日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために -22ページ目
さよなら、クロ
2003年 シネカノン(製作:電通、衛星劇場、ハピネットP、他)
監督:松岡錠司 主演:妻夫木聡、伊藤歩、田辺誠一、金井勇太、塩見三省
長野の松本深志高校での実話をもとにした原作の映画化。いわゆる犬映画であるが、監督は田舎の純朴な青春映画にしたかったらしい。ということで、エンディングテーマがチューリップの「青春の影」なのだろう。私はこういう田舎の青春映画というやつは苦手である。そして、その通りにいまひとつ乗れぬままにエンディングを見ることになり、何故にこの歌をこんなところで使うのかとちょっと不機嫌になった。10年ほど前の映画であるが、この年のキネ旬ベストテン8位と聴くと情けなくなる感じである。どこがこの映画の良さなのかが理解できないからだ。まあ、20年前くらいからベストテンなどというものは全く意味がないのはわかっているのだけれどもね・・・。
主が引越し行き場を失った犬が高校にまぎれこんできた。学校は文化祭の準備で忙しい中、生徒の妻夫木は犬に餌をやる。文化祭の仮装で西郷さんの犬としてその犬を使うことに。そして、その日から犬は学校にいつき、伊藤がクロと命名する。クロを怖がる教師(塩見)もいたが、用務員のおじさん(位川比佐志)を中心にかわいがられ、職員会議にまでいつくようになる。妻夫木は受験を控えていたが、伊藤をめぐり同級生の新井浩文と3角関係だった。新井は積極的で伊藤に告白するが、その後、バイクの事故で死んでしまう。皆が戸惑う中で高校生活は終わる。そして10年の月日が経った。クロはまだ学校にいて可愛がられていた。そして、ちょっと気分が荒れた生徒(金井)のこともなごませていた。そんな10年後の故郷に妻夫木は帰ってきた。同級生(佐藤隆太)の結婚式のためである。ついでにたちよった学校でクロに再会するが、クロが病気なのを知る。妻夫木はクロのことがきっかけで獣医になっていたので、地元の医者に連れていく。子宮に膿がたまっていて手術が必要だった。学校では老犬を手術するか討論になる。だが、それを動かしたのは金井をはじめとする現役生の募金活動だった。そして、妻夫木が執刀をしてクロは病気から解放される。手術中、外で10年前の新井のことを思い出しながら待つ伊藤がいた。だが、一度は生き返ったクロだったが、数ヵ月後死んでいく。学校葬が行われて妻夫木たちも見送った。みなクロに元気をもらった日々を思い出しながら。そして、伊藤と妻夫木は一緒に歩いていこうと決める。
実話は昭和30年代の話となっている。昔の学校では犬を飼うということもそれほど不自然ではなかったのだろう。今では学校を犬がうろつくなど絶対にダメだと考えると時代を感じる話である。そして、用務員(当時は小遣さん)さんが犬の世話をするなど当時らしいなと思った。
映画では、それを昭和40年前半の設定にしてあるようだ。スパイダース「あの時君は若かった」が流れるような時代だからだ。そして、その10年後には金井が「青春の影」をギターで弾いていたりする。私がよく知っている時代であり、そう考えるとノスタルジックだが、今の若者にはこういうニュアンスはわかりにくいだろう。
犬の話を軸にはしているが、監督が描きたかったのは甘い初恋のようなものであろう。高校のデートで「卒業」や「俺たちに明日はない」みたいな映画を観る感じはわかるが、それが犬ついでなのであまり劇的ではない。だから前半の山である新井が死ぬところも、観客は置いてきぼりという感じだ。ここでの伊藤のとまどいが、十年後にクロの手術で蘇り、妻夫木と一緒にやっていく決心をつけさすという展開なのだが、どうもこの監督が見せたい感じの空気感が私にはあまりドラマチックにもみえず、「何?」という感じであった。考えれば「バタアシ金魚」「東京タワー」などでもそうだったが、松岡監督の青春感は私にはあまりシンクロしないところにあるようである。
とはいえ、最後の方の伊藤の演技はなかなかさわやかで好感は持てた。でも、先にも書いたように、私にとっての「青春の影」の彼女は伊藤のような感じではないので、スッキリはしないのだが・・・。
ドラマは特におもしろいものではないが、10年前の妻夫木や佐藤、金井、新井など、今かなり活躍している役者たちの初々しい姿はちょっとお宝的なのかもしれない。とはいえ、特に今と芝居が変わった感じでもないのは、日本映画の実情を表している感じがする。
