11月5日月曜日から、原爆なみの抗ガン治療が始まった。
抗がん剤を使用するとき、同時に大量の輸液(水分)も点滴によって体に入れる。
それは、体の中に抗がん剤が残ると他の臓器へも影響が及ぶからだ。
要するに、体の中にある抗がん剤を尿にして流しだすと言うこと。
日頃、私たちは排尿や排便を何の意識もなく日常的に行っている。
でも、多量の輸液を処理するためには、体のさまざまな臓器が働かないと処理できない。
心臓や腎臓、肺、肝臓、血管、リンパ、脳・・・ありとあらゆる臓器が総動員で処理を行う。
幸太郎の場合、肺や心臓そのものには全く問題はないが、腫瘍の存在により肺に水が溜まる、いわゆる胸水が増えたり、圧迫された心臓が本来の動きができず心不全を起こす可能性もあった。だから、尿が出ないと、抗ガン治療はストップせざるを得なくなる。
何も食べていないのに嘔吐する。
吐く物がないから、胃液が出る。
涙目になってゲツゲツする幸太郎の姿を見なければならなかった。
でも、一番辛いのは、幸太郎。
私は、背中をさすり、嘔吐した洗面器の汚物を捨てることしかできない。
段々と食事量が減る。
何を食べても「砂の味がする」 そう言う。
1日に食べる量は、お茶碗1杯もない。唯一食べれたのは、温泉卵。
マックも食べたいと言わなくなった。
だるくて、だるくて、身の置き場のないだるさに幸太郎は、ずっと耐えた。
11月9日金曜日
今日で、抗ガン治療が終了する。
暑い夏に入院したのに、もう外は寒く、クリスマスを迎えようと準備が始まっている。
入院している人や家族は、こんな時間を送ってるんだ。
クリスマスなんて、どうでもよかった。