神様の怒り 2



次の日、夜明けとともにルピーは海岸にやってきた。



早朝のせいか、人だかりはそれほどでもなかったが、日が昇るに連れて人が増えてきた。

今日はその中にジュディの姿はなかった。



おそらく学校へでも行っているのだろう。だとしたら、午後にはジュディはやってくるはずだ。



案の定午後になると、ジュディは友達と連れ立ってやってきた。昨日と同じように、その頃には海岸は大勢の人で膨(ふく)れ上がっていた。 ルピーは今日こそはと思い、あらん限りの声で叫んだ。



「ビービー!ビービー!」(ボクだよジュディ。ルピーだよ!ここにいるよ~!)「ビービー!ビービー!」 



が、今日も駄目だった。この程度の距離なら、まったく聞こえないわけでもないのだろうに、なぜかジュディは反応しなかった。


珍しいものでも見つめるような顔つきで、ただこちらをポカンと見つめているだけだった。



それもそのはず、実はこの少女はジュディではなかったのだ。



確かに姿形は似ていたが、まったくの別人だった。先述したように、すでにジュディは遠い国へ旅立っていて、もうこの町にはいなかったのだ。



もっとも、この少女がたとえ本物のジュディだったとしても、クジラになったルピーをルピーと認識できるはずもなく、したがって反応の仕様もないのだが……。



実は少女たちは、突如海岸に現れた巨大クジラが珍しくて、ただ見物に来ていただけだったのだ。



それはともかく、そのうちにとんでもないことが起こった。



なんと、1艘の漁船がいきなり近づいてきて、ルピーに向かって「ドカ~ン!」と1発砲弾を打ち込んだではないか。



「な、なんだ!今のは、なんなんだ!?」



次の瞬間、なにやら黒く細長い物体が、ルピーの目の前をもの凄い勢いで横切っていった。



が、この時点ではルピーはまだ、それが自分を狙った捕鯨船の砲弾だとはまったく気づかなかった。


突然の大音声(だいおんじょう)に、ただあたふたして右往左往するばかりだった。

無理もない。イルカ時代から人間を友達だと信じていたルピーにしてみれば、まさか人間がそんな酷い仕打ちを自分にしてくるとは、とうてい思えなかったからだ。



続いて2発目の砲弾がルピー目がけて打ち込まれた。



「ドカ~ン!」さらに大音声がして、今度はルピーの尾ひれを砲弾がチョッピリかすった。



「ウワーッ!」この時点でやっとルピーは、それが自分を狙ったものだと気づいた。


<た、大変だ!こ、殺される……!?>

ルピーは逃げた。沖へ向かって逃げた。わき目も振らずに逃げた。一心不乱に逃げた。



その夜、ルピーはショックと披露でなかなか寝つけなかった。



<いったい人間は、なぜボクにあんな酷いことをしたんだろう……!?何かの間違いなのでは……?いや、そうではない。1発目だけならともかく、2発目もボクのところへあんな恐ろしいものが飛んできたのだから……。あれは間違いなんかじゃない。明らかにボクを狙ったものだ。でも、友好的な人間が本当にそんな酷いことをするだろうか……?!やっぱりあれは何かの間違いなのでは……!?>

 

不審に思いながらも、人間を信じたい気持ちでいっぱいのルピーは、あえてそう考えて自分を納得させようとした。と言うよりも、クジラに変身した今となっては、そう考えざるを得なかったのだ。



というのは、「実は人間はクジラに反友好的で攻撃的だった……」と認めることによって、わざわざ神様に頼み込んでクジラに変えてもらった意味がなくなるばかりか、前回のサメの時に続いて、今回もまた大失敗と言うことになってしまうからだった。



神様の手前上、それだけは絶対に避けたかった。

だが、そんなルピーの願いもむなしく、同じことが再びルピーの身に起こった。



それから2、3日して恐る恐る海岸へ行ったところ、同じようにルピーは人間からきつい砲弾攻撃を受けたのだった。



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