冒頭の文化祭で妻夫木がキャンプファイアーの中、「若者たち」を歌っているが、10年後にそれを主題歌にしたドラマにでるとは妻夫木自身も思わなかったであろう・・・。
愛された犬を殺すことで人間も成長するというような安直な話である。まあ、そんなに書く事もないというところではある・・・・・。
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人間の條件 完結篇
1961年 松竹
監督:小林正樹 主演:仲代達矢、内藤武敏、金子信雄、川津祐介、高峰秀子
大河ドラマの完結篇だ。そして、国のためにやった戦争は個々のサバイバルな体験で終わるという最も過酷な話が最後に待っている。国は、戦争を起こすが、最後に身を守るのは個人である。日本人はこのことを戦争で十分に知ったはずなのに、戦後、金の欲にくらみすべてを忘れてしまったのかもしれない。そして、性懲りもなくまた戦争をやろうという。あくまでも国のビジネスのためにである・・・。この映画を再度見て、日本人の愚かさを知り、政府がやることが国民のためなどではないということをもう一度理解し、未来のために反戦を言い続けることが無意味ではないということを再認識した。日本人よ、いまならまだ間に合う・・・。そして、愛する人しか人に力を与えないということなのかもしれないなどと思ったりもした・・・。
戦場で生き残った三人(仲代、川津、諸角啓二郎)が彷徨していると、そこにはソ連軍がいた。先に行くために仲代はソ連兵を刺し殺す。そして、民間人の隊列に合う。ソ連のトラックがそこに女を落とす。遊ばれて捨てられたのだ。そんな団体を仲代は考えて一緒に行動させる。だが、食べるものに困り、飢えでどうにもならなくなる。死ぬものも出る。途中であった隊で食料こそわけてもらえなかったが、仲代が以前病院であった内藤にあう。歩いていくうちに中国人のあき家があり、そこのブタを喰って一休みするが、中国人に囲まれてしまう。仲代は戦争が終わっていることを察知する。結果的にはまた死者をだすことになる。そして、やはり逃げていた金子と合流する。内藤とは別れる。仲間の中の女(中村玉緒)を金子たちに送らせるが、金子はすぐに仲代の前に現れ「彼女は適当に扱ってやった」というのだった。仲代は怒り、金子を追い出す。そして、行き着いた先は女(高峰秀子)と老人(笠智衆)が守る避難民の集落だった。彼らに言わせれば、ソ連軍の方がやさしいという。そこにソ連軍がやってくる。高峰の「戦争はするな」という叫びに仲代は投降する。そして、収容所での生活が始まる。わずかな食料での重労働が待っていた。そして、日本人を指揮する者の中に金子がいた。金子は仲代を目の敵にする。そして、仲代の指示で残飯をあさっていた川津を上に報告し川津はサボタージュとされ身体が衰弱する中、重労働にもどされる。仲代はソ連兵にかけあうが通訳もままならず、彼らにファシスト呼ばわりされる。仲代が描いていた共産党の理想像も崩されてしまう。そして、仲代はさらなる重労働の森林鉄道設置に移される。逃げ出さないようにだった。そこで内藤に再開するのだった。戻ると、川津は金子の仕打ちで殺されていた。仲代は怒りの中で脱走することを決める。夜、金子を呼び出し鎖で殴り殺したあと、鉄条網を越え、仲代は歩き出す。飢えの中で泥棒も働きながらただ歩く仲代。新珠に会うことだけを考えて、そして、倒れる仲代の上に雪が降り積もるのだった。
戦争の悲劇は、仲代を捕虜を大事にするヒューマニストから、最後には自分が捕虜になり何もかも信じられずに妻だけを求める人間に変えてしまう。そして、その過程の中で「人間がするべきものとは、人間の條件とは何かという」叫びを自問しながら主人公は朽ちていく。戦争の野蛮さと虚しさがその亡骸に集約するように観客に提示される。全編9時間31分は、見る者を戦争の渦中に誘い、ただただ戦争とは何かを問いただす傑作である。
久しぶりに全編通してみたが、最近では見る機会がないのは本当にもったいない作品である。こういう作品が世に問われないから、政府が「戦争をやる積極的平和主義」などと、バカバカしいことを言い出すのである。日本人は戦争に負けたことを忘れてはならない。そして、平和を決意したことをわすれてはならない。なぜかといえば、ここに描かれるような悲劇を絶対に繰り返さないためである。
一作目(1.2部)では、中国の捕虜の扱いを描き、二作目(3.4部)では日本の軍隊の醜さを描き、三作目(5.6部)では敗戦で日本がなにもできなかったこと。そしてその苦痛を描く。それらすべてを通して「生きる」というテーマが襲いかかる。特攻で「死んでこい」などということが美談にされるが、意味のないことだと痛感される・・・・。
