柳澤桂子 博士の「二重らせんの私」を読了。
とてもとても優秀な方。
彼女の代のコロンビア大は、60人の大学院志願者中、入学が16人、Ph.D取得まで漕ぎ着けたのが4人のみ。
その4人の中で、柳澤さんが最短の3年でPh.D取得。
しかも、旦那さんを支えたり妊娠したりしながらというハンデもありながら。
ガッツがあります。
そして、かなりシンドイであろう大学院生活を、「生命の神秘に携わる」という喜びを軸に爽やかに記している点から、柳澤先生が心底好きだったことがうかがえます。
彼女の科学への愛がヒシヒシと伝わってきて。
私も博士課程まで進みたくなったよ、少し。
あと、彼女の人生は映画にしたいくらいドラマティック。濃密。
かなり運も良い。(運も実力のうちだが。serendipity)
常に謙虚な姿勢で語られており。
研究で大成するためには「忍耐強さ」「感性の鋭さ」「謙虚さ」が必要なんだな、と思ったり。
この本に書かれてる彼女の考えは、はっきりとした「経験」によって裏付けられてる。
だから、「先人の言葉」として、重みがある。
p125 「教育とは全人格でなされるものと強く感じた」
p.156 「過去を良く知ることによってはじめて未来が見えてくる [こともわかった]。生命科学の隆盛を恬として見るのではなく、歴史の流れの中においてみることの重要生も理解できた」
p.156 「『人間というものは、ものごとが発見された順序に沿って説明されたときに、いちばんよく理解できるものだよ』というネギさんの言葉」
p.198 「人生のうちのいつでもいい、あれだけ仕事に情熱を燃やすことができる時をもてたということにこそ感謝すべきであって、その時が終わったことを嘆いてはならない。そうおもってもつらかった。」
→彼女みたいに、何か一つのことに夢中になって頑張れるのは、1つの才能であり、幸福なんだろうな。
私も、今の研究に没頭してみるべきなんだろうな、きっと。
p.200 「科学の発達が宗教を消滅させるのではなく、科学的な基礎の上にたって、宗教が理解される時がくるだろう」
p.208 「私は敗北した科学者として、科学に苦しめられたものとして、それでもなお科学を愛してやまない者として、科学と人間存在について多くの方々に真剣に考えていただきたいと強く願うものである。」
→この一文に出会えたことが、この本の最大の収穫だと思う。柳澤 博士が病床で「サイエンスライター」として筆を執り続ける理由、彼女の人生。これがこの1文に凝縮している。
将来のことを考える上で、彼女の他の本も読んでみようかな。
Standing on the shoulder of giants.
このことを、1人の女性科学者の人生を軸に強く感じさせてくれる良書でした。