No. 156: 実験 | Rusty Skull のブログ

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2015年3月から2年間ザンビアでボランティアとして活動。日常と非日常の記録。
現在と回想の混合。


↓地平線。山無し。平ら。

三大珍味と呼ばれるものがあります。一般にはトリュフ、フォアグラ、キャビア。
日本にも三大珍味があります。組み合わせはいくつかあるようですが、代表的なのはコノワタ、ウニ、カラスミ。他にホヤ、あん肝などなど。またコノワタよりコノコの方が珍味と言えるかも。日本の三大珍味に共通しているのは、どれも海産物であり、そして日本酒の良い肴であること。

カラスミは、ボラの卵巣を塩漬けにした後、乾燥して作ります。ネットで調べると、塩漬けした後真水で塩抜きし、夜間は重しをかけて水分を出し、日中は重しを外して乾燥する。初めは陰干し、その後天日干しにするとあります。乾燥期間は、1~2週間程度。塩漬けの後の塩抜きに、日本酒を使うなど、製法には多少の異同があるようです。地方により、ボラ以外の海産魚の卵巣を用い、塩漬け、乾燥して作るものもあります。
ボラの卵巣から作るカラスミは、100gあたり数千円から1万円程度。他の海産魚卵や鶏卵を混ぜて原料とし、成型して作ったイミテーション商品は、その1/10あるいはそれ以下で販売されています。

ふむ、イミテーションを作るのに鶏卵を使うのか。
鶏卵だけで、カラスミもどきが出来るかどうか試してみることにします。濃厚な味を出すためには、卵黄だけで作った方が良さそうです。

(この先、かなりの長文です。この手の話に興味がなければ無視して下さい。)
(もともと、今は10日余りの出張予定でしたが、大統領選挙後の治安悪化を想定するJICAの指示で、首都にて待機中。時間を持て余しています。)

材料は、鶏卵(卵黄だけ)と食塩。適当な容器が無いので、ティーカップを使います。ガーゼが手に入らないので、幅広の包帯を買ってきました。目が粗いので、重ねて使うことにします。
Materials

まずティーカップに塩を入れ、その上に包帯を敷き、これを塩床にします。窪みをつけて、卵黄を入れます。
YorkInSaltBed
この上に、また包帯を載せて、さらに塩をかぶせます。この状態で冷蔵庫に入れます。腐らずに、、何か出来るんだろうか。

包帯を重ね過ぎたような気がしたので、上に書いたものはそのままにして、二日後に同じように塩漬けを追加。今回は、卵黄と食塩の間には薄い包帯が1枚。最初のを試料1、追加分を試料2とします。

実験開始8日目。試料1は塩漬け8日。試料2は同6日。左の写真が上面、右が下面。各々の写真で左側が試料1。
SaltedTop  SaltedBottom

試料1は、卵黄の一部がカップに直接触れ、そこから黄身が崩れてしまいました。試料2は原型を留めています。どちらも、透明感のあるきれいな橙色。カビの発生や腐敗の兆候はありません。柔らかですが、指先で持てる程度には固まっています。
表面に付いた塩を軽く水で流し。キッチンペーパーの上に置き、虫よけにザルを被せて乾燥開始。途中でキッチンペーパーを交換した時に、卵黄の下に包帯を敷きました。
Washed  OpenDrying
窓際に置いています。午後に2時間ほど、窓ガラス越しに日光を受けます。それ以外は、陰干し状態。全体を乾燥するため、毎日ひっくり返しつつ乾燥。

6日後。乾燥終了。左から、試料1、試料2。各々7g、9g。右の写真は、中央断面。
DriedYolk  DriedYolkCut

【結果】
薄切りにして、試食。うーむ。
多少のモチモチ感はあるが、かなり脆い。珍味と言えば、珍味。それ以上でも以下でもない。

【考察】
カラスミを作る際には、塩漬けの後に卵巣を水もしくは清酒で洗う工程があります。これは魚の卵巣膜(正式な名称は不詳)が比較的しっかりした構造を持つことで、可能になっています。
一方、今回試作した卵黄膜は、極めて薄く脆弱です。そのため、塩漬け後の水洗いで卵黄膜を損傷したようでした。さらに、表面が湿った状態でキッチンペーパー上で乾燥したため、ペーパーに固着してしまいました。
生の卵黄を塩漬けする場合、塩漬け後の処置には再考が必要です。単に、表面に付着した塩を振り落とすだけで十分だったようにも思います。

今回、塩と卵黄の間に厚さを変えて包帯を敷きました。塩漬けの程度に差は認められませんでした。十分に安定した状態を維持できるのなら、卵黄と塩の間に何も敷く必要は無かったのかも知れません。
塩漬け時間も8日間と6日間で差はなく、もっと短くても良かったようです。
乾燥3日目以降は、ほとんど外観上に変化は認められませんでした。

今回の状況を見る限り、塩漬け3日程度、乾燥3日程度で出来そうです。全工程を最大1週間と見て良いように思います。

味をカラスミに近付けるためには、たぶんアルコール/清酒を使う工程を入れれば良いように思います。初めに書いたように、カラスミを作るのに清酒で塩抜きをしたり、清酒を表面に塗りながら乾燥するという製法もあり、ヒントになりそうです。ただ、卵黄は崩れやすいので、それなりの工夫が必要だと思います。

【後記】
ネットで検索すると、塩を使った鶏卵の処理方法がいくつか出てきます。生卵を一旦冷凍しこれを解凍すると、卵黄が少し固まった状態になるので、これを醤油や味噌、塩に漬けるというレシピがあります。また、殻付きの生卵をそのまま塩漬けにするというのもある。塩の代わりに、塩麹を使うのも。

今回の実験は、卵黄の味噌漬けの変形です。当地ザンビアでは、味噌の入手が不可能なので、塩漬けにしたらどうなるか、という疑問からスタートしました。カラスミ云々は、話の序。予想した範囲内の仕上がりでした。やっぱり、味噌漬けの風味が欲しいですね。

最後に、サルモネラ菌について。今回の処理では加熱工程が無いので、サルモネラ菌を不活化することは出来ません。塩蔵については不詳。乾燥に対しては、増殖は抑制されるものの耐性があるとのことです。ただ、それまでの流通過程(常温流通の後、店舗でも常温で陳列)で増殖している可能性はあります。
中毒した場合、摂取後12~48時間後に発症するとのことです。さて。

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