幸太郎は高校卒業後、大阪で暮らすようになってからも家によく帰ってきていた。
それは、働くようになってからも続いた。
4月に就職し、研修期間が終わって、フロントで働くようになった幸太郎は、
一日でも早く仕事を覚え、自分から進んで仕事をこなしたいと思っていた。
フロント業務は夜勤があったため、夜勤明けを含めて3連休になる時がよくあった。
そんな時
「連休やけど、帰ろかな。」
そんなメールが届く。
もちろん私は、そんな幸太郎を喜んで迎えた。
なにせ、一人暮らしの生活、お金も貯めなければと思っていたんだろう。
もやしや安い鶏肉、焼きそばとチャーハンの繰り返しの自炊メニュー。
家計簿をつけ、パンが安いスーパーをみつけ、安売りの曜日をチェックし、
自分の勤務と合わせて買い物をしていた。
家に帰る時は、冷蔵庫の物が腐らないように、食べれる物は食べ、残った卵ややきそばは、家に持って帰ってきていた。
家にいるときから、たくさん食べても太らない体質で、身長は167㎝くらいだったが、
体重は50キロ程度しかなかった。
ゴールデンウィークが終わり、6月に帰ってきた幸太郎が、リビングのジュータンの上で
寝ころびながら次女と一緒にゲームで遊んでいる時
「最近、右向いて寝ると胸がいたいんさなぁ~」
そう、ぼそっと呟いた。
看護師である私は、ただの筋肉痛だと思い、
「痛みが続くようなら、また教えて」 「うん」
そんな会話でその日は終わった。
これが、あの闇の中に入り込む入り口だったとは知らずに・・・
いつものように、たくさん食べ、たくさん寝て、いつものように大阪に帰っていった。