日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために -21ページ目

日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

ボーイズ・オン・ザ・ラン
2010年 ファントム・フィルム(製作:アミューズソフトE、ティー・ワイ・オー、小学館、他)
監督:三浦大輔 主演:峯田和伸、黒川芽以、松田龍平、小林薫、YOU

花沢健吾原作の漫画の映画化作品。主演は銀杏BOYSの峯田和伸。ダメな男の純愛話だが、峯田の熱演のおかげか最後はなかなか熱くなる映画である。とはいえ、彼の熱い感情はむくわれない。まあ、ほとんどの人生がこんなものかも知れない。脇を固めるYOUや小林薫というのが熱い主演者をうまくサポートする感じで気持ちよかったりもした。しかし、このエロ話で、黒川芽以が脱がないのはいかがなものかと思う。そのあたりが今時の映画ですよね。

峯田はガチャガチャの会社斎田産業の営業マン。会社的には大手のマンモスに負ける弱小企業で、峯田はその中でも成績の悪い営業だった。飲み会で企画の女の子(黒川)と話し、好きになるも、なにもできずにその足でテレクラにいきブスにつかまるような人生だった。そんな黒川がAVを貸てくれといい、峯田は軽いものを貸したつもりだったがそれは獣姦ものだった。しょげている峯田に声をかけたのはマンモスの営業マンの松田である。松田は峯田にダブルデートを誘う。そして峯田は黒川とホテルにいくが処女だと言われなにもできなかった。そんな黒川が風邪で休んでると聞き、家を訪ねる峯田。そこは吉原のソープ街のアパート。隣に住んでるソープ嬢(YOU)と仲良しの黒川だった。だが、溜まっている峯田をかわいそうに思い咥えてやろうというYOU。そこに黒川が入ってきて峯田は黒川に嫌われる。そして同僚の結婚式のスピーチでそれをあやまりさらに嫌われる。しばらくたって、YOUから黒川に電話がよくかかってくることを聴く。そして彼女は松田と一緒にいるところを観てしまう。そして、彼女が自分の企画をマンモスに流していたことを知る。彼女は会社を去ることになる。そんな中、峯田は勢いで怒りを松田に電話でし、決闘を宣言する。社長(リリーフランキー)も応援して、彼のボクシング指導に営業の小林をつける。峯田は黒川に「勝つから」といい、自分の奥の手を教える。そして、黒川の辞めるその日に峯田は髪の毛をモヒカンにしてマンモスに乗り込み、松田と殴り合うが、奥の手が黒川から松田に教えられており、松田に小便をかけた以外何もできなかった峯田であった。そして、黒川が故郷に帰る駅に急ぐ。結果的には黒川に裏切り続けられ、彼女を電車におしこみ別れを告げる峯田。彼はそして走り続けるのだった。

この映画の舞台は上野周辺と思われる。しかし、最後に黒川と峯田がもめる駅は関東鉄道だから茨城のようだ。そんなテーストが許される映画である。青年誌連載のよくあるダメ男話なのだ。だから、別れのシーンは茨城でいいような気もする。

そう、前半は、なにか生臭いつまらない話だなと思いながら見ていた。テレクラやAV、暗いラブホテル、そんな道具が峯田の人生そのもののように陰鬱にまとわりつく。だが、峯田の変な明るさがどうにか観客を引き止める感じである。まあ、今時の暗い青年譜といえば、そうなのだろう。

どんどん、女をくどく松田も今時の青年なのかもしれない。そこに愛もなく、ただ浮遊してSEXしてる感じも私の世代のナンパ男とは少し違う。そんな二人の攻防戦。そして、黒川自体がアカぬけない女なのがまた21世紀の四畳半的な臭いをうまく紡いでいる。そう、テーストとしては一貫性をもって原作の本質をうまく描いているようである。

そして、峯田が決闘を考えるようになり、映画はまさに「ボーイズ・オン・ザ・ラン」に動き出す。YOUや小林薫、リリー・フランキーのような個性的な大人たちが彼をうまく勢いづかせ、その結果が、カラオケで歌う「あなたの夢をあきらめないで」に到達する。しかし、峯田という男、歌手ではあるが、この歌の有機性は物凄い。岡村孝子の名曲が完全にロックしている感じはこの映画の最大の見所といっていいだろう。このカラオケシーンはかなりの名シーンである。

最後の格好悪い決闘シーンも峯田は完全に男になっているし、彼をヘラヘラしてると嫌う松田のヘラヘラ感もなかなかのもので、見応え充分というところ。セコンドでビールを飲みながら声をかける小林も含め、これは「あしたのジョー」のパロディ的なものというのは私の世代なら誰もが感じるところであろう。