最後にでてくる悪党の金子信雄は日本人の醜さを一身に背負っているように憎たらしい。彼のような人間を私も企業社会の中で見たことがある。自分に技がないのに、欲深く、真面目な人間を平気で地獄に葬るような男だ。そう、日本の組織には、かかせない人間なのだ。そういう人間を飼わないとやっていけないような組織しか作れない日本では軍隊も作れないだろう。そう、作るべきではないのだ。私は自衛隊は、国際救助隊にすればいいと思っている。人間に向かって戦う必要はないのだ。人間を助けるのが日本の未来の役目だと思う。
軍隊組織は国のためと言っては、わけのわからない行動をとる。ここの主人公の仲代達矢は自分が生きるために必死になることで、結果的にはファシスト呼ばわりされてしまう。本当に真に幸福に生きたいと思えば思うほど周囲から誤解されるというよくある状況である。だから、「愛国心」「道徳」などということを国が問うのは危ないのだ。そういう昔みたようなデジャブな方策を必死で行う今の政府は本当に危険だと思う。政府が金子信雄状態なのだ。そう、この政府を肥溜めにつきおとさなければ、平和祈願の念頭には戻れないだろう。本当に腹立たしい。
そんな中、ここでも女がでてくる。元淫売の岸田今日子や今も結果的には身体を売っている高峰秀子である。女たちは戦争をする男たちを醒めた目で見ている。そして、そんな中でも未来の光をどこかに見ているようである。そう、仲代達とは違う動物であることが明確であり、心の拠り所として描かれている。だからこそ、仲代が最後も妻を求めて歩くのは必然だろう。戦争の中にあった遠距離恋愛の行く末をえがいたのが、この映画でもあるのだ。
6部作を見て、書きたいことは山ほどある。それは今の世の中とシンクロしてくるからだろう。それほど、今の世にもさまざまなことを提示する傑作だ。そして、多くの戦後作られた戦争映画とともに見れば、この悲惨な状況をよく理解もできるであろう。だが、シネコンが多くある世の中なのに、こういう映画は上映する場がないのが事実である。私的にはせめてシネコンの1スクリーンは名画座として500円くらいで開放し、夏は戦争映画をこれでもかというくらいかけてほしいのである。まずは、歴史を知ることが、嘘つきに洗脳されないための方策であると思うからである。
今年も終戦の日を過ぎ、秋風を感じる季節になった。来年も日本が平和であることを祈って結ぶ。
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人間の條件 第3・4部
1959年 松竹
監督:小林正樹 主演:仲代達矢、新珠三千代、田中邦衛、千秋実、佐田啓二
この映画、1年に一作づつ、3年にわたって作り続けられた。それでも短い感じがする。今では、これだけの魂がこもった長編をつくりえないだろうことはわかるのだが、それは戦場を知っているか知らないかという部分が大きいのだろう。とにかく、観客を戦場に誘い、一気に見せてしまうパワーには驚かされる。この二作目は、舞台が軍隊に移る。そこには、いわゆる戦争映画にでてくるような英雄はいない。ここにいるのは、威張った先輩たちと、虐げられる初年兵、そして体力のないものや、兵隊に向いてないだろうというものたち。たぶん、実際の戦争はこういう玉石混合の中でおこなわれるのだ。だからこそ、指揮官は難しい。ただ、洗脳をして精神論を強制する日本軍のやりかたには限界があったことはよくわかる。今、日本が徴兵を行っても同じだろう。自殺者も出るし、脱走するものも出る。ましてや、他国のための戦争に生かされるのであればなおさらである。まあ、軍隊に行っていじめられるなら、拒否して臭い飯を喰ったほうがいいと思うのは私だけではないだろう。
仲代は北満の国境近くの関東軍の部隊にいた。三年目の上等兵(南道郎)が初年兵をいじめる環境だった。そんな中、武器の扱いも悪く、体力もない田中は毎日のように殴られていた。仲代は彼の尻拭いという感じだった。そして三年目の一等兵の佐藤慶は仲代と同じくアカで連れてこられた訳ありだった。彼は国境を越えてソ連に逃げることを夢見ていた。そんな部隊に手紙を送り、仲代に会いに来てしまう新珠がいた。そこで仲代は新珠の身体を焼き付けるのだった。そのあとの野外行軍で田中が脱落する。帰って娼婦の真似をさせられる田中は、その夜銃で自らの命を絶つのだった。次は、佐藤が中国人の冤罪を守ったために罰せられるが、その時に野火で部隊は大騒ぎになる。そこに、ひとり逃亡する佐藤がいた。それを追う南がいた。