ヤーノシュ/作 やがわ・すみこ/訳
福音館書店 1969年
ずっと厳しい残暑が続いていましたが
今朝は、涼しくて気持ちよい目覚めでした
涼しくて・・・というより 寒いくらいで
ちょっとびっくりするくらいでした
ニュースでは、近くの果樹園が登場し、
りんご狩りの様子が出てました。
秋を感じさせる 話題です
猛暑と少雨の影響で 小ぶりだけど、
甘いりんごが たくさん成っているとのこと。
日中の日差しはまだまだ厳しいので、
もう少し緩やかになったら
りんご狩りに行きいと思います
今日は、そんな りんごの登場する
楽しいおはなしを ご紹介します。
昔ある所に ワルターという
貧乏な 男の人がいました。
ワルターはリンゴの木を 一本持っていました。
つやつや緑の葉の丈夫な木でしたが、
まだひとつも 実が成ったことがありません。
花さえ 咲かないのです。
よそのリンゴの木に みごとな花が咲いたり
鈴なりに リンゴの実が成っているのを見ると
羨ましく思うのでした。
ワルターは 夜ベッドの中で 心を込めて こう祈りました。
「ひとつでいいから、うちの木にも
リンゴが成りますように。
そんなに 立派でなくても いいのです。
ひとつでいいから 欲しいのです」
この願いは 叶えられました。
ある 春の夜、リンゴの木には 素敵な白い花がひとつ
咲きました。
あくる朝 ワルターは その花を見つけると
目を輝かせ、木の周りを ぴょんぴょん跳ねまわりました。
それから、ワルターは 夜も昼も 花の番を続けました。
雨や冷たい風、強い日差しから 花を守り
ミツバチには いそいそと 甘い蜜を取らせてやるのでした。
夏になると 花は 小さな実になりました。
ワルターは嬉しくてたまりません。
頬はバラ色、目は澄み切って 夏の空のようです。
ほんとうに 素晴らしい 毎日でした
やがて秋が来て リンゴは日増しに 大きくなりました。
取り入れ時になりました。
でも、ワルターは 取りませんでした。
リンゴは ますます大きくなりました。
ワルターは それでも そのままに しておきました。
あと一日、あと一日・・・・
そのうち 誰かに取られやしないかと 心配になりました。
通りがかりの人だって 信用できません。
通りがかりの人は びっくして立ち止まりました。
「や、や、や何て大きなリンゴだろう」
ワルターは ある日、とうとうリンゴを取って
市場に運ぶことにしました。
けれど、リンゴはあまりに大きくて汽車に乗らず、
はるばると 町まで持って運びました。
その重かったこと
でも ワルターは どんなに高く売れるかと
それを楽しみに頑張ったのです。
ところが 市場に着くと 集まった人たちは
「こんな大きなリンゴなんて見たこと無い。
リンゴだなんて 嘘付くな」
ののしり、からかい、やがて それにも飽きて
みんな行ってしまい、ワルターはリンゴと一緒に
取り残されました。
夜になったのに、やっぱり誰も買ってくれなくて
ワルターは とうとう諦めて 家へ帰りました。
帰ると また毎日毎晩 リンゴの番を続けました。
でも、もう 前のように楽しくありません。
頬は土色、心は灰色でした。
ほんとに、なさけない 毎日でした
もう、しんでしまいたいほどでした。
ところが、おかしなことになったのです・・・・
この頃 一匹の龍が この国を脅かしていました。
片っ端から何でも食べ、国中の作物や田畑を
食いつくし、荒らしまわっていました。
王様は 大急ぎで秘密警察を呼びました。
「皆のもの、何とかしてあの龍をやっつけるんだ。
縛るか、殺すか、でなければ 何でもいいから
贈り物で上手く騙して 追っ払ってしまえ」
勇敢な秘密警察官たちでも 恐ろしい龍を
縛ることも 殺すことも出来ませんでした。
くたくたになった時、王様のことばを思い出しました。
「そうだ、何でもいいから 贈り物をするんだ」
みんな顔を見合わせ、そして思いついたのです。
そうだ、ついこの間 大きなリンゴを売りに
来たやつが あったっけ。
秘密警察官たちは ワルターの家へ
駆けつけて 戸をたたきました。
「王様の命令だ。リンゴを出せ。つべこべ言うと
許さないぞ」
ワルターは つべこべ言う気はありません。
それどころか ほっとしたのです。
もう リンゴの番をしなくて 済むのですから。
秘密警察官たちは、おばけリンゴを
引きずったり 転がしたりして
やっとのことで おばけ龍のところまで運びました。
龍は たちまちリンゴにかぶり付き、
あんまり 慌てたものですから リンゴがのどに
引っかかり、息が詰まって 死んでしまいました。
国中、これで救われたのです。
びんぼうなワルターの苦労や心配は
いっぺんに 吹っ飛んでしまい、
そしてまた ピチピチ 元気になり
頬も バラ色になりました。
けれども ベッドに入ると
この出来事を よく思い出しました。
そうして、今度はこう祈るのでした。
「ふたつで いいから、リンゴがなりますように。
籠に入るくらいのが 欲しいのです」
ワルターは そういいながら
やすらかに 眠りにつくのでした――
不思議だけど、何か引き込まれる
ストーリーでは ないでしょうか
邪道ではあるかもしれないですが
ついつい意味とか 何が伝えたかったを
考えてしましますが、
リンゴは 何を意味しているのでしょうか
人を見て 羨ましく、願って止まなかった物
つまり 欲望を手に入ることで、
さらに 欲望は肥大化し、それがやがて自分を苦しめ
縛り付ける存在に・・・・
何だか、心あたり 有りそうな無さそうな
欲望が手に入ったかどうかは わかりませんが、
叶うまでが 素晴らしい毎日に思い
幸せに感じるところなど
思わず 頷いてしまいます。
まあ、何にしても ほどほどがいい
ということでしょうか・・・
とはいえ、たった一つでもいいからと
リンゴを望んで 祈る気持ち、
そして、取るのが惜しくて もっともっとと
大きくしてしまった気持ちなど、
理解できますよね。
このリンゴがいったいどうなるかと
最後まで 興味は途切れませんでした。
龍が出てくるとは 意外でしたが
こんなところで おばけリンゴが
お役に 立つなんて
ワルターに感情移入してしまって
落ち込んだ気持ちも、
一緒に ホッとできる おはなしです
どんな失敗だって、
意味の無いことなど無いんだよって
メッセージかもしれませんね
人生って ここに面白さがあるのかも
またまた、リンゴが成るように願う
ワルターに、 懲りないなぁと
ヒヤヒヤしつつ・・・
でも 今度は ふたつ、と願うところは
ワルサーの控えめで
おちゃめな人柄が出ています
今度こそ、本当に幸せになって欲しいなと
願いつつ 本を閉じたのでした。
秋の 読みきかせに いかがでしょうか
- おばけリンゴ (世界傑作絵本シリーズ―ドイツの絵本)/ヤーノシュ
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今日も 最後まで読んでいただき
ありがとうございました
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