【第四回】
陸上の醍醐味はなんと言ってもタイムを追い求めることである。
入部して2週間後、1年生だけを集められ、初めてのタイムトライアル(以下T.T.)が行われた。
俺は1500メートルと100メートルのタイムを計った。
そもそも1500なんて完走できるのか?そんなレベルの俺が叩き出したタイムは
7分48秒
ゴールした後、顧問の中村先生の困惑した表情は今でも覚えている。
「おいおい、こんなやつの面倒見るのかよ」なんて心の声が聞こえてきた。
「ま、まあカースケ君。このタイムは覚えておくんだぞ、ずっと後になって成長を実感できるぞ」
なんて言葉をかけてもらった。中村先生は礼儀や規律には厳しいが、タイムが悪くても決して怒らないいい先生だった。
続く100メートルは18秒台。
これについては先生も見ていた先輩も一言も声をかけてこなかった。
短距離の才能は長距離よりもっとなかった。
とりあえず、自分のT.T.は終わったのでベンチに座って休んでいたら、なんだかフィニッシュ地点あたりが盛り上がっている。
なんだろう?と思って近づくと、短距離キャプテンの小林先輩が「11秒台だー!」と叫んでいた。
なんと、俺と同じ一年生が11秒台を出したらしい。
しかし俺は11秒台がどんだけ凄いのか全く分からず、「ほーん」とだけ思っていた。
そいつは違う小学校の出身なのであまり話したことはなかったが、確かに一人だけ中1のくせに筋骨隆々でゴリラみたいな男がいるなと思っていた。
そのゴリラ君の名は三原。この男のおかげで、練習の日々がもっと狂気じみたものになっていくのはもう少し後の話であった。
続く