僕、実は、空が飛べるんだよ。真っ白な羽が、あるんだ。
タイムカプセルの在処を打ち明けるように人差し指を口に当てながら少年は囁いた。
自転車を押す体がぴたりととまる。なにを急に言い出すの、冗談はやめてよ。込み上げてきた言葉はなぜか、炭酸水のように喉奥に痛みを残して消えていった。
ぼろぼろになった黒いランドセルを背負い、いつの間にか少年は私の前を歩いていた。
夕日がつくる影法師は奇妙に背が高く、彼が一瞬にして、青年になりかわってしまったかに錯覚してしまう。
それほど私は動揺させられた。
すぐには飛ばないよ。もうすこししたらの、話だから。
彼の声は先程よりも震えていた。
飛ばしてやるものか。
ハンドルを握る手が強くなる。私から離れることはなにがあっても許さない。
早足で彼の隣に並び、ぐしゃぐしゃになるまで頭を撫でた。私の肩までしかない身長、いつかは追い越すのだろうか。その日は来るのだろうか。
カラスの鳴き声がきこえてくる。少年の表情を目に映さないよう、自転車を押し続けた。
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