4年ぶりの出場となる世界最大規模のトレイルイベント、

UTMB』のうちの55kmのレース『OCC』を走り終え、

僕の2021シーズンが終わりました。





シーズンを終えるに相応しいレース内容であったかというと、

僕の過去の実績や下馬評と比較すると悪い意味で期待を裏切る内容だったかと思います。

それでも今回の総合23位という結果は、2017年に出場した26位の時と比べ、心穏やかに受け止めることが出来ています。

悔しくないといえば嘘になりますし、レースの最中も、

「多くの方に支えてもらってるのになんでこんな順位を走ってるのだろう」と、

期待に応えられない自分が情けなくて泣きそうにもなりました。

しかし、そういった支えや、このCOVID-19のパンデミックのなかでこんな大規模なイベントを開催してくれた運営などに感謝しているうちに、レースの間のほとんどの時間を楽しく走ることができました。

(精神的にしんどかったのはTrientからの登りで失速したときと40kmあたりで上のことを考えた2回)


今シーズン、特に5月以降は本当に精神的に難しい日々でした。

3月末のOSJ新城ダブルはリタイアしましたが、前日の平尾富士や上田VK&SKYは調子の良さを感じていました。

特に上田VKでは宮原さんの大会記録を大きく更新することができ、これは世界選手権のVKで大きな自信になりました。

急遽出場できなくなった粟ヶ岳スカイレースの裏で行った一人合宿も充実したものでしたし、5月半ばまではすべてが順調にいっていました。

ところが5月下旬から気力が沸かない、練習も身が入らない日々が続き、そのときは5月の連戦

(上田VK&SKY, Wings for Life World Run, 白馬岩岳トレイルレース)

の疲労からくるものだろうと思っていました。

6月の戸隠でのトレイル&マウンテンランニング世界選手権の 代表選考会も練習ができてない不安があるなかでのレースでした。

なんとか優勝したものの5月下旬からの気力が沸かない状態を引きずったまま欧州遠征に発ちました。

オーストリアではレッドブルのアスリートパフォーマンスセンター(APC)でパフォーマンステストをしたり、海外の新鮮な環境で練習できることでランニングへの意欲は回復しましたが、イメージと体の感覚のズレが大きく、スカイランニング世界選手権を目前にしてネガティブな考えで頭の中がいっぱいでした。

APCでのメンタリストとのセッションで話を聞いてもらい、

自分のネガティブ思考の原因を整理したことで徐々に自分の中に勝ち気が戻ってきました。

世界選手権一週間前にフィジオセラピストも現地入りし、体の状態が整っていくことで自信も湧いてきました。

APCでのメンタルのケア、そしてフィジカルのケアといった支えがあったからこそ勝ち取れた世界一でした。

(もちろんそれがすべてではないですが。)

世界選手権を終え、一時帰国すると待っていたのは隔離の日々。

淡々と過ぎていく時間のなかで鬱々とした気分になっていましたが、オリンピックの中継がモチベーション維持に大きな影響を与えてくれました。

しかし、隔離のストレスからか、はたまた日本の蒸し暑い気候のせいか、オリンピックを見ながら気力は十二分にあるのに体が思うように動かない日々。

隔離直後に足首を痛め、数日走れない日もありました。

練習をすればするほど、OCCで勝つことはおろか完走する自信さえも失ってく。

それでもレース日が迫ってくる焦り。

6月のときと違い気力がある分、コンディションの悪さとのギャップが激しく、8月は本当に精神的にしんどい日々でした。

それでも堕ちきらなかったのは妻や娘の存在があったから。

練習が思うようにできず落ち込んで帰ってきても娘や妻と遊んだり話してる時間は辛いことを忘れることができました。

そしていよいよフランス入り。

日本より段違いに過ごしやすい気候のおかげか、多少気持ちよく走れるようになるも、イメージしてるペースと実際との差は30〜60秒違う。

走って自信を失くすくらいならいっそのこと走らないでみようとレース2日前と3日前は完全休養。

そしてレースに対しても、

「順位にこだわらずその時の調子に身を委ねる。こんなコンディションじゃ勝てなくて当たり前だから完走できれば上出来。」

と開き直ってみました。

この「開き直る」という境地はこれまでも度々レースで良い影響をもたらしてきました。

そしてそういうときに限ってレース直前は何かしらのアクシデントで練習できてないことが多い。

その一縷の希望に懸けつつも、9割方なるようにしかならんという気持ちでスタートしました。


さて、前置きが長くなりましたがここからがOCCのレースのことです(笑)


今回はメインレースのUTMBに次いでOCCが次にメンツ揃ってるんじゃないかという顔ぶれ。

ITRAランキングで僕は6番手。

一昨年はアベレージ900点超えてたのに昨年レースがなく下がってしまったようです。

Hyden Hawksは2017年のCCC優勝。

Rémi Bonnetは50km超えのレースは初だけどZegamaで優勝したりと実績十分。

Jonathan Albonは2019年にワールドシリーズでバチバチやりあったライバル。2018年のスカイランニング世界選手権のウルトラカテゴリーで優勝。スパルタンレースやOCRでも何度も世界チャンピオンになっています。

