子どもの頃からガラスの靴に憧れていた
いつか王子様が私にぴったりな靴を運んできてくれる
物語の中に自分を埋め込んでしまう少女だった
大人になった今でもその感覚は覚えていて
どんな時もガラスの靴を見ると切なくなる
だけど心配になる
もしも私の足が合わなかったら…
それだけの品位がなかったたら…
今宵はそんな不安を払拭するような風がふいている
誰か私をさらいにきて
ガラスの靴を持って
明日にはまた別の風が吹くかもしれない
あるいは
まったく凪いでしまった空気があるのかもしれない
物語は一瞬にして
物語でなくなってしまう
そんなあやふやな風が
吹いている夜がいいよね
ガラスの靴
だれかください