黒の駐車場(1963) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

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日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

黒の駐車場

1963年 大映

監督:弓削太郎 主演:田宮二郎、藤由紀子、小沢栄太郎、松村達雄、中田康子


「黒シリーズ」9作目。これ以降、14作目まで全て田宮二郎主演となる。舞台は新薬開発。田宮はヤクザあがりだが小さな会社を作り成功し、新薬を作り狙われているという立場。狙う方から狙われる方になっているところは新しい。そして、オチはなかなか痛快である。ただ、題名の「黒の駐車場」というのはあまりピンとこない名前である。途中、田宮が駐車場で殴られるくらいであまり駐車場の出番はない・・。


田宮は元ヤクザで小さな製薬会社をやっている。親会社の丸木製薬の販売ルートを生かした商売をしている。その丸木製薬の幹部が替わる。社長になった小沢は田宮と関係が深い男(見明凡太郎)だけを残し、田宮の会社と合併しないかといってくる。田宮の会社で作っている新薬を狙ってのことだった。田宮は見明に一任するが、数日後見明が自殺したとの報が流れる。田宮は記者(藤)とともに調べ出す。そして見明の葬式に来ていた吉野製薬の社長(中田)に呼ばれる。彼女は自分と組まないかと言ってくる。新薬の研究員(仲村隆)が襲われたり、危機が続く。見明になすりつけられた薬の横流しも明らかになる中、小沢は合併はあきらめたという。そして、新薬の発表をしてしまう。そして、仲村は大学の協力を断られる。そこでたまたまあった中田に自分と一緒にやらないかと勧められる。田宮は小沢に新薬発売の中止をさせる。しかし、それにより丸木製薬の株は暴落、小沢は大儲けをする。小沢の狙いは初めからそこにあったのだ。田宮は見明と一緒にいた女が精神病の振りをさせられ隔離させられているのをみつけ証人として差し出す。小沢のもくろみはくずれ、田宮は吉野製薬に協力を求めに行く。そこには完成した新薬があった。どさくさの中でスパイしたものだった。田宮はあわてなかった。見明の進言により、新薬の重要な特許がとってあったのだ。


新薬をめぐる話と思いきや、狙いは株のつり上げにあったとは、昨今よくある事件とあまり変わらない。商売の基本は半世紀変化がないことが分かる。まあ、コンピューターで売り買いができる現代は時間軸が替わり、時代が変わったというのであろう。


田宮は昔、暴力バーをやっていたという設定。5千円の飲み代を3万円にして恐喝していたのだ。その客が見明で態度を気にいり仲良くなったという、結構無理のある話。だから、田宮の会社には不良少年たちもいて(工藤堅太郎なども端役でいる)最後の小沢との対決に重宝するのだ。


小沢栄太郎という人はこういう腹黒い役をやるために生まれてきたような人で、最初に出てくるときからこいつが犯人だろうと観客におもわせてしまう。だから、いかに巧妙に仕込んだかというのが問題であり、この映画では殺した相手の愛人をキチガイに仕立てるというなかなか込み入ったことをしている。そして、その目的も誰も考えないところにあるのがこの映画のおもしろさであり、小沢を使って成功している。


対する、真っ向から新薬を狙う中田康子は、女の武器も使いながら正攻法で勝負してくる。しかし、最後は田宮の方が一枚上だったというところがスカっとするところである。スパイに松村達雄を使うが、これが観客にさらりとわかっていくさまもなかなかよくできている。松村が偶然にデータのありかを知る場面もしっかりでてくるのは「後から考えれば」と観客に思わせるシーンである。


映画の構造としてはなかなかおもしろく痛快であはあるが、弓削監督ではそれ以上のものにはできないという事であろう。これが増村保造監督作であれば二枚も三枚も、もっとおもしろくなったのではないかと思うところがあり、ちょっともったいない気がする。


今回の藤由紀子は記者として新薬を取材するという役であまり活躍はしない。しかし、最後事件が終わり田宮と仲良く歩くシーンで終わるが、二人は完全に愛し合っているというような満面の笑顔が見られる。当時、もうそういう関係だったのだろうか?凄く気になった。


「黒のシリーズ」を5本見てきたが、どの作品も、今焼き直しても十分使えるような話である。サラリーマンに向けたハードボイルド路線であり、後の「ザ・ガードマン」などのテレビ作品に大きな影響を与えている事は確かである。そう考えれば、最近はそういうジャンル自体が少なくなっている気もしますね。景気に連動して、こういう話が受けるのかもしれません。


残り5作品はまたの機会に描きますのでお楽しみに!


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