映画としてのまとまりはなかなか良い感じであるが、黒川がもう少し魅力的で、先にも書いたように結果的にはサセ子であるところを体を張って演じてくれていれば、この映画かなりの高評価になっていたと思う。

ラストの峯田自身が作った主題歌の疾走感はなかなかよく、マンガ原作ものとしては熱い出来の一篇だ。この映画を見て「あなたの夢をあきらめないで」というメッセージが観客に届いたなら、それで成功なのかもしれない。



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わが心の歌舞伎座
2011年 松竹
監督:十河壮吉 主演:市川團十郎、尾上菊五郎、片岡仁左衛門、坂田藤十郎

2010年4月に閉場した歌舞伎座を舞台に、その思い出やサヨナラ公演の舞台の表裏を記録した一篇である。ドキュメンタリーだが、デジタルで撮られた作品はテレビの質感であり、少し残念である。戦後の歌舞伎を見守り続けたこの舞台の最後の記録をフィルムで残して欲しかったと思うのは私だけではないだろう。そして、こういう仕事こそ、残る映画屋にやってほしかったと思ったりもする。松竹は映画会社でもあるわけだから・・・。

倍賞千恵子のナレーションとともに、現役の歌舞伎役者たちが、歌舞伎座の思い、歌舞伎への思いを語っていく。合間に、歌舞伎座の裏の姿が綴られ、昭和26年開場からの歌舞伎座に別れを告げる鎮魂歌として、閉場式までが映し出される。語りの出演者は出演順に、七代目中村芝翫、二代目中村吉右衛門、十二代目市川團十郎、 坂東玉三郎、五代目中村富十郎、十八代目中村勘三郎、三代目市川猿之助、四代目 中村 雀右衛門、九代目松本幸四郎、中村梅玉、十五代目片岡仁左衛門、四代目坂田藤十郎、七代目尾上菊五郎

歌舞伎は数ある古典芸能の中で、時代が変わっても継承がなされ人気も落ずにいる稀有な存在である。私もこの歌舞伎座でそれを生で見たことがあるが、その華麗さ、おもしろさは、いうまでもない。そう、それを体現したものなら、この映画はかなり興味深いし、その空気感を感じることはできるだろう。そういう意味では2時間46分はなかなかよくまとめてある。

だが、ドキュメンタリー映画としては少し物足りなかった。作り手はビデオのドキュメンタリー作家らしく、あまり映画全体に演出がなされていないからだ。ドキュメンタリーだからそれでいいだろうといわれるかもしれないが、映画というものはドキュメンタリーとて必要な絵では演出するものであり、それであってこそ傑作ができてきた歴史がある。最近では「ゆきゆきて神軍」などは、演出されていることが明白だが、演出家の意図以上に主人公に興味を持てる点では秀逸なのだ。

ということで、この映画も2時間46分も費やすならその時間自体を歌舞伎空間にするくらいのものであってほしかったと私は思うのだ。もちろん、各人の語りはとても含蓄があるし、さよなら公演の舞台の凄みもわかる。だが、歌舞伎にあまり興味がない人をひきこんでいく力はないのである。そう、舞台に負けた映画になっているのが残念なのだ。

中で演出もする役者たちの姿が出てくるが、それはまさにプロのたたずまいである。そして、自分の世界をさらに広げようという向上心がそこにはっきりと見えるのだ。客との真剣勝負の準備がそこにみえ、歌舞伎の未来をもみえるのだが、そこに恥じない演出が映画になされている感じではなかった。なにか、ただ仕事としてとられたドキュメンタリーはおもしろくないということである。

演出家の歌舞伎への思いを感じてこそ、そう、失くなる歌舞伎座を永遠に残すくらいの意気込みを感じられてこそ、その弔いの映画ということになったのではないか?まあ、私の勝手な思いではあるし、それをできる演出家も今はいないこともわかってはいるが・・・・。

それでも、歌舞伎座の朝から夜、一年の流れ、多くのそこで働く人、仕事の奥深さなど、本物の仕事が随所に見られるのは嬉しい限りだった。そういう裏方からみた歌舞伎座的な部分を膨らませても良かった気はする。

中で、歌舞伎は同じ演目でも常に変化を付け進化するという話がでてくる。そう、そこにはマニュアルはなく、個々に個々のやりかたで、常に創意工夫の中、舞台が作られ、さらに違うものとなって継承されていくということである。そのやりかたが今もこの舞台を興行として成功させていることはいうまでもなく、ある意味、衰退気味の日本の企業が学ぶべきものがここにはいろいろとあるようだと考えたりもした。

