだと感じたコンサートでした。


    近年はシアトル響などにも客演しているようですが、

    今日はシティフィルとの演奏。

    平日夜に職場から初台に行くのは結構苦しく

    オペラシティで定期公演を行うシティフィルの定期公演は数える程しか行けていません。

    客入りは9割以上埋まっていたのではないでしょうか?

    この鈴木の巨人ということで相当注目が集まったのでしょう。

    外国人の観客が多くいたのも珍しかったですね。


    さて演奏ですが、まずはドン・ジョヴァンニの序曲から。

    テンポは速めですが、拙速な印象はまったくなし。

    基本はノンヴィブラートですが、ある程度の自由は許していたようです。

    各フレーズの音の出だしが明瞭で大変メリハリの利いた演奏です。

    フレーズの歌わせ方は古楽器で普段仕事をしている人の特徴で

    ヴィブラートを使わない代わりに

    フレーズの中で音量を変化させて

    鼓動のような躍動感を伝える手法が使われていました。

    次のプラハも同様のスタンスでの演奏でした。

    上記の歌わせ方が更に上手く

    並みの演奏では退屈極まりなくなってしまうプラハの第2楽章を魅力的にしてくれました。


    休憩を挟んでの巨人ですが、

    正直言えば私は巨人は苦手なのです。

    第1楽章は相当上手いオケでないと聴いていられないし

    第3楽章は退屈だし、第4楽章だけ妙に派手で煩い演奏が多いしと。

    ところが今日の巨人は本当に素晴らしい演奏でした。


    シティフィルの技量に限界があるとは言え

    第1楽章も大健闘、クラリネットとオーボエも素晴らしく良い意味で大変驚きました。

    トランペットのソロもそうですが、クラリネット、オーボエの3人は全曲に渡って

    音色、テクニック共に素晴らしかったですね。

    第2楽章はあの3拍子のリズムの刻み方が鮮烈で躍動感に溢れていました。

    また、中間部のあのウィーン的な退廃的雰因気のあるメロディーを

    何とも色気のある表情で聞かせてくれました。

    失礼ながらシティフィルからこんな音色が出るなんて!!

    第3楽章冒頭のコントラバスの合奏は少しハラハラしましたが、

    全体としてはバランスのとれた演奏でした。

    そして第4楽章、鈴木のパッションが溢れオケがそれに呼応し

    テンションの高い、しかし決して煩くはならない音楽的な表現です。

    ここでも各声部が大音量の中でも見事に聞き取ることができました。

    最後の音が鳴り終わると会場からは盛大な拍手。

    これは当然でしょうね。

    (途中で汚い声でのブラボーの掛け声にはゲンナリしましたが・・・・)


    今日は鈴木・シティフィル双方にとって大成功と言えるでしょう。

    恐らくシティフィルは次の客演も交渉するのではないでしょうか?

    恐いけど鈴木の演奏方法でブル9なんかを聴いてみたいな、なんて想像しました。