日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために -30ページ目

日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

ミロクローゼ
2012年 ディーライツ(製作:カズモ、石橋プロダクション、ディーライツ)
監督:石橋義正 主演:山田孝之、石橋杏奈、マイコ、岩佐真悠子

最近のこういうものを実験映画とはよばないのだろう。アーティストの世界観はよくでているフィルム(フィルムではないが・・・)とよべばいいのだろうか?とはいえ、結果的に男が女を追いかけるだけの話をアートにしてみただけなわけで、そこに破壊的なメッセージはあまりない。だが、見ている観客がわからないうちに、未来、現代、過去をさまようような夢の中世界とよべばよいのか、そんな体現は嫌いではない。90分を時間の無駄と思うかどうかはその人の感性といったところである。

少年オブレネリーブレネリギャー(山田)はマイコに恋をする。その神々しいまでの美しさに魅了され、必死に働き彼女と住む家を用意し、素晴らしい人生がやってくるかに見えたが、彼は男を作りいなくなってしまう。ぽっかり穴があいた山田は鍋蓋で蓋をし生きていくのだった。そして建てた家も嵐で流されてしまう。

青春相談員(山田)はさまざまな相談に答え、狙った女は必ずおとす。そして、恋の相談に対する答えも奇抜でほかの追随をゆすさず、ほかにはできない回答で今日もすごしていた。

タモン(山田)は花屋の娘(石橋杏奈)にほれ、彼女を射止めるも、謎の盗賊団に彼女をさらわれてしまう。山田は時空をまたにかけ彼女を探し、刺青師(鈴木清順)から彼女の行方の手がかりを聴く。そして、ついたのは遊郭。石橋をみつけだし連れ出す山田だった。

オブレネリーブレネリギャーは失恋してから30年たった。旅で着いた旅館でマイコに再会する。彼女には夫(奥田瑛二)がいて、勝負をしかけられるが、なにもできずに旅館をでていくことになる。だが、彼の穴はふさがり、いい感じに生きていい感じに死んだとさ。

あらすじを読んでも、面白いと思って見る人はいないだろう。特に内容はおもしろくないし、最後にあるように「いい感じに生きて、いい感じに死ぬ」という話らしいのである。

まあ、三役を演じる山田孝之の演技がみどころといえばみどころだが、彼の今までの演技を超えるものでもないし、ファンなら必見という感じでもないだろう。

映像的な面白みだけで見たら、60点はあげられる。しかし、サイケな感じの流れるような映像は蜷川実花的なものと比べると物足りない気もする。とはいえ、突然、時代劇になったり、任侠映画になったりする、スムーズな映像の流れはなかなか秀逸である。編集をよくわかっている演出家なのだろう。

一時代前はこういうのを実験映画などとも呼んだが、最近は実験しないで作るのでそうもいわないのだろう。だが、観客に感動を与えることが目的ではなく、観客に自分の映像世界をアピールすることが目的の映画であることは確かなことであり、そういう意味では好き嫌いがはっきりわかれる映像世界という感じだろう。

わたし的には、結果的に内容がないと思うので、この映画を見ろとはだれにもいわないが、まあ、前から言うように、こういう映画を1時間くらいの感じで作って、劇場で前座的に流したら面白いという感じなのだとは思う。

なにが、ものたりないって、でてくる女子にあまり色香をかんじないのだよね。

そして、何故に、鈴木清順はこういうフィルムにでたがるのかね~意味不明である。

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奇跡のリンゴ
2013年 東宝(製作:東宝、博報堂DYMP、幻冬舎、KDDI、JR東日本企画、他)
監督:中村義洋 主演:阿部サダヲ、菅野美穂、池内博之、山崎努、原田美枝子

