武家屋敷から、にし茶屋街へ。都市の中の静寂。ここは金沢、長町武家屋敷跡。大野庄用水に沿った武士の居住区跡です。よく見れば…、土塀から生える、一本の松の木。土塀の中から生えているのは珍しいですね。それにしても金沢の繁華街香林坊に隣接しているとは思えない、この静寂。時を経ても、武家屋敷跡には人々の暮らしがあります。散策はお静かに。しばらく佇み、人がいなくなる瞬間。鍵之手になった道は、緩やかな曲線を伴って、町並みに奥行きを感じさせています。町は用水に寄り添い、そこにはこんなに沢山の橋が架けられています。武家屋敷のお堀のように見える大野庄用水は、灌漑、物資運搬、防火、融雪等の多目的用水で、金沢城築城に大きな役割を果たしたと言われています。こちらの味わい深い建物は、老舗の和菓子屋さん。いちご大福にひかれつつも…。…………………………………………………もう少し歩いてみます。犀川大橋越しに山々を眺めつつ犀川を渡り、数分で、にし茶屋街に着きました。ひがし茶屋街ほどの華やかさはありませんが、(ひがし茶屋街はこちらをクリックして頂けたら幸甚です。)木虫籠(キムスコ)と呼ばれる美しい出格子が織り成す風景が広がります。たばこ。こんな看板もあまり見かけなくなりました。ここに繋がる路地は、それぞれが個性のある風景で、いくら歩いても飽きることはありません。左側の青い壁の建物は見番の跡です。見番向かいの緩やかな坂の下には、特殊飲食店のような香ばしい雰囲気が漂っています。街並みに酔いしれつつ、もう少し歩くと、北陸鉄道石川線野町駅に着きました。バスターミナルを備えた拠点駅ですが、昭和の香りが色濃く残ります。中心市街地の外縁にターミナルを置くのは昔の私鉄のスタイルです。かつてはここから金沢の市内電車が出ていたと聞けば、なるほど納得です。市電に乗りたかったなと、しみじみ。それにしても混雑する金沢市街を避けて、のどかなローカル線に揺られるのはささやかな贅沢です。次の街へのBGMは…、ガタン、ゴトン♪気分は最高です。