自転車は全身運動。この認知をもってして、脚に負担を多く課す感性が改まった。


上半身主義に移りつつある。

 腹の底を押し下げ続けていた、下げまくった溜飲が上へ上へとせり上がってくる。

 脚が思ったより伸びたって低く低く保った腰が、脚を縮めてでも高めになろうとし始めた。

 下顎が歯を介して上顎を持ち上げ出す。

 上の歯が下の歯を食ってやろうという勢いで食いしばっていた力関係が逆転し、前のめりで丸まっていた背中が後頭部をまっすぐ立てるために伸びていく。


心銀が決定的だった。

 たぶん心銀を覚えるまでは心臓がそれひとつでは、いわゆるエンジンとして間に合っておらず、脹脛が第二の心臓と言われるのにあやかり、脹脛を使ってツインエンジンとして活動していたのだと思う。それで腰を低くして脚にいつも負担を多く課していた。心銀を覚えたことで脹脛に頼らなくても日常動作程度なら心臓ひとつがエンジンとして間に合うようになったのだろう。






√伍



なむ