Robbie Simpsonはマウンテンランニングがメイン。今年のSierre-Zinalではキリアンと42秒差の2位。




スタートラインに立つと、それまで穏やかっただった心が豪華な顔ぶれに否応無しに昂る。

まずはChampex-Lacまでの登り10km。

今年はVKで世界一になったとはいえ2019年ほど登りのキレがない。

ましてや大会前に追い込んだ練習が一切できてないので早々に心肺がキツイ。

先頭集団は牽制してるなぁと思いながら、決してついていけないわけではないけど

そのペースですら今の僕には心拍が上がりすぎるのでマイペースに行くことを優先。

シャンペの通過は14位。


パチッ。


最初のエイドを出た瞬間、ハマった気がした。

シャンペ湖の湖畔を軽快に飛ばし林道に入る手前で先頭集団へ。

相変わらず焦れったいペースで牽制しあってるので自分の気持ち良いペースに委ね、スルスルと先頭へ。

Jonathanと二人で先頭を引っ張る。

登りに差し掛かるとHydenが前へ。

続いてRemiとRobbie。

登りが得意ではないJonathanと登りは相変わらずイマイチな僕は二人で少し後ろをマイペースに登っていく。

後ろからPetter Engdahlがギアを上げてきて抜き去っていく。

彼とも何度も一緒に走っていて、Transvulcaniaで3位と実績も十分。

ホカの二人も上がってく。

山頂を8位で通過しTrientへと下っていく。

下りは調子がいい。

登りで、抜かれた選手たちを抜き返していく。

Trient(26km)を6位で通過。

順位は2つだけだけど、4-6位は団子。

登りはキレがないなりに堅実に登って、下りで抜き返すを繰り返していけば入賞圏内も見えてくる。

レース前半を終えて脚もまだまだフレッシュだし、イケるぞ!

と思った矢先、Trientを出た次の登りで背中に痛みが。

走って登ってられない。歩いて登るのもやっと。

「ここまでかぁ」


ここから先はファンラン。

登りはずっと痛いけど、今日は最高のレース日和。

景色を楽しみながら登っていく。

練習不足のせいだろう。下りは腹筋が痛い。

TrientからVallorcine(36km)までは大きく順位を落とした。

Vallorcineを出ると傾斜5%にも満たないような緩やかな登り。

それすらも背中が痛くて走り続けることができない。

いつもだったらレースを止めたい気持ちに駆られるところだけど、沿道で声援を送ってくれるすべての人に

「ありがとう」

と返事をしてるとそんな弱い気持ちには自然とならなかった。

Col des Montetsを過ぎ、緩やかに下ってると今回レース中僕を追ってるコロンビアの撮影クルーが。

闇モード突入。


沢山の企業から支援してもらってるのに、

撮影入るくらい期待してくれてるのに、

世界チャンピオンなのに、

なんでこんな順位を走ってるんだろう。

期待してくれてる方たちに申し訳ない。

僕が勝ってきたライバルたちに申し訳ない。


距離にして1キロくらい、

撮影クルーに撮られながら泣くのを必死に堪えながら走っていました。


それでもレースを投げ出さないでいられたのは、

これで今シーズンは終わりと決めていたってこともあるけど、

このコロナ禍で来たくても来れない、

走りたくても走れない人が沢山いること、

コロナで以前より活躍の場が少なくなってるにも関わらず

変わらず支援してくれるパートナー企業のこと、

を考えたらやめるという選択肢はありませんでした。


何よりも背中は痛くて登れないけど脚は元気(笑)


Argentière(44km)のエイドもVallorcineから汗すらかかないペースで来たので何も補給せずFrégère(49km)へ。

なんとか登りきり最後の下りへ。

下りは背中の痛みは気にならないし、脚は元気なので軽快に下っていく。

ランナー6人抜いてゴール。(そのうち選手は3人だったみたい)


総合23位

5時間51分17秒


4年前の自分のタイム、順位は越えられたけど、

Run walk styleのオラオ店長(21位)の順位は越えられませんでした…



優勝はJonathan Albon。

表彰式前に彼と話したけど、2019年のBuff Epic Trailの後半の、

Oriolを追う立場だったのが逆転した感じのレース展開で気が抜けなかった。

いつもならうぉー!って興奮してフィニッシュするけど、今日は何も残ってなかったよ。

と話してくれました。

レース中話してるときも、久しぶりのレースでやる気満々だぜって言ってました。

おめでとう!🎉



今シーズン全体の話からOCCのことまで長々と書いてきましたが、最後までお付き合いくださりありがとうございました。


9,10月はゆっくり過ごします。

RedBull 400に出たりJapan F.K.T. Journey進めたりしていきます。

11月からは2022年2月に控えてるトレイル&マウンテンランニング世界選手権に向けて

トレーニングがてら国内レースに出場する予定です。


最後に、2021シーズンもたくさんの応援ありがとうございました!