「雨夜の星たち」 寺地はるな

 

 

初めての作家さんです。

恋愛小説強化月間を個人的に展開中なのですが、書評サイトで勧められていたこの本を手に取ったのですけど、恋愛小説ではありませんでした。

どこのサイトでみたのかも忘れた。

 

2020年、コロナ禍下の物語。

偶然にも、前回書いた「肩ごしの恋人」のように惑えるアラサーが主人公なのですが、令和っぽくさめた感じのヒロイン。

会社を辞めた後、「お見舞い代行」という仕事で暮らしているヒロインは、他人に関心がない性格で、できないことはやらないし、やりたくないことはやらない。

ちょっとめんどい性格の人。

 

この小説は、そのヒロイン以外にも基本的にめんどい人しか出てこなくて、ふわっとした透明感のある文体のあちらこちらから不協和音しか聞こえてこない。

この主人公の存在で、その不協和音が響いている気がしなくもない。

主人公のお姉さんは、完全にそれ。

 

そして、誰も悪くないというのがこの話の肝で「ま、世の中こんなもんだよな」っていう。

主人公も、母親と軋轢があるんだけど、しれっと冠婚葬祭のイベントには参加したりしてて、「盗んだバイクで走り出す」世代の私からみたら(その場にいけば、母親からいやな思いをさせられるのがわかりきってるので)、なんでや!?って感じでした。

 

でも、とても今っぽいというか、ゆるくふわっと抵抗していく感じとか、令和感あるな。25年前なら受け入れられない小説だと思う。

私は、古い人間なので誰ひとりとして共感できない小説だったけど、そのあたりは面白かったです。

若い作者さんなのかなと思ったら、そうでもなく(失礼。20代とかかなと)、コロナ禍の時のいいようのない不安だけど、静かな世界の雰囲気がすごく出ていて、今やもう懐かしいようなそんな気持ちになりました。

 

文体や文章の雰囲気はすごく好きで、喫茶店の描写とかもよかったです。