その人は炎のように
1972年 東宝
監督:出目昌伸 主演:岩下志麻、岡田裕介、荒木一郎、富士真奈美
岩下志麻、この時31歳。結婚して5年目の作品。当時としては十分、熟女である。そして、松竹ではできない役と言う感じの大学生との不倫もの。岩下の美しいのはよいのだが、結果的には、何かプロモーションフィルムを重ね合わせたような作りが、なにかあまりドラマを高揚させない。時はしらけ時代に入っており、学生が政治にからむより、金と女におぼれていくのはわかるのだが、そこには大したドラマがないということか?存分に志麻さんを堪能する映画だと思えばよいのだが、ラストはかわいそうすぎる。こんな無垢な女を誰も守ってあげられない無能さには少しばかり怒りさえ覚える。
岡田はある企業のコネをつかみ面接にきていた。しかし、あえずじまい。コネを導いた荒木はいかさま博打の腕を買って、岡田を使って金をかせいでいる。そんな荒木の姉の誕生日パーティーに岡田はついていく。そこで荒木の叔母の岩下にあう。岩下の夫はドイツに赴任し、岩下も3カ月後にいくことになっていた。そして、岡田の面接をすっぽかしたのも岩下の夫だった。いきがかりで岩下を家まで送る岡田。博打で儲けた金でいきおいで20万円のドレスをプレゼントする。そして、岩下のドイツ語の講師を引き受ける。岡田の故郷から妹が訪ねてくる。金が必要だという。金をいかさま麻雀でかせごうとする。その話を荒木が岩下にすると、岩下は岡田のアパートに来る。そのすさんだ生活を見る。荒木は2人が寝るかどうかのゲームをしていた。海で岡田がけがをしたと岩下を呼び出し、岡田を岩下の前でいたぶる。そんな岡田を見て抱きよせる。蓼科に旅行し、岩下はマンションを買い、岡田との愛の巣を構え、離婚も決意する。岩下は夫が帰ってくると動転するが、マンションに残された、すべてゲームだったという岡田の声の録音を聞いて、命を断つのだった。
ベッドから裸の岩下が起き上がる。そして、ガウンを着て、朝の光をあびる。ありがちな有閑マダムの朝である。夫がドイツに発つので別れの最後の夜を過ごしたという符号なのだろう。全編、こういうしゃれた雰囲気?の映画である。1972年のこの頃から、テレビCMもイメージ的なものが多くなる。何を売っているのかわからない奴である。そんな映像で、新しい映画の方向性をさぐろうとでもいうのだろうか?それが顕著にでるのが蓼科でのドライブシーンである。2人が戯れるシーンをつないだだけ。途中、車の上に乗って、周囲の牛がよってくるシーンは気持ち悪さすら感じる。
だから、ベッドシーンも、何かアクロバチックである。構図をいかに美しくするかを考えるあまり、リアルさはない。だから、興奮しない。ただ、岩下の指の美しさだけは一見の価値がある。前半で岩下の心の乱れを表すために、指のアップがでるが、ここでもそれを感じた。岩下志麻のチャームポイントは指のしなやかさである。
岩下は、有閑マダムらしく、さまざまな服を着て、さまざまな髪形ででてくる。ある意味、一番牝の臭いが強い時期の記念すべき作品なのかもしれない。どうも、監督は、岩下だけを撮ることだけに目一杯のようだ。でも、最初の20万円のドレスがそれほど華麗でないのと、それを着て転落死するというのはちょっといただけない感じである・・・。あくまでも、ミニスカートの岩下とその指がみどころである。
主演の岡田裕介は、この頃さかんに東宝青春映画に器用されているが、へたな石坂浩二という感じで、爽やかさがない。だから、政治活動に落胆した青年役にはぴったりだったのかもしれないが、まあ、所詮、おやじのおかげで業界に入った人なのだろう。演技は皆、同じで凡庸である。
その点、足を引きづりながら、彼をあやつる荒木一郎の役はなかなか良い。彼はこういう少し卑屈な金持ちみたいのが、ぴったりはまっている。(現実にそうだったのかもしれないが・・。)最近はこういうタイプの役者も少なくなった。
他の俳優が有名でない凡庸な役者たちなので、あまり映画に幅はない。岡田の周囲の大学の女友達も、ありがちなタイプでおもしろくない。カワイイ恋人がいて、嫉妬話が膨らめば少しは複雑な感じになるが、女たちは「遊びでしょ」という感じで岡田を放っておいている。現在の感覚とはずいぶん違っておもしろい。
フェンシングとか、いかさま賭博とか、岡田の周囲にさまざまな道具が用意されているが、これらもあまりうまく使われていない。唯一、ドイツ語のレッスンで使われるカセットレコーダーが最後まで道具にはなっているが、ドラマを高揚させる感じの道具ではない、というか、告白はじかにやれよといいたかったりする。この頃から、恋愛は機械に振り回されだしたのかもしれない。これって、声のメールみたいなものだものね。
まあ、岩下志麻の背中にゾクッとなる映画ではありますが・・・。
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