近大図書館司書課程、図書館概論のレポートで、2016年に提出し合格したものです。

よかったら参考にしてください。

なお、類似レポートは、再提出になります。

 

【設題】 利用教育(利用指導)の重要性を挙げ、それぞれについて簡潔に述べるとともに、実施のために必要な環境整備とは何かを考察し、論ぜよ。

 

 

 ******

 

1.はじめに

 現代の情報化社会において、「情報を制する者、社会を制する」と言われるように、正しい情報を迅速かつ的確に選別できる能力が、社会から求められる資質であり、同時に社会を生き抜く秘訣であるといえる。その中で、図書館における利用教育の役割について考査する。

2.利用教育の重要性

 今日は、「生涯学習の時代」といわれ、国民一人ひとりが生涯にわたって行う学習活動が盛んに行われている。その理由として、第一に今が知識時代であること、第二に平均寿命が延び、老後の生きがいを求める人が多くなっていること、第三に高学歴化社会になり、より高度な知識を求める人が多くなったこと、が挙げられる。政府も「一億総活躍社会」を打ち出しており、特に女性の活躍は一億総活躍の中核であるとされているが、生涯学習時代を押し上げるのも女性の経済的自立と高学歴化は大きな要因になっている。このように生涯学習は今後益々求められると考えられる。

現代は、生涯学習時代と同時に情報化社会でもある。洪水のように情報が氾

濫する中、効率の良い情報処理能力や文献調査法の知識をより必要とする時

代にあり、その能力は情報化社会を生きるものにとっては必要不可欠であるといえる。

日本国憲法において「知る権利」が保証されているが、図書館は国民が自由に情報を得る機関としてその役割は重大である。図書館のレファレンスサービスの重要な仕事の一つに利用教育がある。『図書館利用教育ガイドライン』では次のように定義づけている。図書館利用教育とは、「すべての利用者が自立して図書館を含む情報環境を効果的・効率的に活用できるようにするために、体系的・組織的に行われる教育である。」(引用1)としている。さらに、『情報リテラシー教育の実践』によると、「情報リテラシーは情報の読み書き能力」であり、「問題解決のために情報を主体的に活用する能力」(引用2)であるとしている。求める情報をただ入手するだけでなく、利用教育を通じて利用者が情報を評価・選択した上で活用する能力を身に付けるよう、支援していくことが望ましいとしている。

3.利用教育の課題

日本の教育は、知識注入型の傾向であったため事前調査や図書館利用がおろそかになっており、大学を除いてほとんど図書館利用教育が行われておらず、いわばブラックボックスといえる。大学では文献調査法を指導するところが増加しているものの、希望者のみに限られるなど大学図書館により対応は様々である。しかしながら、レポートや論文作成にあたって、文献調査法を知りレファレンスツールを使う場合と使わない場合では、所要時間でいうと雲泥の差となる。文献調査法を知ることは学生だけでなく、今日のような高学歴・高齢化社会においても重要なことである。図書館側の課題としては、レファレンスサービスが利用者にほとんど浸透していないことが挙げられる。さらに、図書館員の人手、人材不足やレファレンスツールの不足などの課題がある。

4.実施のために必要な環境整備

 利用教育の活動を活発にするには予算措置が必要である。PRのための費用、教材の作成・購入などの予算を確保するには、業務が組織的、制度的でなければ難しい。この組織的に行うことは最も大切なことで、人が入れ替わっても変化しないサービス体制が必要である。また、利用教育は教育支援にあたることから、教員との連携をはかり情報交換や協力し合うことで、満足できる利用教育が可能となる。利用教育実施の内容に関しては、標準化された実施マニュアルが必要である。また、マニュアルに基づき実施のため図書館員の研修が必要である。研修によって全員が出来る限り同じレベルで実施できるようになるのが望ましい。レファレンスツールの充実も重要である。事前に必要なツールを整備しておく必要があり、予算不足などで資料等のツールが不足している場合は、相互協力を利用するなどの手配も有効である。また、利用教育に映像メディアを活用することは、若い世代に親しみがあり分かり易く伝えることができる。日本図書館協会の『図書館の達人シリーズ』が利用教育の共通ビデオとして刊行されている。

5.おわりに

   利用教育により、多くの情報の中から有効な答えを導き出し、課題を解決する能力を身に付けるということは、激動の社会変化に対応可能な、自立し生きる力に繋がる。学習傾向も、現代は一つの答えを求めるだけではなく、どのように問題を解決していくかの力が問われている時代である。文献調査法を小・中学校のカリキュラムに取り入れ、日頃から自分自身で問題を解決する力を付ける訓練をすることで、学力の向上だけでなく、生きる力を育成することに繋がることが期待できる。最近は学校図書館の環境改善に向け、各学校に読書支援者の配置が盛んに行われているが、さらに踏み込み、利用教育の実施を社会的・国家的に展開し、実施する政策が必要であると考える。

 

(引用1)日本図書館協会『図書館利用教育ハンドブック 大学図書館版』日本図書館協会,2003年,P10

(引用2)日本図書館協会『情報リテラシー教育の実践』日本図書館協会,2010年,P13

 

参考文献

 毛利 和弘著『情報サービス論』近畿大学通信学部,2012年

 毛利 和弘著『文献調査法 第6版』日本図書館協会,2014年

 日本図書館協会『図書館利用教育ガイドライン合冊版』日本図書館協会,2001年

 

******

 

講評

良いレポートの一つです。

参考文献、引用文の活用とも高く評価できます。

なお、テキストは参考文献の中に含めないで下さい。

総評 合格

 

******

 

この科目でわかったことは、日本では学校の中で

図書館利用教育がなされておらず、

『ブラックボックス』状態だということです。

 

確かに、特に私の係わった中学校では、図書の時間がなく、

休み時間に本の好きな子だけがやってくる状態で、

非常にもったいないと感じました。

 

アメリカなどに留学した日本人が文献収集法を知らないばかりに

満足なレポートが書けないという問題を起こしているらしいです。

 

ちなみに、日本も大学の図書館では、

卒論などに活用してもらうため、

文献収集法のガイダンスは、行われています。

 

いくつか、中学校や高校の図書館室を見学に行ったのですが、

熱心な司書教諭の方が独自に学校や子どもたちを巻き込み、

文献収集法を叩き込んでいる、という先生がいらっしゃって、

すごいなぁと思いました。

地域の学校の図書室に対する考え方も大きいです。

校長先生のお考えひとつでも違います。

 

通う学校の図書室が、

司書教諭や学校司書の力量次第であったり、

地域によって差があるというのは、不公平になりますよね。

早くから身に付けることで、

本との向き合い方が違ってくると思います。

転勤族は学校選びに苦慮しますが、

図書館事情をチェック項目に挙げるというのも

一つの手かもしれません。