この映画をみれば多くの人が感じるとは思うが、でてくる中村勘三郎が新しい歌舞伎座を見ることさえできなかったと思うと涙が出る。ある意味、彼は上に書いたことを客に見えるように実践していた人である。この場を借りて、再度、ご冥福をお祈りする。

昨年、新しいビルになった歌舞伎座が開業した。私的にはその形は今ひとつ気に食わないが、さらに歌舞伎が多くの人を魅了し続けていくことは間違いないだろう。そして、その世界には学ぶことも多く、多くの人に日本的な芝居文化を見て欲しいものだと、あらためて思った次第であります。将来的には貴重な記録映画となるとは思う一篇です。

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わさお
2011年 東映(製作:東映ビデオ、木下工務店、タイムズイン、毎日新聞社、他)
監督:錦織良成 主演:薬師丸ひろ子、平田満、伊澤柾樹、大澤樹生

これも、犬映画である。そして、実在の現存する人気の秋田犬が自分の半生を描いた映画に出ているという、まあどうでもいいけど、どうでもいい映画である。そんな映画を大人が真面目に作ったはいいが、周囲をとりまくトライアスロンみたいな話題は映画にはあまりどうでもいい出来事であり、結果的には最後に飼い主の少年と訪ねてきた犬の感動的な再会で涙を流させる装置をどう作るかという映画である。動物と子供を使えば映画はヒットするという伝説に基づいた安直な映画といっていいだろう。

青森県の海沿いの町。ここに住む少年(伊澤)は白い秋田犬の子供を飼っていて、とても仲良しだった。地元のトライアスロンの日、犬は道に飛び出し、それをかばった母親が車にひかれる。結果、母は重体になる。伊澤は犬をののしり、結果、犬は東京の叔母のところに行くことになる。だが、犬は東京の家を飛び出した。しばらくたった、青森、漁業を営む平田の妻の薬師丸は犬を何匹も飼っていた。子供たちが遊びに来るにぎやかな生活で、そこには伊澤も来て犬とたわむれていた。そんな、村の農家を荒らす熊が出たという事件がおこる。それと同時に白いブサイクな野良犬が現れ、薬師丸も気になっていた。猟師は熊の正体が白い犬ではないかと疑いをかける。薬師丸は度々出会う白い犬に「わさお」という名をつける。そして、病気の犬を思う優しい犬であると確信する。村ではトライアスロンの準備で忙しかった。そこに恋の結論を賭けるものもいた。そんな中、伊澤の母親の容態が悪化し、病院をうつることになる。伊澤は犬と同じように母親がいなくなってしまったと自転車で追いかける。そして迷ってしまうのだった。そんな夜。熊が出たという騒ぎがあり薬師丸たちも伊澤を探しに行く。伊澤は見つかり、そのすぐそばにわさおが倒れていた。わさおは、伊澤が飼っていた犬だったのだ。薬師丸はそれを察知し、元気になった伊澤にわさおを合わせるのだった。

錦織監督は「ミラクルバナナ」や「RAILWAYS」などをみても真摯に映画を作り、人間のドラマをきっちり撮ろうという人に私は思える。この映画の中でも、人間のすてきな感情の機微がうまく描かれているところも多々ある。トライアスロンに恋を賭ける、甲本雅裕と鈴木砂羽のやりとりなどは、彼らしい演出だと思う。

だが、主役は「わさお」である。その主役をそれなりに撮りながら人間ドラマを的確に入れていくのはなかなか難しい行為である。この映画も、結果的にはその二つがうまくシンクロせずに乖離したまま二時間が流れ、最後に涙させるところはしっかり涙させるという感じにしかつくり込めなかったという感じである。

部分部分は悪くないのだが、わさおが結果的にみなからそれほど愛されているわけでもないのであまり最後のクライマックスが生きてこないのである。犬好きの薬師丸ひろ子の演技はかなりしっかりしているし、子供たちの笑顔もなかなか癒される感じだ。

だが、多くでてくるおやじたちのキャラが今ひとつ面白くなかったり、観客に向けてのアピールにかけるし、青森の独自の雰囲気もいまいち伝わってこない。トライアスロンという道具もなくてもいいくらいの感じである。クライマックスにでてくる「ねぶた」がうまく道具として生きてこないのはそのせいである。

根本的に、私は動物が嫌いではない。ただ、動物映画というものにはあまりいつも感心しないのだ。まあ、こういうのが好きな人は犬がかわいければいいというところなのだろうが・・・。「わさお」というビジネスが映画にまで至ってあまりうまく成就しなかったという感じの一篇だ。

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