先日、台湾映画を観てきました。
台湾の暗黒時代、白色テロと言われた
1950年代を題材にした映画です。


正直、この時代を扱った台湾映画は、
重く、つらく、やり切れなさが残る
台湾の悲哀を押し込めたような作品が多いです。 
ただ、この『大濛』(日本では、霧のごとく、で公開)、
台湾では昨年、映画における最高賞である【金馬奨】を受賞しており、
観てみたいという気持ちが湧いてきました。 
さらにいうと、あんちゃんと少女のバディ物と書かれていたのを目にして、
俄然、関心が増幅されて来ました。
 

上映館は、本所菊川町にある
「stranger」という小さな映画館。 
50席くらいの小さなホールでしたが
座り心地のいいシートのおかげで
2時間以上の長丁場、 
気持ち良く楽しめました。
 
冒頭、台湾の農村風景。
少女が走っています。
そして、まわりを確認してから
少女の背丈よりも全然高い
サトウキビ畑の中に入って行きます。
これだけで台湾好きは
嘉義か台南あたりであることは
なんとなく想像出来ます。

畑の奥に潜んでいたのは、
とても、表情が穏やかな
涼やかな笑顔の少女の兄。
あとからかわかるのですが
台北で苦学する政治活動にも
手を染めてしまった学生。
こんな学生をこの時代は寛容ではなく
結果、故郷まで逃げて来て
サトウキビ畑の中に潜むこととなります。
少女はそんな兄と色々なことを語り、
夢は膨らんでいくわけです。
『大濛』という映画のキモとも言えるのが
この冒頭のサトウキビ畑なのだと
後で観客は気付かされます。
そして、この兄のたたずまいこそが
この映画のトーンを決めたと言っていいかと思います。
ツェン・ジンホアという俳優なんですが、
この兄、このサトウキビ畑のシーンのあと、
特別警察に捕まり
政治犯として処刑されます。
少女は大好きな兄のなきがらを故郷に帰すため、
ひとり台北へと向かうことで
話は大きく動き始めます。 
物語は、この少女、阿月と
広東生まれの元国民党兵士である
輪タク乗りの趙公道がバディとなって
阿月の兄のなきがらを引き取るため
台北をさまようという、
ちょっとロードムービーっぽさを持っています。
そして、趙が輪タクにペダルを踏むたびに
出発!と声を張り上げることが
このふたりの救いになっていたのかも知れません。
そして、1950年代という重苦しい時代を
なんとかはねのけようとする人々の声が
そこかしこに聞こえてきて
この映画の独特の重くない空気を
作り出しているのかも。



タイトルは『大濛』、深い霧とか立ち込める霧、
なんて日本語訳になりそうですが、
映画の中で霧のシーンは
ほとんど有りません。
けれども、この霧という言葉がラストで
とても意味を成して来ます。
それは、上のポスターにも表れています。
自転車に乗る公道と阿月。
そして、白灰色の中に横たわる兄「阿雲」。

台湾だからこその素敵な映画でした。