闇に仄かに浮かぶ白く滑らかな感触を辿ると確かに貴女はいた。
雲に隠れた月が時おり顔を出すたびに貴女の輪郭が露わになる。
思わせぶりな雲と月はずっと貴女を私の目に晒してはくれない。
雲は月を覆い風が少しずつ雲を動かすと月がまた部屋を照らす。
貴女の足元から徐々に腰や背中にかけての曲線を月光は舐めていく。
そのコントラストはまるでグラデーションのようで光りの芸術だった。
白く反射するシーツの上に産毛が金色に輝く貴女は横たわる。
もうすでに私の存在はなんの意味も持たずただ見とれている自分を認めた。
その時無風であるはずなのに長い髪が微かに揺れる気配がした。
私がそちらに気を取られていると生温かい空気を感じた。
厳かな静寂の中でふいに貴女の吐息が漏れたのだ。
暗闇の中では五感が研ぎ澄まされ私を刺激する。
美しさとは夜に真価を表す。
闇も月も有能なその助手となる。
主人公は貴女。
月光が織り成す貴女という一枚の絵が仕上がった。
最後はこの手で絵の中から貴女そのものをそっと取り出す。
夜が白けて行く前に貴女に息を吹き込まなければならない。
美しさが誰かの手で汚される前に。