一昨日、店番をしていると。

小柄な年配の男の方がふらっと入って来た。

穏やかな声で

小倉餡のお菓子があるかなと。

日持ちしたほうがいいのですかと尋ねると

しなくてもいいかなぁとささやいて

目線が最中の方に動いた。

最中はなんのあんこ?

小倉餡と抹茶餡の半々です、と私。

うちのばあさんは小倉餡が好きなんだ。

それなら、特別に小倉餡だけの最中を用意します?

うれしいなぁ、2個だけどいいかな。

わかりました、今、あんこ詰めてきます、と私。


あんこをも詰めて戻ると

もうしわけない、もうひとつ自分用で、と。

再び3つ目を詰めて戻ると

穏やかな口調で、

ばあさん92歳なんだ。

わたし、いくつに見える?と。

同じくらいの御歳ですか。

もう96歳だよ……明日、ばあさんの葬式でさ、

好きだった甘いもの、

棺に入れてやろうと思ったんだ。

ついでにわたしもひとつご相伴さ。

素敵なほほえみを浮かべて

手間かけたね、ありがと。


そう言って歩き出した後ろ姿に

頑張って下さいなどという

ありきたりな言葉しかかけてあげられなかったのは

少し………。