1959年 松竹
監督:小林正樹 主演:仲代達矢、新珠三千代、山村聡、安部徹、石浜朗
今年の夏の戦争映画特集の締めはこの映画。反戦映画として、いまだ日本映画の代表作といっていい。全6部9時間31分は日本映画の最長でもあり、昔の丸の内ピカデリーでオールナイト興業が多々行われていたことを今も覚えている。それだけ、多くの人が見ている作品であり、戦争の悲惨さを体現できるフィルムである。ある意味、今の首相が最も見たくない映画でもあろう。というか、「五味川純平が書いたことなどすべて嘘」くらいなことはいいそうなやつである。ここには、戦争体現者しかしらない日本軍の姿があり、日本がなぜに負けたかもよく理解できる。それは、今、高度成長期に一世風靡した企業が負け戦になっているのにもシンクロする。真実をいうものは葬られ、精神論で自分の利権を守るやつだけが甘い汁を吸う世界。よくわからんが、日本人はいまだ日本人でしかないのかもしれない。
昭和十八年。満鉄調査部に務める仲代は恋人の新珠との結婚を躊躇していた。明日にも徴兵されるかもしれないからだ。だが、彼が書いた調査書が目にとまり、徴兵免除で彼は満州の現地鉱山の労働管理をすることになる。そして新珠も妻として一緒に行くことになった。着くと、中国人たちは過酷な労働下にあった。そんな彼と仕事をする山村だけが彼を理解する。そして、2割増産の命令が下る。それにあわせて捕虜を工人として連れてくると憲兵(安部)がいってくる。だが、捕虜なので隔離し逃げないように電流の通った鉄線を張り巡らせとのこと。捕虜の乗った列車がつく。彼らは飢え食料を求めた。貨車の中で死んでいるものもいた。労働者として使うには時間がかかると仲代がいうと、所長(三島雅夫)は無駄飯は食わせられないという。そして、仲代は工人への慰安婦の斡旋もやらされる。三島は女をあてがえば工人は働くというのだった。慰安所の女のまとめ役の淡島千景は仲代のいうことを聴く。いやがった有馬稲子は工人と恋に落ちる。そんな中、仲代の下で働いていた中国人(石浜)が食料を盗んだのをみつかる。母親が病気なのだ。それを知った淡島が石浜に声をかける。そして身体と金の代わりに工人を脱走させる手助けを頼むのだった。後ろで手をひいていたのは朝鮮人の男(山茶花究)と日本人の三井弘二だった。鉄線の電流を中国人の友人に止めさせ。その間に脱走が行われた。最初はないことにしたが、二度目はそうはいかなかった。仲代の工人を守る状況にも限界が及ぶ。そして、三度目の脱走を石浜に指示するが、うまくいかず、工人は鉄線の電流に朽ちる。そして、石浜も自らそこに身を投げるのだった。状況は中国人たちには悪くなる一方だが、中国人の主(宮口精二)は戦争はもうすぐ終わるとなんとか我慢していた。そんな中、仕事中に脱走しようとしたといいがかりをつける監督(小沢栄太郎)がいて、そこにいた7人は死刑になること。仲代は身をもって止めた。そこには有馬の恋人もいた。彼が殺されたあと、なんとか処刑は中止に追い込むが、仲代は結果、拷問を受けることになる。そして、ただひとりの理解者の山村もここからいなくなることに。数日して、仲代は釈放されるが、同時に召集令状が彼のもとに渡されるのであった。
今日は、8月15日。69回目の終戦記念日である。首相は、しらじらしく、平和の状況は変えてはいけないなどといったらしいが、この男は、実際は靖国にいけないことでストレスが溜まっていることと思われる。そして、彼にとってはこの五味川純平の原作などは、ただのフィクションだくらいにいうのだろう。
原作者、五味川純平は自分の中国の経験をもとにこれを書いている。その筆の向こうには怒りと虚しさというものが多分にあったと思われる。そう、ここにでてくる仲代達矢演じる主人公、梶は五味川の分身と言っていいのだと思われる。そして、戦争という場では、人間が殺し合いを行う場では、弱肉強食の中、ここにあるような捕虜への侮蔑は当たり前のようにあったのだと思う。南京大虐殺はあってもなくても、日本人は中国人と朝鮮人を侮蔑し、その上で鬼畜米英が行われたことは間違いないと私は思う。この基本線を認識せずに、大虐殺がなかったとか、慰安婦の強制連行はなかったといったところで話しても意味はないし、この事象はまだまだ先までしこりは残るということだ。日本人があやまっても、その精神構造は変わらないのだから・・・。確かに政治的な手段にされているのは、日本人の情けない部分ではあるのだが・・・・。やったことは認識すべきだ。(あやまれというのではない)
この第一部、第二部では、家畜のように使われる中国人を、仲代がなんとか普通に働かせてやりたいという意識下で奮闘する物語である。仲代に味方するのは一緒の部署にいる山村と妻の新珠だけである。他の日本人は彼をよく思わず、中国人は使いたいように使うという考えだ。つまり、ワタミ信者の中に、何も知らずに入っていく、か弱い新入社員的なものである。日本のブラック労働の基本はこのあたりの日本軍のおぞましさにもあると思われる。
最初に捕虜の中国人が運ばれてきて、飢えた彼らが食料にありつくところを、仲代が「食うと死ぬぞ」というところは、何度見てもすさまじいモブシーンである。ここで、この映画の姿勢は明確になる。戦時下の労働は死をいとわない精神論的なもので、効率はすこぶる悪いということだ。
そして、ワルを演じる、安部徹や小沢栄太郎のMAXいやらしいところがこの映画を完全な反戦映画へと導いている。実際は所長役の三島雅夫のように、自分では手をくださずに、「自分はダメだと思った」というような発言をする奴が最も醜いのだが・・・。(このあたりが、今の安倍であったり、石破であったりするのだ)日本は戦後69年たっても醜いやつを排除できないでいるということだ。
ある意味、ドラマそのものよりも、場面場面の壮絶さがまさり、自分が戦場の中で怒ることになる。そう、監督の演出は観客に戦時下を体現させるために計算されたかのような凄みがある。
慰安婦の淡島や有馬。そして、工人の宮口など、皆、日本人が中国人を演じているのだが、中国人らしくみえてくるからすごい。そして、このロケ地の広さが観客に疲労を与えて、仲代が赤紙を受け取るところでは観客も虚脱感を得る映画である。そう、自民党全員、トイレ休憩なしで9時間超、缶詰にして見せてやりたいくらいの戦争擬似体験映画である。「人間の條件」とはよくつけられた題名だと思う・・・。とにかく、今年の夏の戦争映画の締めとして6部まで書いていくことにする。
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