不滅の熱球
1955年 東宝
監督:鈴木英夫 主演:池部良、司葉子、千秋実、笠智衆、清水将夫
日本シリーズが昨日から始まったが、地上波の放送なしという快挙を行ったテレビ局。まあ、日本の文化もスポーツもマスコミの「俺達が盛り上げてる」的な意識がなくならなければ、良い継承はできないだろう。私は、視聴率に関係なく、BSやCSで観戦しますけどね。という事に重ねて、沢村英治の伝記映画を観る。読売巨人軍や読売新聞社、セントラルリーグ監修のこの映画も、マスコミの作った嘘まみれの映画である。とはいえ、55年当時、テレビも普及していなかった時代、これを見て英雄沢村像を膨らましていた少年も多かったであろう。それを考えると悲しくなる・・・。
沢村(池部)は巨人軍のエースであり、その日もノーヒットノーランのピッチングをしていた。そんな日も試合後の練習するストイックさも持っていた。数日後、巨人軍の中で真っ先に召集される。恋人の司との仲を彼女の親(清水)に反対されるままに戦地にいく。そして戦場で右手を負傷。ボールが投げられるように戻るか悩む。そんな中、司は心配して大陸に渡る。しかし、兵役を終え、巨人軍復帰。やはり、元の調子には戻らなかった。しかし、そんな中、司と結婚。そしてやっと思う通りのボールが投げられるようになり、子供が出来たとわかるその日、再度、赤紙が舞い込む。フィリッピン戦場で力つきる池部であった。
まず、明らかに史実と異なる部分を書いておく。まず、沢村の召集は2回になっているが、事実は3回である。そして、戦死は船が沈められたことによりであり、この映画にあるように陸で朽ちたわけではない。また、戦争後、彼の球威が落ちたのは、単なる負傷によるものだけでなく、マラリアにかかったり、手榴弾を投げたことなどが合わさってのものである。また、最初の方で阪神に打たれた原因がドロップを投げる時歯を見せる癖のせいだとあるが、これは米オールスターが来た時にアメリカさんが気がついたという話である。そして、ここでは描かれていないが、2度目の召集後には、まったく振るわずに、無理やり引退する事になり、工場勤めをする中で3回目の召集がきたという事である。奥さんの家が身分が違うので反対した話は本当だが、子供ができたかは確認できなかった。
そうなのだ。この映画は彼の栄光を描くために作られた映画だと思う。しかし、野球での彼の初期の活躍を何も描いてはいない。彼の負けないで頑張っているのに、戦争が対峙してくる不運がテーマといってもいいかもしれない。だから、最初の召集の前の司との仲をまず悩む。そして、戦地でボールが投げられないとまた悩む。帰ってきて、後輩にバカにされ悩む。そして最後に2度めの召集で妻になんといっていいか悩む。そんな悩むシーンばかりが長く延々とつづられていく。このあたりは脚本の菊島隆三と鈴木監督の主旨が「悩む男」にあった事は明確である。
野球映画だと思って見ると、あまりにもがっかりさせられるのだ。観客が見たいのは、華々しい学生時代の足跡であったり、巨人にはいってアメリカ人をきりきりまいさせるところだと思うのだが・・。そして、そんな中スターになっていく沢村が何故、御嬢さんと知り合ったかも興味あるところ。内容が嘘でもいいが、野球で活躍していく沢村を描いていないのは、作り手が野球を知らなかったからなのだろうか?
そんな中でも、池部のピッチングフォームは、現存する沢村のフォームに似せて、うまく演じている。巨人軍の2群選手が、川上や吉原や水原になっているのでプレーも少ないが見られる絵になっている。しかし、野球技術指導として、巨人の内堀選手に加えて、阪神の藤村や御園尾の名前がテロップされている。巨人軍にやらされたのだろうか?
役者として内堀選手をやっている千秋や、藤本監督役の笠はなかなか良い。特に笠は監督らしく威厳がある。でも、沢村がノーヒットノーランした次の日に「連投してくれ」はないだろう。凄い時代である。
ロケに使っている、球場は後楽園と甲子園、そして駒沢球場だ。広告看板はあきらかに戦後のものなので、そのあたりはちょっと悲しい。でも、後楽園や甲子園の外の飾りつけや看板はしっかり古いものを作っている。入場料金1円などというのも見える。駒沢球場を使ったのは、単にその姿が戦前の球場に近いものがあったからだろうと思われる。
そんな野球より、司の家で結婚を反対するいざこざのシーンが多くでてくる。「野球なんか仕事にしている奴にろくな奴はいない」と豪語する清水はなかなかはっきりしていて良い。(良くありそうな父親像を好演している)実際、旅芝居とプロ野球は同列に扱われた時代である。なんせ、選手の移動は3等車である。(こういうところは良く作ってある)
まあ、結局のところ、悲運の人の悲しい話になってしまっているのだ。何故にもっと華々しい映画にしなかったのだろうか?いろいろ大人の事情もあるのかもしれない。今も「沢村賞」として名前が残るビッグネームだが、入団するときに正力は親族を最後まで面倒みるといいながら、彼が使えなくなると、「ポイ捨て」して、戦後は身内が悲惨な生活をしているというルポを読んだことがあるし、「沢村賞」などという名前を使ったら親族にも何かメリットないといけないのではないかと思ってしまう。
読売としては、この頃、野球をはやらせるために、この映画を作ったわけで、沢村をたたえるために撮ったわけではないだろうと思える。監督のベクトルも変だし、反戦映画にもなっていない。そして、なによりも池部良を沢村英治だということにとても無理がある映画である。珍品に近い作品です。
この場で、先日亡くなられた池部良さんのご冥福をお祈りします。
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