「そうか、もう君はいないのか」城山三郎
作家・城山三郎が亡くなった奥さんにまつわるエピソードが収録されたエッセイ集。
著者が亡くなった後に発行されたみたいです。
たしか出版された時は、ベストセラーになった記憶。
薄めの本なのですぐ読めますが、20代の出会いから奥さんの容子さんが亡くなるまでの濃厚な50年近くの話。
そこまで書いてええんか、みたいな話もあるけど、もう今となっては遠い過去の話。
戦後の名古屋や、若者たちの文化や恋愛模様の様子も読み取れて面白いです。
夫の立場からみたので、奥さんの本当の気持ちはわからないけど、奥さんは生活のことなど相当苦労したと思うんですよねw
でも、夫は立派な作家になったし、奥さんとしては満足だったのではないでしょうか。
亡くなるまで仲睦まじく過ごしていたようですし、最後も旦那さんに看取られて亡くなりました。
で、妻を亡くした夫は早く死ぬ説とかありますが、城山三郎も容子さんの死後はつらかったようです。
その様子を娘さんが記述した文章も収録されているのですが、娘さんもびっくりするくらい文章がうまいのですけど、何者なんでしょうか。
奥さんがいなくて晩年は寂しかったようですが、娘さんも息子さんも父親のことを気にかけていて、よい家族だったことがみてとれます。
こんな家族は、本当は少数なんじゃないかな。
介護士をやっている友達が
「子供がいて施設にはいってる人も多いけど、見舞いに
くる人なんてほんの一部だよ」と言ってました。
子供世代はなにかと忙しいし、近くにいないかもしれないし、近くにいりゃいいってもんでもないですしね。
親が嫌いな人がいても当然だし。
世の中の事件の多くは、家族関係に根があると思っているんですけど、だからこそ、このまっすぐな夫婦の愛情の物語が尊ばれるのかもしれません。