そして仲代も追う、南は沼に落ち仲代に命乞いする。仲代は「田中の死の原因は自分だといえ」と南に条件を付け助けようとするが、南とともに気を失った。仲代が目覚めた時には病院のベッドだった。そこには、ひとときのやすらぎになり、看護婦(岩崎加根子)にも世話になる。部隊が移ったために別の部隊に運ばれる仲代。そこには元同僚で今は少尉の佐田が上になった。そして仲代は新しく来る初年兵をまかされる。20~40代までという歳の幅も聴き、仲代は初年兵を古参兵とわけて教育することにするが、これはまた古参兵の逆鱗に触れた。そして、初年兵の中にも仲代に疑問を持つものも多かったが、懲罰中心の教育からは変えられた感はあった。そんな中、仲代は何人かの初年兵を連れて作業につく指令がでる。だが、その中でソ連が国境から攻め入り、部隊は玉砕状態で佐田も死ぬ。残った兵たちで穴を掘り、進んでくる戦車に向かい撃つ兵士たちだったが、次々に朽ちていく仲間をみて、自分も目の前で死ぬ仲間に会い、狂気の中で生き残ろうとする仲代がいた。
この映画3作のすべての時間の半分を過ぎて、戦闘シーンが初めて出てくる。そこには格好良さはない。あくまでも、防戦に回るだけの部隊がある。日本のみじめな敗戦の模様をいかにリアルに示すかがここの演出のテーマなのだろう。こんな敗戦を経験し、また戦争をやろうなどという日本人がいるのを私は信じられない。そう感じさせる第二作目である。
そう、第一作と違い、軍隊のどうにもならない協調性のなさが描かれる。慰安婦もでてこない男たちだけの世界のいじめである。そして、それは一等兵から上等兵という底辺の中での人間の低次元の利権争いである。学歴など関係なく、経験年数がものをいう世界で、いわゆる現在の学校内のいじめ以上のいじめがまかり通るのが軍隊なのだ。今、徴兵して素人兵を集めれば同じことが起きるだろう。ここにでてくる、何をやってもダメな田中邦衛のような奴がごまんといることも知るべきである。結果、戦争にはならない。そういう実態を考えれば、「戦争できる国にする」などというたわごとは、たわごとというにもおぞましい発言である。だから、現首相はキチガイとしか私には思えないのだ。そして、それは気持ち悪さに転化する。そんな安倍を指示するという人間にも同じものを感じる。女もしかりである。
この映画がすごいのは、一作目の山村聡に始まり、ここでの藤田進や千秋実など、いつもは戦争を指揮する役を演じるような人々が底辺の兵士を演じていることだ。そして、その中で偉そうにしているのは彼らではなくどちらかというと無名の俳優たちである。そのキャスティングが映画を混沌とさせているのである。途中で脱走をはかる佐藤慶はアカの役でソ満国境を越えることを夢見る。いつもはアカをいじめる役が多い彼がそんな役をやっていることが観客にこれはヒーロー映画ではないことを感じさせ、そこにリアリズムを蘇らせているのだろう。
はじめの方で、新珠が軍に面会しにくるシーンがあるが、少し違和感がある。それだけ愛しているというところなのだろうが、こんな女はいないだろう。つまり、女も当時としてはイレギュラーなものにすることで、時代の異様さをデフォルメさせているのだと思う。
それは、後で出てくる岩崎加根子と仲代のやりとりにも感じる。岩崎をしきる婦長の原泉は古参兵よろしく、岩崎を恫喝するが、女たちも利権を持てば、みな同じになるのだ。たぶんこんど今の日本で戦争をすれば、小池百合子や野田聖子や高市早苗などが、お国のためにと叫びだすだろう。まあ、ギャグにしかならないが、それが戦争というものなのだ。私はつかまって、丸川珠代に侮蔑されるような屈辱をうけるかもしれない。自民党の女たちにも私には今は気持ち悪さしか感じさせない。
この二作目も三時間あるが、一気にみせてくる。そう、一作目に続き、私たちを戦場にワープさせるからである。もう二度と作れない戦争映画であるし、このようにリアルに戦争が撮れる世の中に戻って欲しくないと思う一篇である。なんどもいう、集団的自衛権などといってる輩はまずはこの映画を見て感想を話してくれ。それでも、戦争をやれる国にするというなら、ソ連や中国や朝鮮に勝ちたいというなら止めやしないが、馬鹿でしかないことは明確だ。戦争とは個人のためでなく国のためにやるのだ。今、世界で起こる紛争は宗教がらみのものが多い、これは日本人には理解しがたいものでもある。そういう戦乱に飛び込めという中で、あなたは自己のアイデンティティをそこに見いだせますか?
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