空へ 救いの翼 RESCUE WINGS (2008) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

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日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

空へ 救いの翼 RESCUE WINGS

2008年 角川映画(製作:ファーストP、角川映画、北日本海事、他)

監督:手塚昌明 主役:高山郁子、渡辺大、鈴木聖奈、金子賢、三浦友和



航空救難団自衛隊の事を描いたアニメとコミックを原作とした青春劇。自衛隊の協力がしっかりできていて、結構、ダイナミックな画で構成されている。監督はゴジラシリーズも撮っている手塚監督であるので、大きな画を撮ることはお手の物なのだろう。脚本には大森一樹も参加しているし、怪獣映画のノリなのかもしれない。冒頭は主人公の高山が訓練でミスるところから始まり、ラストはやったことのない船上着陸を成功させ、技術的にも、人間的にも成長するという話だ。ラストは結構感動させられる。しかし、全体的にはドラマの組み立てが悪く。レスキューの宣伝映画みたいになってしまっているのは残念。まあ、自衛隊からすればそれでよかったのかもしれないが・・。


高山は子供の頃、母(浅田美代子)の命をヘリ輸送で救ってもらった。そして自衛隊に入りレスキューチームでヘリのパイロットになった。練習中、被害者のピックアップ時にミスをして躁従をやめさせられる。上司の三浦に禅寺にいけといわれる。数日後、嵐の中座礁した船の救難に向かう。初めての実践だった。最後の一人がみつからないまま、ヘリの燃料がなくなり帰還しなくてはならなくなる。任務を完了できなかった事をくやむ。それを上司(渡辺)は阪神大震災で妹を助けてやれなかった話をしてなぐさめる。山岳救助の現場でヘリの異常で隊員がけがをする。整備した高山の友人(鈴木)はおちこむ。それをなぐさめたのは暴走族のリーダーだったF1パイロット(金子)だった。高山は病気の子供を搬送して助け、その子から手紙をもらうが死んでしまい落ち込む。三浦に実家に帰り休めといわれる。帰ると鈴木と金子が婚約をする。友人の幸せを喜ぶ高山だった。そして、漁船の火事の救命に出動。任務をおえたところでF1の事故で金子が行方不明の報が入る。しかし、燃料が足りない。上司(木村佳乃)の助言で救助の後、近くにいた護衛艦に着陸することになるが、高山は船上着陸をしたことがなかった。


見ていてひとつひとつの話はそれなりにおもしろいし、青春も感じる。でも、第三者目線のせいか何か映画の中にのめり込めないのだ。主人公の高山郁子はなかなか目力のある人だ。彼女の一人称的な視線で物語を進めた方がよかったのではないか?何かもったいない気がした。 そして、突然ヘリのパイロットになっているが、やはり自衛隊に入って同期の鈴木や瀬戸早紀(グラビア出身だが、芝居は結構できている)と苦労するような話が回想でもいいからあってもいいかと思う。


高山の積み重ねてきたものを見たいのである。そして、その中では木村佳乃と対峙する芝居があってもいい。それを描くことでラストはもっと感動的なものになる気がするのだが・・・。


鈴木と金子が同じ暴走族の出身で、それを誇りに生きている話は好きである。堕ち込んだ鈴木を金子がなぐさめるために砂浜をツーリングするシーンがあるが、ここはなかなか気持ちいいシーンだ。高山のヘリが低空飛行で並走する画は綺麗だ。 めがねをかけ決して美人ではないが鈴木聖奈はこの映画の中で最も生きている感じがする。ラスト。恋人の無事をしって涙をする姿があって、この映画の感動は成立している。


「ひとりで飛んでるんじゃない」というセリフが出てくるが、最後は観客にそれが強く伝わる。 護衛艦にいる中村雅俊の使い方なども含め、三浦や木村などの俳優を贅沢に使いながら、主人公はあくまでも若い無名の役者たちなのは凄く効果的ではある。


自衛隊の仕事の一端を見ることができる映画としてはよくできているが、それだけであろう。もう少しドラマチックに描けば自衛隊の広報映画としてもっとよかったと思うのだが、どうも作り手の思いの中途半端を感じるのは私だけだろうか。 でも、自衛隊の装備のメカニックの映像はなかなかワクワク感がある。そういう点では主人公が女の子でも男のための映画である。


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