青森で無農薬でリンゴを作るということに10年かけて成功させた実話を元に作られた映画。こういう話は、最近は映画にしやすく、宣伝もしやすいのだろう。私も嫌いではない。しかし、なにか、話を追うだけで、映画的な高揚をそこにだそうという気持ちが作り手に感じないのは寂しい。そして、話の内容に比べ上映時間が長く、全体的に間延びしているのはいつも通り。切れ味が悪いのだ・・・。この映画で観客の涙腺をゆるませないといけないところは、10年たったある日にリンゴの花が咲くところだろう。ここに持っていく見せ方が下手過ぎて、あまり感動的ではない。この映画自体もすべてがノンフィクションではないのだろうが、もう少し本筋を整理し、みなが興味を持つサイドストーリーをしくんだりして、うまく伏線を使う感じのシンプルかつひきこまれるようなものにすれば成功した一本だと思うのだが・・・。脚本の完成度が低い感じがたまらなくつらい。

阿部は小さい時から機械をばらすのが好きで、皆に不思議がられて、迷惑もかけていた。就職は東京の家電メーカーにいきそれなりに適職を持ったが、台風被害で故郷のリンゴが全滅したことで呼び戻される。そして、見合いもさせられる。相手は高校の時から知っていた菅野だった。流れで阿部はリンゴ農家の婿に入るのだった。リンゴは虫や病気に弱く日本であきらめるものが多い中青森が頑張って育て続けている果実だった。そのため多くの農薬散布の末に実を収穫できたのだ。そんな農薬のため菅野は身体を壊していた。それを知った阿部は農薬を減らすことをかんがえる。そして、若い仲間と実行に移す。そんな中、子供も生まれる。そして古本店で無農薬の本を見つけ「これだ」と思う。村の人間は相手にしなかったが、菅野の父親の山崎は畑の四分の一で試すことを許す。阿部は農薬の代わりになる自然の食材などを使ってリンゴを育てようとするがうまくいかない。虫が出て村の人には怒られる。「本気でなかった」と阿部は山崎をくどき全ての畑を無農薬にするもそれは収入を失う道だった。少しの野菜を育て菅野はささえるが貧乏は続き、子供も倒れる。7年目には畑を半分とられてしまい、阿倍の精神的状態もひどくなり、クビをつろうとする。しかし、その目の前にくるみの木が有り、その根元の土を見て気づく。自然のままのバランスを作ればリンゴもできると。その日から、プライドも捨て阿部はリンゴの下の雑草をからずに土をかえることに専念する。そしてその姿に村の人も少しづつ理解を示すようになり、はじめて10年後、リンゴは見事に花をつけた。

主演の阿部も菅野も好演でなかなか素敵な映画だと思う人が多いかも知れない。それは、話が素敵だからだろう。だが、貧乏の底におとされるところや、周囲が村八分にするところなどは、描き方が甘い気がする。さまざまにほかに影響をあたえないようにするためかもしれないが、悪役もちゃんとえがかないと映画は完成されない気がする。そういう意味でこれは21世紀の映画なのだろう。

結果、リンゴを無農薬で育てると言って11年の年月を描いた映画であるが、その風雪に耐えた時間を役者たちから感じないのもこの映画の欠点である。ある意味、ラストをみると意外に簡単にリンゴができたようにみえる。こういう部分は演出のこだわりがない証拠である。

最後に実った小さいリンゴを家族で食べるシーンがあるが、ここで本当に涙ボロボロにさせる演出をしなければこの映画は失敗だと思う。花が咲くところからは何度もリピートしてみたい感じに作らねばいけないのだ。そういう部分は全くないし、力がない。それは、見せ方であり、監督はじめ作り手のこだわりが必要である。

この映画の答えは自然と共生することである。「いらない雑草などない」ということだ。それは21世紀の日本への定言でもあると思う。いらない原発や兵器を作ったりもったりして、本当に必要なものを壊していく。それが経済の発展だという考え方はどう考えても古めかしい。つまり、そんなに人間背伸びしてもしっぺ返しをくらうということは20世紀にわかっていることなのだ。そういうことを考えさせたことでは、この映画は今作られる意味があるし、多くの人に見てもらいたい気がするが、結果的には普通のテレビドラマとあまりかわらないものになってしまったのは残念である。

あと、ベンガルや中村有志がでているのだが、みな歳をとったなと思ったりもした。個性的な俳優も育てないと日本映画はなかなか厚みを増すというわけには行かないのかもしれない。

有機栽培を扱っているのだから、映画もそれなりの苦労と技を加えなければいけないのではないかと感じた一篇である。

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結婚します
1969年 松竹
監督:中村登 主演:竹脇無我、奈美悦子、倍賞千恵子、田中明夫、横山道代

1969年というと、もはや映画産業は高度成長期の中の衰退産業となっていた頃の作品。そして、テーマは「お見合い」。中村監督だから、特に変わったものは期待しなかったが、それにしてもおもしろみのない映画である。この時代、この映画で金をとろうとした松竹という会社はこれ以降、「寅さん」だけでくいつなぐようになるわけでしかたないのだが、当時これを見た人はどうだったのか?見所は若い奈美悦子くらいかな(ここで専属第一作となっている)

竹脇は週刊誌記者。社内でも二枚目で人気で「ミスター」と呼ばれている。彼のところにお見合いの話が来る。乗り気でなかったが、彼は見合いをする。相手は奈美だった。彼女も見合いで結婚する気はないという。少し気になりながらも奈美とは結婚はせず、連続に見合いをはじめる竹脇。そして、自分の雑誌にその見合いのことを書く事になってしまう。その際、「社内結婚は釣り堀の釣り」みたいなこともいってしまい、ひくにひけなくなる。見合いを続ける中、伊豆高原で倍賞と見合いする。それまでの相手とは違い、なにか世間に冷めた感じの倍賞にひかれるものもあるが、結婚にはふみきれなかった。そんな倍賞が奈美と友達で久しぶりの再会をする。竹脇の女性に対する感覚も少しづつ変わりつつあった。しばらくして、倍賞からスペインにいくと連絡があった。結果的には振られたのだった。そして空港の見送りには奈美もきていた。奈美に車で帰りは送ってもらうことに。竹脇は奈美に気持ちがなびいているのを感じる。そして、ある写真をみせられる。奈美と倍賞ともうひとりは竹脇が学生時代に関係を持った女だった。奈美は竹脇のことはおみ通しという顔で、竹脇を波止場に残す。昔の傷をえぐられひとり感傷にひたったところで、奈美が戻ってくる。「少しは反省したか」といい竹脇を傍らに乗せてやるのだった。

この時代、まだまだ未来に少子高齢化がくるなどという予感はない。今の若者たちには「勝手なものだ」と思えるが時代とは空気が作っているといってもいいのだ。だから、この映画の中に結婚を否定するものは全くでてこない。原作は山口瞳であり、そういう社会描写は的確な人だから、ここに表現されるものがその時代感といってもおかしくないわけだ。

山口原作ということで、最初の見合いの席で奈美を競馬場に誘ったりする。競馬ファンだった山口らしい発想である。パドックで馬を決め負けるのもそれらしい。今は亡き東京競馬場の旧スタンドがなつかしい。

それも含め、お見合い場所のロケは結構あちこちでやっているようだ。こんな男女の単純な話に伊豆高原までいってロケをやっているのもまあ映画らしいのかもしれない。

この伊豆高原で見合いするのが倍賞千恵子だが、「さくら」のイメージとは違う、擦れた女でキセルでタバコを吸っていたりする。かつらをかぶって髪の毛を変えてみたり、やたら化粧が濃いのは当時のサイケな感覚がまだ残っていたからだろう。今見ると、少し異様な姿に見える。こういう姿の役もやっていたのかとは思うが、似合わない・・。

女たちに翻弄されながらも、あくまでもこの映画は男の結婚観を描いたものだ。最近はこういう題材自体がドラマにならないような気もする。だいたい、社内恋愛か見合い結婚かが論点なのだから。ある意味、このような安定期の社会が壊れ、現実さえ見えない時代に男たちは結婚にこんなに夢を抱いていない気がする。

映画の企画としては、当時の二枚目の竹脇が女たちに翻弄されるということなのだろうが、結果的には誰に見せたかったのかがよくわからぬ映画になってしまい、視点がはっきりしていない。

そういうことで、楽しめたのは奈美悦子のはつらつとした感じだけ。この当時の彼女は美人である。ある意味着飾った演技なのだろうが、男たちはこんな健康的なものに最もあこがれていたのかもしれない。1969年というと、人類が月に到達した年である・・。